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「なぜ重力は存在するのか」 野村泰紀 著 マガジンハウス新書

ガリレオから現代の最新物理学までを概観でき、最新のテーマについても知ることのできる本。

わかりやすく書かれています・・・というものの、「むむむ難しい」という部分もありますが、その辺は、なんとなくわかったでいいのではないかと思います。さらに勉強したければ、もうちょっと専門的な本を読んでみたらいいですし、今の時代、AI学習をしてもいいかと思います。

量子論は面白い。工学部の頃、もっと真面目に勉強しておけばよかったなぁと思いました。

興味深かったのは、量子論で記述するレベルの微小世界での出来事が、マクロの世界に反映されることがあるということです。

例えば、ボース・アインシュタイン凝縮という現象は、複数の原子がさも1個の原子のように振る舞うようになることです。この現象は、極低温で起こります。

だからと言って、量子論を安易にマクロの世界に適用するのは良くないと思います。例えば心理学への応用などですね。「人の心も量子論の反映で、ボース・アインシュタイン凝縮が起こり、人々が集団的に一つの方向に行ってしまうことが起こり得るわけです」なんて言ってしまうと、一見尤もらしいですけど、科学的根拠が全くない思いつきにすぎません。こうしたカテゴリーエラーはやるべきじゃないでしょうね。

通常の我々の世界には、4つの力、すなわち「電磁力」「強い力」「弱い力」「重力」があるのですが、「重力」以外の3つの力については、プラスマイナスがあるので、マクロレベルでは打ち消されてしまい、我々に影響を与えることはないのです。

重力の大きさは、とても小さい。例えば「陽子と電子の間に働く重力の大きさは、その間に働く電磁気力の大きさに比べて、40桁程度も小さい(p.175)」とのことです。だったら、重力の影響なんて大したことはないのではないかと思ってしまうのですが、そうではありません。

重力には引力しかないため、マクロな物体を構成する素粒子間の重力は、打ち消し合うことなく単純に足し上げられていきます(p.176)。足しあげられているから、僕らも重力を認識できるんですね。

でも、なんで重力だけマイナスがない、つまり反重力がないのでしょう?謎ですね。これから調べてみたいと思います。

あと、この本で目から鱗だったのは時間の概念です。

時間が前に進んでいくように感じられるのは、「統計学的に起こりやすい方向、つまりエントロピーが増大する方向に進んでいくことを「時間が進んでいる」と感じているだけ(p.189)」とのことです。

つまり、秩序から無秩序の流れによって人は時間を認識するということです。
・・・ということで、著者の部屋と同様、僕の机の上が汚くなっていくことはお許し願いたい。エントロピーが増大している表れですから・・・。みなさん、それによって、時間が前に進んでいるということを認識しているのですから・・・。



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