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「日の名残り」 カズオ・イシグロ 著 ハヤカワepi文庫
静かな心に染み入るような小説でした。
物語は、ダーリントン・ホールと呼ばれる大邸宅の執事ミスター・スティーブンスが、かつての同僚ミス・ケントン(現ミセス・ベン)に会いに行く旅行の道程を、スティーブンスの一人称の形で進められていきます。
旅行中、スティーブンスは、ダーリントン・ホールで起こった様々な出来事を思い出します。ダーリントン・ホールには、欧米の要人がやってきます。ハリファックス卿、チャーチル・・・そして当時精力的にイギリスで外交活動をしていたリッべンドロップ。
そして、スティーブンスは、要人のお客様たちを最高の形でもてなします。スティーブンスは『世界という「車輪」の中心(p.279)』にいながら、決してですぎた真似はしないのです。
彼には品格があり、始めて出会った人たちにもそれが伝わります。
とても、真似はできないですね。
でも、一般の人たちには、彼のジョークが伝わりにくい。ちょっと変わったことが起こる田舎の宿泊先での村人たちとの会話で、スティーブンスは「では、ご当地ではメンドリが時をつくるものと見えますな(p.156)」とジョークを言うのですが、村人たちにはさっぱり伝わりません。
意味は、「普通は雄鶏がコケコッコーとすべきところを、雌鶏がやっているのですかね?」と言う意味で、普通では起きないようなことが起きていると言う意味です。そして、その普通ではないこととは、宿の奥さんが朝から騒がしいので、止まり客が朝早くから起きてしまうと言うことです。
・・・ん〜、分かりにくい!
旅行の最後に出会った男の言葉がいい。
「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。わしはそう思う。みんなにも尋ねてごらんよ。夕方が一日でいちばんいい時間だって言うよ(p.297)」
それでは、僕も夕方を楽しむことにいたしましょう。
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