「ほのぼのお徒歩日記」 宮部みゆき 著 新潮文庫
宮部みゆきさんの小説以外の初めての本。最初に出た平成版にその25年後の令和版を加えて文庫化してます。
「徒歩」とは、「かち」と読みます。
江戸時代の人たちが歩いた道を、実際に歩いてみようということで始まった企画なのだそうですが、やがては善光寺参り、伊勢参りまでお徒歩範囲は広がります。
昔の人はよく歩いたもんだねと思います。しかし、宮部さんたちお徒歩一行は、途中で早駕籠「タクシー」に乗ってしまうこともありという、時々ゆるゆる旅です。
其ノ弍「罪人は季節を選べぬ引廻し」は興味深かったです。引廻しには2つのコースがあって、ひとつは、「江戸中引廻」で、「牢屋敷から出て牢屋敷に戻るというコース(p.48)」、もうひとつのコースが、「五ヵ所引廻」で、「牢屋敷を出たら、日本橋、赤坂御門、四谷御門、筋違橋および両国橋という五つのポイントを通りながら、お仕置き場つまり刑場である小塚原や鈴ヶ森に到るという道順(p.49)」になります。
引廻しは、江戸時代の人々にとって、ある種のイベントだったようです。けっこう、面白がって観るべきものであった(p.59)という話もあるのだそうです。
宮部さんは深川出身なのだそうです。しかし、今や東京の下町も江戸情緒が少なくなってきています。
僕も、神田で働いている時、神社がビルに挟まれて申し訳なさそうに建っているのを見たことがあります。
夜の暗闇も、ビルの灯りにとって代わられ、もはや存在しなくなりました。
宮部さんは言います。
「各地に流布する「七不思議」も、昔はどこの町にもひとつはあった「お化け屋敷」も、みんな一定の機能を持っていたのではないかということです。 それはどんな機能か。人間と、人間が寄り集まって住む場所には必ず生じる「魔」を吸収し、それを封じるという働きであります。(p.186)」
闇は必要なのですよ。きっと。
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