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AI翻訳の効率的な活用法:一貫性と文脈を重視したアプローチ(&裏技)


はじめに

先日、オンラインセミナーで「AIを使った効率的な翻訳方法」についての質問を受けました。さまざまなAI翻訳ツールを駆使しつつも、最適な使い方を見出せずにいる方々が多いと感じました。そこで、今回は、AI翻訳ツール(ChatGPT-4、Gemini、Claudeなど)を用いて効率よく翻訳を進める方法と、その際に考慮すべきポイントについて、私が試行錯誤してみた結果をお伝えします。

現在の方法:文単位での翻訳とその課題

質問者は、AIツールを使って翻訳作業を進める際に、以下の方法を取っていらっしゃいました。

  1. 原文全体をAIに入力

    • 例文として、日本語に直した場合に1000字程度、約25センテンスから成る原文をAIに与えます。

  2. センテンスごとに翻訳を依頼

    • 指示内容としては「プロの翻訳家」として、なめらかでフォーマルな日本語訳を求めつつ、「忠実な訳」と「流麗な訳」の2通りを一文ずつAIから出力させます。

  3. 出力された内容を一文ずつ確認

    • AIの出力結果を逐次コピーし、一文ずつ読み進めて修正や確認を行います。

この方法の利点として、翻訳の品質を細かく管理できる点が挙げられます。しかし、文章全体での一貫性が欠けがちであることや、AIが原文の文脈を一部忘れてしまう可能性があることが課題として浮かび上がっています。

課題へのアプローチ方法

1. 段落単位での翻訳を試みる

一文ずつの翻訳作業は細かな修正には適していますが、どうしても文脈が断片化しやすいです。そこで、「一文ずつ」ではなく「段落単位」での翻訳を試すことをおすすめします。段落単位で翻訳すると、文章全体の流れを考慮しながらAIが訳文を生成できるため、自然な流れが保たれやすくなります。

2. 翻訳例を複数提示するプロンプト設計(フューショットプロンプト)

一文ごとに複数の翻訳案を求めるのではなく、段落全体でAIに翻訳案をいくつか出してもらうように指示を変えてみましょう。例えば、「段落ごとに忠実な訳と滑らかな訳をそれぞれ生成してください」といった指示で、段落単位での表現の一貫性が保たれた状態でAIが複数案を出してくれます。

3. (裏技)DeepLとChatGPTの併用で仕上げる

DeepLなどの専用翻訳ツールは、AI翻訳と比較しても自然な日本語の表現に強みがあります。まずDeepLでベースとなる翻訳を行い、その後ChatGPTを使って文体や表現の整えを行う方法を試してみてください。特に、ChatGPTには「フォーマルな日本語の文体に調整してください」や「プロの翻訳家が手掛けたような自然な表現にしてください」といった指示を与えると、より一貫性のある結果が得られます。

一貫性を高めるためのポイント

翻訳作業を効率化しながらも品質を保つためには、一貫した表現を意識することが重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。

  • プロンプト内で「段落ごとに訳して」と明記する

  • 文体やトーンの一貫性を指示に加える

    • 例えば、「プロの翻訳家によるビジネスドキュメントのような文体にしてください」など、文体の統一を強調しましょう。

  • 定期的に原文全体をAIにリマインドする

    • 作業途中でAIが原文の流れや前提を忘れてしまうことがあります。定期的に原文を再度与え、「この文脈を踏まえて翻訳を続けてください」とリマインドすることで、より一貫性のある訳文が得られます。

翻訳プロンプト作成方針のまとめ

翻訳作業においてAIを効率的に活用するためには、プロンプト設計と段落単位での一貫した指示が鍵となります。
また、裏技としてDeepLなどの翻訳専用ツールとChatGPTを併用し、それぞれの強みを活かすことで、翻訳の品質と効率を同時に向上させることが可能です。
AI翻訳は進化し続けていますが、適切なプロンプト設計とツールの選択が、プロフェッショナルな翻訳の実現に大きく寄与するでしょう。

翻訳(英文和訳)の具体例

次に、実際の翻訳作業で具体的にどのようにプロンプトを工夫し、適切な結果を得るかを例を用いて解説します。ここでは、悪いプロンプト例とその結果、続いて改善したプロンプトとその翻訳結果を比較することで、効果的なプロンプトの作り方を具体的にご紹介します。

例文

まず、以下の英文を翻訳するとします。

"In today's rapidly changing business environment, companies need to be agile and adaptable. This requires not only a willingness to embrace change but also a strong foundation in innovation and a commitment to continuous improvement."

悪いプロンプトと翻訳例

悪いプロンプト

あなたはプロの翻訳家です。以下の英文を一文ずつ、日本語に訳してください。文体はフォーマルで、忠実な訳と自然な訳の2通りをお願いします。

結果の翻訳

  1. 直訳
    「今日の急速に変化するビジネス環境において、企業は機敏で適応力がある必要があります。」
    「これは、変化を受け入れる意欲だけでなく、革新に対する強固な基盤と、継続的な改善への取り組みを必要とします。」

  2. 自然な訳
    「現代のビジネス環境は急激に変化しています。そのため、企業は迅速かつ柔軟に対応することが求められます。」
    「これは、変化を受け入れる意欲だけでなく、イノベーションに対する強固な基盤と、絶え間ない改善のための努力が必要です。」

問題点

この翻訳例では、一文ごとに分けているため文脈が分断され、全体としてぎこちなくなっています。また、最初の文脈が途切れるために、「これは」という表現も、何を指しているかが不明瞭になりがちです。全体での流れや意味が損なわれている印象です。

改善したプロンプトと翻訳例

良いプロンプト

あなたはプロの翻訳家です。以下の英文を、段落ごとに日本語に訳してください。文体はフォーマルで、文章全体が自然に流れるように翻訳してください。原文の内容に忠実でありつつも、自然な日本語表現を使用してください。また、文脈の整合性を保つため、段落全体を一貫した流れで訳してください。

結果の翻訳

「今日のビジネス環境は急速に変化しており、企業は迅速かつ柔軟に対応することが求められています。これには、変化を積極的に受け入れる意欲に加え、イノベーションを支える確かな基盤と、絶え間ない改善に向けた取り組みが不可欠です。」

改善点

この翻訳例では、段落全体を一つの流れとして捉え、意味のつながりがスムーズになっています。「これには」の表現も直前の内容に自然に続いており、文脈が途切れることなくスムーズな訳になっています。また、「迅速かつ柔軟に対応する」という自然な日本語表現を用いることで、よりフォーマルかつ洗練された印象を与えています。

具体例を通してわかるポイント

この具体例から、以下のポイントが確認できます。

  1. 文脈を保持するために段落単位で翻訳する
    一文単位ではなく段落単位で翻訳することで、文脈が途切れずに自然な訳文を生成できます。これにより、意味が通りやすく、一貫性のある訳になります。

  2. プロンプトで流れの一貫性を強調
    プロンプト内で「段落全体が自然に流れるように」「文脈の整合性を保つ」という具体的な指示を加えると、AIが全体を意識して翻訳するため、一文ごとの訳で出やすい「ぎこちなさ」を防ぐことができます。

  3. 文体とトーンの調整
    「フォーマル」「自然な日本語」といった文体やトーンを指示することで、ターゲット読者や翻訳の目的に合わせた表現が得られやすくなります。

まとめ

翻訳作業において、プロンプトの工夫次第で訳文の品質が変わることが確認できました。
悪いプロンプトでは、文単位での分断が生じたり、文脈が途切れることによって訳が不自然になりがちですが、段落単位での一貫性を意識したプロンプトを使用すると、意味がスムーズに伝わる質の高い翻訳が得られます。
このように、具体的なプロンプト設計と段落単位の翻訳を組み合わせることで、より洗練された訳文を実現することが可能です。

ちょっと事例が少なかったかもしれませんが、言わんとしていることは伝わったかと思います。

翻訳プロンプト作成時にはこのようなポイントを意識してみてください。

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