トロント映画祭2024日記 Day5
9日、月曜日。5時50分起床、2時間パソコンに向かって、シャワー浴びて、8時15分に外へ。程よく涼しい感じ。体感は18度くらいかな。
しかし映画祭エリアに着いて、スタバでコーヒーとマフィンサンド買って「Scotiabank」シネコンに向かおうとすると、大粒の雨が降ってきた。うわっ。ちゃんと予報を見ていなかったけど、今日はそういう日なのか。
9時半の上映を見るべくスクリーンに向かうと、どうやら目当ての映画ではないらしい。いかん、間違えたか。日時かスクリーンかを間違えてしまったらしい。
一般上映でなくP&I上映なので、まあいいかと諦めて、これをいいことに「Scotiabank」のラウンジに行き、溜めてしまっている別件仕事に取り掛かる。そのままラウンジで1時間半ほどパソコンに向かう。
11時15分からブルガリアのクリスティナ・グロゼヴァ&ペタル・ヴァルチャノフ監督コンビ新作『Triumph』。この監督コンビは、2014年の東京国際映画祭に『ザ・レッスン』という作品で招聘し(審査員特別賞を受賞)、思い入れのある監督たちなのだ。あの時は、ペタル・ヴァルチャノフ監督と主演のマルギタ・ゴシェヴァさんが来日してくれて、マルギタさんが突然壇上で日本語の歌を披露したことも、懐かしい。『ザ・レッスン』やそれに続く『グローリー』(16)は、転がるようにサスペンスフルな脚本とリアリズムが特徴的で、世界中の映画祭を巡った。ブルガリアの現状を様々な形で描いてきた監督コンビが手掛けた新作『Triumph』は、驚くべき実話の映画化だ。
共産主義時代の終盤。中年女性の霊能者の指示のもと、ブルガリアの軍が山地で穴を掘っている。霊能者女性は宇宙からのメッセージを受け取り、勝利を勝ちうる力の源泉となるカプセルが地中に埋まっていると主張し、軍は彼女を信じてカプセルを掘り出すオペレーションを進めている。彼女は若い女性の霊能者を従えており、その若者が軍人と関係を持ってしまうなど、現場は混乱していく…。
本当に実話だそうで、ブルガリアでは結構有名な話だとのこと。冷静に考えれば滑稽だけれども、軍人たちは大真面目に取り組んでいたわけで、映画はコメディとして茶化すことなく、まっとうにその状況を描いていく。でも、真面目に描くほどに滑稽さも強調されてしまうことになり、そこに、あの時代の哀しみが滲み出てくる。上手い。
上映後、Q&Aを終えたペタル・ヴァルチャノフ監督に近寄ってご挨拶。ペタルさんも懐かしがってくれて、「10年経ちましたね!」とハグ。これは嬉しい再会だ。
またラウンジの戻って仕事すべく、「Scotiabank」シネコンのコンセで売っているスタバコーヒーを注文。他に並んでいるお客さんもいなかったので、店員のお姉さんに小銭を取ってくれないかと、パンパンの財布の小銭を見せてみる。すると、もちろん!と言って、僕の小銭をすべて出してカウンターの上に広げて、「似ててわかりにくいですよねー」と笑いながら、小さい硬貨から始めて6ドル分を取り分けてくれた。なんと親切な!とにかく映画祭に関わっているカナダの人々はとんでもなく親切で、ここでも感激。
14時半から、ベルギーのギヨーム・セネズ監督による『A Missing Part』(扉写真/Copyright Les Films Pelleas - Versus Production)。去年だったか、ロマン・デュリスが東京でタクシー運転手の役で撮影しているらしいという情報は耳に入ってきていたけれど、それがこの映画。フランス人の男性が東京で日本人女性と結婚して娘をもうけたものの破局し、親権が母親に渡ったために娘に会えず苦しむというドラマ。
日本で共同親権が認められていないことが映画の題材として扱われる機会が増えてきた気がしている昨今、本作も日本における議論に弾みをつけるかもしれない。かくいう僕も良く分かっていないので、法律上は離婚していないフランス人夫がどうして全く娘に会えないのか、完全に理解できたわけではないのだけれど、それは破局時の夫の荒れた態度も影響しているかもしれず、とにかく問題提起にはなっている作品だと感じる。
決してヘヴィーな作品ではなく、爽やかな後味さえ残す良作に仕上がっていて、上映が終了すると熱心に拍手をする観客の姿が目立つ。そしてロマン・デュリスの日本語がとても聴きやすい!かつて『WASABI』(01)の広末涼子さんのフランス語がとても上手く、音だけで覚えたとの発言に驚いたことを思い出したけれど、ロマン・デュリスも「完全に音で覚えました」とQ&Aで答えている。役者さんって、本当にすごい。上映中は後方で観ていた僕はQ&A時に前方の席に移動していたので、「日本語カンペキでした!」と声をかけると、ロマンはにこり(とした気がするけど、分からない)。
上映終わり、本日はこの2本の鑑賞で終了。17時半までラウンジでパソコンを叩き、そこで知人と合流し、おすすめだというインド料理店へ。久しぶりのまともな食事だ!お店はTIFF Lightboxのすぐ近くで、落ち着いて素敵な雰囲気。タンドリー・チキン、カリフラワーとジャガイモのカレー炒め(アルゴビ)、マトンのホウレンソウのカレーの3品に、インドのビールを頂く。とっても美味しくて、幸せ。大満足。
19時半に、「ジャパン・フィルム・ナイト」と題されたパーティーに出席すべく、会場に向かう。雨は朝に降っただけみたいで、天候は穏やか。
パーティー会場は、小さなギャラリーがたくさん入った大きく素敵な建物の一室。トロント映画祭に出品されている日本作品の関係者を始め、配給会社やマスコミの方々、そしてもちろん海外の映画関係者が招かれて賑わっている。カンヌで話題となり9月6日に日本で先行公開された逸品『ぼくのお日さま』の奥山大史監督や、ミッドナイト部門に出品されている『ザ・ゲスイドウズ』の宇賀那健一監督らにお会いしてご挨拶する。とても貴重な場。
21時前に座を辞し、22時に帰宅。別件仕事で見なければいけない映画をパソコンで見続けて、1時に就寝。
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