メルカリのPMとしてやってきたこと #弊社のPMはこんなふう
メルカリのPMとして過ごして2年弱が経過した。これは僕が入社して以来初めて書いたnoteである。
この記事にたどり着いたということは、少しでもPMという仕事について知っている方、あるいは、知らないけど聞いたことがある方だと思う。そしてこのnoteは何かというと、メルカリのPMとして個人的に経験したこと、PMとは何なのか、今後やっていきたいことなどを正直に綴ったものだ。
なぜこのnoteを書いているのかというと、りょかちのnoteを以前見ていて、いつか書かねば...と思っていたのと、先日メルカリnote部に参加してそろそろ...となったからだ。りょかちのnoteはこちら。
自己紹介
遅れましたが、どうもヨシタカギです。福岡出身の28歳で、InstagramやYouTubeではメンズ美容について発信しているそのへんにいるただのアラサー。2018年3月にメルカリにPMとして中途入社したので、もうすぐ3年目に突入する。前職はサイバー・バズで新規事業立ち上げ屋さん、その前は起業家として美容系スタートアップをやっていた。なぜ今メルカリにいるかというと、toC領域でデータドリブンなプロダクト作りがしたいと思ったからだ。
メルカリで何をやってきたのか
メルカリに入社したきっかけは当時メルカリが運営していた「メルカリチャンネル(以後、メルチャン)」というライブコマースだ。前職でインフルエンサーマーケティングをやっていたこともあり、個人のエンパワーメント分野において貢献できると思い入社を決めた。
最初の2ヶ月くらいは、当時キックオフしたばかりの新規事業の立ち上げを担当。その後メルチャンのPMとして2018年12月までメルチャンのグロースやプロダクト開発に携わった。その後、2019年1月からはGrowthチームでCRM(Customer Relationship Management)を担当。CRMはGMVをKPIにしているチームなので、要は売上こそすべてのチームだ。メルカリはUXを磨き込むためのチームと、CRMのように売上をひたすら伸ばすためのチームがある。いや、正確にはもっと色々あるんだが、PMが多く所属しているのはこの2つの領域ということだ。
CRMではメルカリ上で配布するクーポン関連の機能を企画することが多い。みなさんのもとに届くクーポンは実は僕が企画していたりするかもしれない。
PMって結局何する人なの?
社内でもPMと言ったりPdMと言ったり人によって言い方が違う場合があるが、要はProduct Managerだ。世の中にはProject Manager(PjM)という職種もあるようだが、メルカリの場合はProduct Managerがそれも内包しているイメージでだいたい合っている。
https://www.mindtheproduct.com/what-exactly-is-a-product-manager/
僕がPMを説明するときはよく上記の図を見せて説明することが多い。
事業やプロダクトを作るときには、ITの分野であればだいたいこの3つの立場が存在する。UXというのは顧客との接点となるプロダクトの体験全体含め主にデザインに関わる領域。Techは文字通り技術的な立場で、エンジニアの仕事がそれだろう。Businessとは売上やKPI的な意味で、いかにデザインが良くて技術力があっても売れないプロダクトは優秀とは言えず、この3者のバランスが上手く噛み合うことでプロダクトはより成功に近づくという図だ。
Product Managerの仕事は、この3者のいずれでもなく、いずれでもある。各分野のスペシャリストたちとともに、間に入って調整を行い、それぞれの強みを活かしながらそれをどうプロダクトとして表現するのかを決める仕事だ。一見すると誰にでもできそうな仕事に聞こえるかもしれないが、やったことある人からするとこの仕事が容易ではないことはわかるだろう。
PMはプロダクトの成功のすべての責任を持ち、会社が描く戦略をプロダクトで表現し、実現させる仕事とも言える。
メルカリのPMに求められるスキル
一般論はこのくらいにして、メルカリではどんなスキルがPMに求められているのか。(これはあくまで個人的な見解なので採用面接とかの参考にはしないよう頼む)
まず前提としてメルカリは社員が数千人規模にも成長し、子会社を含め様々なプロダクト、プロジェクトがある。そしてメルカリはおそらくだが、他の会社に比べてPMの業務領域が広いほうなのではないかと思う。
まず、どんなプロダクトを作るべきなのかを決めるための定量分析、定性分析がある。定量分析はみんな大好きBigQueryなどでの分析業務だ。数字を通じてプロダクトの課題を発見する。僕は入社時はSQLが書けずに苦しんだが、今では日常的に分析を行っている。もちろん分析専門のチームもあるが、簡単な分析はPM側で行うことがほとんどである。定性分析はユーザーインタビューなどを通じた調査やVOC(Voice of Customer)をもとにした課題の発見だ。
次に、発見した課題に対しての解決策となるプロダクトの企画だ。(と言ってもメルカリほどのプロダクトになると、イチ機能であったりイチ画面であることは多い)
PMは企画職に割り当てられることが多いが、まさにこのプロダクト企画が腕の見せ所と言っても過言ではない。ただ、一言に企画と言っても、「課題が解決された」と言えるためにはどのKPIをどのくらいリフトさせるべきなのか、いつまでにリリースすべきなのか、今使っているアプリの中にどれだけ自然に溶け込ませるかなど、考えるべきことは多い。ただ確実に言えるのは、最小限の開発で最高のお客さま体験を提供し、最大の効果をもたらせれる企画が常に求められるということだ。
メルカリはアジャイル開発の手法を採用しているため、企画段階からデザイナーやエンジニアとともにどんなプロダクトを作るべきか考えることが多い。簡単なモックや、すでに実装されているエンドポイントを有効に使って開発工数を減らす企画をPMが中心となり考え尽くす。ここで完成した企画は仕様書という形でドキュメント化されることがほとんどであるが、あとから入社した人や他チームの人でもすぐに理解できるドキュメント作成力もPMとして大切な能力だ。あ、ちなみに最近はドキュメントも全部英語で書かないといけなくなったのでGoogle翻訳さんに頼りながらも英語でドキュメントを書ける能力もマスト...。
また、企画したプロダクトを最初から100%開放(全ユーザーが使える状態のこと)することはあまりなく、ほとんどがA/Bテストをしながら進める。このテストプラン作成も、もちろんPMの仕事だ。細かくあげたらキリがないが、許容できるインフラへの負荷の考慮をエンジニアと一緒に判断したり、エラーパターンを漏れなく列挙し定義するのもPMの仕事だ。すでに何でも屋さん感。。。
企画が完成し、リリースターゲットも決まったら次にプロジェクトの調整と人員の調整を行う。限られたリソースで同チーム内でも複数のプロジェクトが動いているため、優先度やアサインを決めることはとても重要なことだ。これはスタートアップでも同じと言えるだろう。
主にVPやマネージャーが中心となって優先度を決めることもあるが、PM自身がそこに入っていくこともある。調整仕事というのは大企業独特な業務ではあるので、大きな会社でPMをやりたい人は調整力があるに越したことはないだろう。
無事、人員も確保できプロジェクトがキックオフできる状態になればここからは開発のディレクションを行う。これはProject Management力が問われるところだ。すべての開発がスムーズに進むことはない。多くのプロジェクトは期限を過ぎてしまうことがほとんどだ。その中で常に必要なことと不要なことを判断し、当初予定していたターゲット通りにプロダクトをリリースするために全力を尽くすのがPMの仕事だ。QAの人員が足りないとなればPMがQAを兼任することもあるし、エンジニア同士の調整仕事の進行も行ったりする。PMの責務はプロダクトの成功であるから。
企画時、もしくは開発ディレクションと同時に各専門チームとの調整も行う必要がある。メルカリの場合は、法的な観点でレビューをするリーガルチーム、扱う情報やセキュリティについてレビューをするセキュリティチーム、経理的な観点でレビューをしてくれるアカウンティングチーム、加えてメルペイやマーケティングチーム、UXチームにも話を通しておくなど細やかな調整をひたすらに行うことになる。
チームが最善を尽くし、晴れてプロダクトがリリースされてもPMの仕事はそれで終わりではない。リリース後は当初定めたKPIがリフトしているのか、仮にリフトしていたとしても他の数値や定性面でネガティブな影響はないかなどを入念に測定する。効果測定だ。もし問題があれば課題のソリューションとしての仮説検証は失敗ということになりその機能はクローズ、問題がなければ100%開放するという流れになる。
メルカリでは、企画を失敗させることはあまりたいした問題ではない。打席に立ってチャレンジしていればまたチャンスは巡ってくる。たくさんの仮説検証を繰り返し、ヒットを連発できるまで企画の精度を磨き込むのがメルカリのPMとして重要なことだと思う。
ちなみに、僕の所属するCRMは社内でもマーケター寄りなPMが集まる部署でもある。グロースハッカーというと少しかっこいいかもしれない。お客さまをセグメント分けし、どの層にどんな施策を当てるのかをひたすら考え実行する部隊だ。ここで言う「施策」とは、Pushコミュニケーションだったりインセンティブ(ポイントやクーポン)の配布のことを指す。
これは開発を挟まず行うことができるので、上記で紹介した業務とは若干必要なスキルは違い、より売上ベースでのKPIツリー構造の理解、どのステージの人にどんな言葉遣いで何をどんなタイミングで届けるのか(WHO・WHAT・WHEN・HOW)を考え抜き結果を出すスキルが求められる。施策の結果がデイリーでわかるためやりがいが大きいものの、年末年始はゆっくりできたもんではない。
今後チャレンジしたいこと
最高のチームと最高の環境の中でメルカリのPMを2年弱経験した。
今後はML(Machine Learning)領域の知識をもっと身につけ、メルカリの強みでもあるMLチームとともにさらに磨かれた企画を世に出したい。
また、今までのキャリアはずっと画面越しの製品しか提供したことがないので、モノやコトを提供したいとも思っている。OMOという言葉もよく使われるようになってきており、さらにインターネットと非インターネットの接続は加速すると考えている。インターネットのための非インターネットの企画、プロデュースは興味のあるカテゴリーだ。
最後に
PMは一人では何も生み出せない。エンジニアやデザイナーなどの各分野のプロフェッショナルと最高のチームを作り初めて何者かになる。PMは常に周りの人たちに感謝し、助け合いながら仕事をするものだと思う。
誰かが「PMに必要なのは権力ではなく権威。この人の企画ならやりたい、この人と一緒に仕事をしたいと、人柄と信頼でチームを率いるんだ」と言っていた。僕もまさにその通りだと思っている。
最後になってしまったが、メルカリではPMを含め様々な職種でメンバーを募集している。興味があれば話ができることもあると思うので、ぜひフランクに話しかけてほしい。
参考
最後まで読んでいただきありがとうございます。メルカリのPM像が少しでも理解でき、参考になってくれたら嬉しく思う。
#弊社のPMはこんなふう シリーズは弊社の人間のエントリがあまりないように思えるので、ぜひ誰か違う角度からの意見があると見てみたい。このnoteの感想もお待ちしております。
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