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Vol.518「高市早苗への妄想は終わりにしよう」

(2024.10.30)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…石破茂を選挙の顔にした自民党は大惨敗を喫するという結果となり、早くも「ポスト石破」は誰かなどという話題も出始めている。中には「ゴー宣DOJO」の関係者や、女性天皇・女系天皇支持の論客の中にも「高市早苗待望論」が出てきており、「高市が総理になったら自民党内の男系派を抑えられる可能性が高いかもしれない」などと言い出している者がいる。だが、それはあまりにも政治家を見る目がないとしか言いようがなく、高市が男系派を抑えて、女系も公認してくれるなどという妄想には、全く現実味がない。
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…今回の選挙期間中、ネット上で「不気味な謎の立候補者」が話題になっていた。東京5区に立候補した無所属の3人、林りま、松本健太、フクイケンタである。3人とも、新聞や通信社に対して、顔写真の掲載を拒否しており、選挙ポスター以外の「顔」が一切見当たらない。ネット上では、「3人とも生成AIで作った写真で、存在しない架空の候補者なのでは?」という疑惑が浮上していた。実際、東京5区で3人の選挙活動を目撃した人はおらず、実在があやしいのだという。だが、衆院選の立候補には、戸籍謄本とともに、公職選挙法に違反していないという宣誓書を提出する必要があり、「実在しない人間」を立候補させることはできない。この3人はいったい何者なのか?そして誰が、どんな思惑で、こんな候補を立てたのか?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…闇バイトの問題をどう見てる?「皇統問題に命を懸ける」と言っていた“某議員”にまだ期待できる?双系派が一大勢力になった時、しれっと転向する男系派が続出しても「全部抱きしめ」られる?江戸時代、一介の盲人が大富豪になれた福祉政策とは?逢坂誠二のような不埒な議員にも、野田代表は良い顔をして「数」を確保しなければならない?漫画家のちばてつや氏が、漫画家初の文化勲章に選ばれた件についてどう思う?…等々、よしりんの回答や如何に!?



1. ゴーマニズム宣言・第547回「高市早苗への妄想は終わりにしよう」

 石破茂を選挙の顔にした自民党は大惨敗を喫するという結果となり、早くも「ポスト石破」は誰かなどという話題も出始めている。
 中には「ゴー宣DOJO」の関係者からも、「高市早苗待望論」が出てきているが、選挙後の情勢を見てそれはもう、あり得ないと判断するのが妥当だろう。

 確かに高市早苗は先月行われた自民党総裁選の投票1回目では1位になり、決選投票で石破に逆転されたという経緯があるから、それだけを見れば高市の名が上がるのも当然のように思えるかもしれない。
 高市は安倍晋三の後継者であり、ネトウヨを支持基盤とするゴリゴリの男系派であり、それを「私は女性天皇には反対していない。女系天皇に反対しています」とさえ言っておけばカムフラージュできると思っているような浅はかで小ズルい人間だが、これを真似る議員も続出している。みんな小ズルいのだ。

 ところがどういうわけだか、女性天皇・女系天皇支持の論客の中に、「高市が総理になったら自民党内の男系派を抑えられる可能性が高いかもしれない」などと言い出している者がいる。
 だが、それはあまりにも政治家を見る目がないとしか言いようがなく、高市が男系派を抑えて、女系も公認してくれるなどという妄想には、全く現実味がない。
 そもそも高市は、国会内の支持者が裏金議員ばっかりで、今回の選挙で軒並み落選しているから、もはや支持基盤を失っている。次にまた自民党総裁選をやるとしても、もう高市は立候補に必要な20人の推薦人を集められるかどうかも怪しい状況である。

 高市は今年も春・秋の例大祭と終戦記念日に靖国神社に参拝しており、総裁選の際も、首相に就任した場合でも「普段通り、淡々とお参りしたい」と述べていた。
 もはや、高市は靖国に行くからこその高市になってしまっている。行かなかったらたちまちネトウヨの支持を失うから、春秋の例大祭と終戦記念日にはもう行って見せなければ仕方ないのだ。
 では高市は、首相になっても靖国参拝ができるか? 小泉純一郎も安倍晋三も、首相になった途端に前言撤回してくじけてしまったから、同じ轍を踏む可能性は高い。
 だが、もしかしたら高市は参拝を強行するかもしれない。高市は、自分への支持をつなぎとめるにはそれしかないという状態になっているのだから。
 そんな高市が、支持を失うリスクを背負ってまで女性・女系天皇賛成に舵を切り、しかもそれでネトウヨの反発も抑え込める可能性が高いなんて、どう考えたってありうるわけがない。何をどう見たら、そんな妄想が湧いてくるのだろうか?

 高市は自民党内でも警戒されているが、それは、高市が真正過激ネトウヨだからだ。ネトウヨの支持をつなぎとめておきたいというだけの理由で、首相になっても靖国参拝を強行して、大騒ぎを起こすかもしれない。
 高市は真正過激ネトウヨで、現実的な視点で物事を判断することができない。だから高市にだけはやらせられないと、自民党内の幹部議員たちは思っている。靖国参拝さえすればいいという話ではない。その結果、中・韓と摩擦を起こし、さらにアメリカとの関係なども全部崩れてしまう可能性があるとして、警戒されているのである。

 そもそも、自民党政権でリーダーに求められるものは、政策のビジョンやロジックではなく、「人望」だという。
 御田寺圭というライターが「現代ビジネス」で指摘していたが、自民党とは良くも悪しくも「伝統的日本組織」であって、ロジックを軽視するわけではないにしても、「究極的には理屈ではなく『気持ち』で連帯を強める共同体主義的な部分が大きい」という。
 そのため、リーダーを務める者の「人望」がそのまま「組織のパフォーマンス」に大きく反映される。強い求心力を持つリーダーの下では、どの政党よりも強い結束力と実行力を発揮できるが、そうでないリーダーだとすぐにみんなバラバラになり、細部の詰めが甘くなり、思わぬ失態を招くという。

 今回はまさに、そんな自民党の特徴が典型例に表れたようだ。
 これが人望のあるリーダーだと、「この親分に恥をかかせるわけにはいかない!」と全員が一致結束する。
 それはほんの些細なことから重大なことまで徹底するもので、総理就任後の集合写真撮影の際に服の着こなしが崩れていたら、誰かが指摘して直したはずだし、非公認候補に2000万円を支給なんてことをしようとしたら、誰かが「それはヤバイです、やめた方がいいです」と進言したはずだという。
 ところが石破に対しては、そこまでサポートしようという気になる人が、誰もいなかったのではないかというのである。
 そう思えば、高市早苗に自民党内の支持が集まらない理由も、思想や政策よりも以前に、高市自身の「人望」にあるのかもしれない。真正過激ネトウヨ特有の人格的なものに由来する嫌悪感を、党内の多くの人が抱えているのではないだろうか。

 そして、御田寺氏はこう指摘している。

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