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Vol.516「石破茂には、やることがない。」

(2024.10.15)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…石破茂って、首相就任という悲願を果たしたはずなのに、なんであんなに辛気臭いんだろう?新政権が発足したはずなのに、なんであんなに刷新感がゼロなんだろう?石破はずっと防衛・安全保障の専門家を自称してきて、自らのオリジナルな政策として、「アジア版NATO」とか「日米地位協定の見直し」とかを主張していたのに、これを首相就任とともに全部ひっこめてしまった。勢いのある政治家には、いいことか悪いことかは別として、信念があるものだ。例えば小泉純一郎は「郵政民営化」に信念を持っていた。古くは田中角栄が「日本列島改造論」を掲げていたし、首相にはそれぞれに、やりたいことが見えたものだ。では、石破の信念って何なのか?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…かつてのヨーロッパの王室は、王様に男子が生まれなければ、勢力争いが迫って来るという情勢にあり、妻になった女性は、とにかくたくさん子供を産むことを求められた。産んだ子を自分で育てていては、次を産めない。だから、子育てを担う乳母がいた。たいていの王様に複数回の結婚の記録があり、妾との間に何人も子供をもうけたり、より若い妾を探しまわったりという話は、枚挙にいとまがない。ときに血なまぐさく恐ろしい、ヨーロッパ王室の男系維持の歴史を見よ!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…昔ながらの洋食屋さんで好きなメニューは?辻元議員は男系論者に叩かれても折れてしまうことはない?「人権」を否定する一方で「人権侵害」に関しては口舌鋭く非難する…「人権」とはどう折り合えば良い?袴田事件をどう捉えている?原爆について勉強するためのオススメの文献は何?…等々、よしりんの回答や如何に!?



1. ゴーマニズム宣言・第545回「石破茂には、やることがない。」

 石破茂って、首相就任という悲願を果たしたはずなのに、なんであんなに辛気臭いんだろう?
 新政権が発足したはずなのに、なんであんなに刷新感がゼロなんだろう?
 あれで本当に、総選挙に勝てるんだろうか?

 石破はずっと長いこと自民党内で干されてきて、じりじりとイラつきながら、その間にいろんな言論人などに接近し、わしの「ゴー宣道場(現・ゴー宣DOJO)」に出たり、宇野常寛と共著を出したりしていた。だが、それも結局は自分の存在感が消滅しないように、適当に相手に話を合わせていただけだったのだろう。
 そうしていざ首相になったのだから、今こそ長い雌伏の間に考えていた、本心からやりたかった構想を実行し始めるのかと思ったら、そうではなかった。
 実は石破茂には、首相になって本当にやりたいことなんか、何もなかったのだ。

 石破はずっと防衛・安全保障の専門家を自称してきて、自らのオリジナルな政策として、「アジア版NATO」とか「日米地位協定の見直し」とかを主張していたのに、これを首相就任とともに全部ひっこめてしまった。
 要するに、軍事オタクとして「こんなこといいなあ、できたらいいなあ」と夢想していただけで、その全てがあまりにも幼稚なプランだったものだから、首相に就任した途端、絶対に実現不可能だという現実にたちまちぶち当たったのだ。
 目玉政策のはずだった「アジア版NATO」にしても、それは完全に中国を仮想敵国として、多国間集団防衛体制の包囲網を敷くというものなのだから、同盟を組む相手はまず台湾であり、フィリピン、インドネシア、あるいはオーストラリア、インドまで、昔の大東亜共栄圏構想みたいなスケールで考えていかなければならない。
 じゃあ、まずその手始めとして石破が台湾を訪れて、台湾と同盟を組むとか、防衛連携をすることが出来るのか?
 アジア版NATOへの第一歩である台湾だけでも、日本が共闘しようとしたらその瞬間に、中国は猛烈な勢いで反発してきて、台湾近海の情勢が緊迫してしまうのは間違いない。

 今年就任した台湾の頼清徳総統は相当に過激な人で、10月10日の双十節(建国記念日)の式典で行った演説でも、中国には台湾を代表する権利はないと指摘し、中国の言う「一つの中国」原則に対して、中国にそんなことを主張する資格はないと強調した。
 また頼総統は、台湾と中国は「互いに従属するものではない」とも言っており、この発言に中国が猛批判している。だったら中国は、台湾に従属しろと言いたいのかという話になるわけだが、今度の台湾総統は、かなり独立志向の強い人なのである。
 台湾総統に独立志向が強いのは、わしにとっては実に好感が持てることなのだが、それは現実にはかなり険しい状況を生み、中国はこの演説への対抗措置として、台湾を取り囲むようにして周辺海域で大規模な軍事演習を行った。

 総統の演説一つでこれだけ緊迫してしまうのに、日本の首相が台湾を訪問して、完全に中国と敵対する防衛協力体制を作ろうなんて話ができるのか?
 もしそんなことをやったら、一番嫌がるのはアメリカだ。アメリカは何とかアジア情勢の方は穏便に済ませたくて、中国を刺激すまいとしているのだから、わざわざそんな火種になるようなことを許すわけがない。
 そこでアメリカの反対を押し切ってでもやるのなら、日本は自国軍を持つ、独立した一国でなければならない。現状がアメリカの属国であって、外交・軍事については全てアメリカが描く戦略に従うしかないというのに、いきなりアメリカの意向も何も関係なく、日本が独自の戦略なんて作れるわけがないのだ。

 しかも、仮にアジア版NATOをつくるのであれば、核大国である中国と完全に敵対するのだから、日本も核を持たなければならなくなる。それは果たしてできるのだろうか?
 自前で核を持たなくても、アメリカから借りればいいなんてことを三浦瑠麗なんかも安直に言ってたが、結局、肝心なところはアメリカ頼りになってしまうんじゃないか。
 しかも、アメリカが日本に核を持たせてくれるなんてことはあり得ない。それは当たり前で、日本が核を持てば韓国も持って、台湾も持って、フィリピンも持って、一気に核が拡散していくということになる。それをアメリカは非常に危惧しているのだ。
 全くの独立国ならば、どの国からどんな圧力が来てもやるべきことをやれるのだが、アメリカに守ってもらっている属国に、アメリカが嫌がることをできるわけがないのである。

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