デジタル万歳!アナログ万歳!
1995年にSOPHIAのベーシストとしてデビューし馬齢を重ね、ついに来年デビュー30周年を迎えてしまう事になってしまった。
思えばこの30年は、ミュージシャンにとって「アナログからデジタルへの転換や移行」と「アナログとデジタルの選択」を迫られ続けた30年だった。
昭和47年生まれのド田舎出身なので、世の中のあらゆる事が機械化、自動化され、アナログからデジタルに移行していく様をリアルタイムで見て来たし、その渦中にいたりもした。
ちなみに昭和47年生まれであるが3月生まれのため、学年は昭和46年生まれの連中と同じなので、4月2日以降生まれの諸君は「お、同い年じゃん!タメだよ!タメ!」などと言わない様に。
…などと52歳にもなって学年にこだわるアナログ日本人な俺。
ガキの頃…つまり昭和50年代初頭の頃まで、愛知県豊田市の山間部に住む祖父母の家では火鉢も竈門も五右衛門風呂も現役だった。
「生きる=食べ物を作り続ける事」で、田畑を耕し米や野菜を作り、タケノコを掘り梅をもぎシイタケを栽培し、放し飼いの鶏から卵を取り食肉にもし、味噌も醤油も作っていて一年中何かしらの食べ物を作り続けていた。
もちろん、街へ出ればもっと近代的な生活をしていたが田舎ではまだまだそんな半自給自足の生活は珍しくなかった時代だった。
そんなド田舎にも徐々にガスが普及し、電力も供給されオート三輪(三輪自動車)が姿を消して行ったが、広い土間と縁側があり、襖と障子、土壁と瓦屋根の祖父母の家はどう頑張ってもTVで見る「都会的な暮らし」にはほど遠かった。
その「世の中の変化に最後まで抗い続けるか?」の様に見えた祖父母の家にデジタル化の強襲が初めて訪れたのは、昭和58年の「ファミコンの導入」だった気がする。
ファミリーコンピュータ、通称「ファミコン」は、娯楽と言えば花札・トランプ・双六・オセロ・かるた・囲碁将棋などのテーブルゲームしかなかった生活を激変させていった。
ゲームセンターでしか遊べなかったゲームが「家電」として家庭で出来るという革命は家庭にデジタルを無理なく、かつ急速に浸透させていったが、さらに「デジタル」という言葉を爆発的に普及させたのは昭和57年に誕生しながらも昭和60年頃から一般に広がり始めた「CD」の登場だと思う。
その盤面に「DIGITAL」の文字をあしらったコンパクトディスク(CD)はメカニカルなイメージで世の男子の心を鷲掴みにし、「デジタル=洗練された良い音」という思い込みと、圧倒的な「お手軽さ」で何かと手のかかるレコードをあっと言う間に駆逐した。
…な~んて昔話なんかどうでもいいな。
SOPHIAとしてデビューする前にやっていたバンドでデモテープ(これもアナログだな)やCDを作る時のレコーディングはアナログRECだったから1インチ(2.54cm幅)のテープに直接録音する方法で、間違えたら最初からやり直し、録音した歌やギター、ベース、ドラムをステレオにまとめるTDもオートメーションなんかないから手動でやってたんだよ。
手動でリアルタイムTDしてその音をそのままテープに録音してそれがマスターテープになってCDになる…ま、TVの生放送が後編集無しでそのままDVDになっちゃうみたいなもんだな。
あれから30年。
今は1mm秒(1000分の1秒)単位で切ったり貼ったりできるからいくら失敗しても直せちゃうし、歌もどんなに音痴でも直せちゃうし、アナログなら数千万円する巨大な機材もデジタルシミュレーターがあるし、TDだってオートメーションで簡単になった。
だからRECの予算も時間も全然掛からなくなったんだよ。
でも、これってアナログを経験してるから言えることなんだよな。
REC前に沢山練習して、REC当日には重たい機材を運んで、面倒な配線もして、RECが始まれば納得いくまで何度も何度も最初から録り直して…こういう経験をしてるから便利な今を痛感出来るんだよな。
…おっさんでスマンな。
これでも若いヤツ等に老害と思われない様に昔話は控えてるつもりなんだよ。
でも、便利だからといって曲を切り貼りしたくないから俺は未だに「一発録り」に拘ってるんだ。
本番のステージで演奏の切り貼りなんか出来ないからね。
長らく一発録りをやってきたお陰で?RECは一曲につき数回弾けばOKなのだ。
えっへん。
気付けば使う機材もアナログに拘ってるんだよな。ベースはアナログだし演奏はもちろん手でするし、エフェクターもアンプもアナログだ。
デジタル機器は使い熟せば優秀だし便利なんだろうけどね。軽くてコンパクトで超多機能だし。
でもさぁ、やっぱ多機能なデジタルよりも1つの能力に特化したアナログの方が良い音なんだよなぁ…
…なんてのは嘘です。いや、嘘ではないかもしれないけど多分、デジタルの機材で演奏しても聞いてる人にはその違いは分からないだろうし、俺も違いは気にならないと思う。
ハッキリ言って、それを聞き分けられる人なんて超人だけです。
「自称・違いの分かる男」達が全然アテにならなかったのを目の当たりにしてきたからね。
でも、やっぱ昭和のおっさんにはデジタルは分かんないんだよ。
老眼で画面とかも見えないし、スマホだって未だに使い方が分かんないもん。
アナログで少ないツマミを感覚でイジってるのが俺にはお似合いです。
とは言え、今は契約書もデジタルでサインもスマホで出来ちゃうし、なんだかんだ仕事でもデジタル機器にお世話になってるんだよな。
やっぱりめちゃくちゃ便利な世の中だよ。
デジタル万歳!
でも、全部がデジタルになっちゃうのはイヤだな。
だってベースまで「デジタルの演奏や音の方が良い!」なんて言われたら俺の出番がなくなっちゃうもの。
うひ。