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俺たちもはじめての箱根駅伝

 古川大晃を応援するために、熊大OBの面々で箱根駅伝を現地観戦した。
彼が我々の前を駆け抜けるときに視線を向けてくれた、あのときの真剣な眼を私はきっと一生忘れないだろうと思った。

 遡ること箱根駅伝の2ヶ月前。
 予選会を走る古川を、妻と一緒にスマートフォンの小さい画面で食い入るように見ていた。レースの途中から興奮が止まらなくて、自分まで心拍数が上がっていたと思う。
 古川がゴールして、私は感極まった。どんな気持ちで走ったのだろうかと想像した。そして本選に出場する可能性が高いとわかったとき、本当に心が震えた。
 予選会が終わった直後、本選は現地観戦することを決意したと同時に、数名の熊大OBに一緒に応援に行こうと声をかけた。とんでもないことを成し遂げようとしている彼のことを、いつもより特別な気持ちで応援する人がひとりでも増えると良いなと思って誘った。(もともと行くつもりだった人ばかりかも)

 箱根駅伝当日。
 古川が2019年に熊大を卒業して6年弱経過して、それぞれの人生があるのに、年始からよくもこんなにOBが集まったものだと思った。
 現地入りするまで何も応援の計画を立ててなかったり、当日ぎりぎりになってマクドナルドで応援メッセージを準備したりと、はたから見ると真剣に応援するつもりがあるのか怪しい集団だったかもしれない。(しっかり前夜祭もしたし。)
 とはいえ、その後いざ沿道に立つとソワソワするもので、みんなで応援の予行演習なんかした。ひとり一文字ずつ持つことにした応援メッセージは胸の位置で高さで持つことにしようと話したり。TVに映るように応援メッセージをカメラの方に動かそうとか、あとは古川に届くようにみんなで応援の声を揃えようか、なんて話もした気がする。
 でも古川の姿を目にしたときにもう秩序はなくなった。何を打ち合わせたのだと、今思い返すと笑ってしまう。まだ彼がずいぶん遠くに見えるうちからみんなそれぞれに大声で「古川!」と名前を呼んで、いよいよ近くまで来た時もまたそれぞれが叫びまくった。私なんてそれはもうひどい顔で応援していたと思う。
 彼が走り去った後、会話の内容はあまり覚えていないけど、みんなで”よかった”という話をした。久しぶりに会えたみんなで、言葉にできないこの瞬間を共有できていることが、私は嬉しくて楽しくてたまらなかった。
 そういえば以前から彼は、”自分の周りが盛り上がってくれたら嬉しい”という主旨のことを言っていた。まったくその通りになってしまったわけで。

 してやられた感はあるけど。あるけれども。
彼が人生をかけてつくってくれた時間は、あたりまえに最高だった。
ありがとう。

 熊大時代に一緒に4年間を過ごし、身近な存在だった古川大晃はもはや多くの人の希望の星になった。
 別に何も不自然じゃない。彼自身が自分の力で箱根駅伝の切符を掴み取っていく過程は、まるで映画のようで、世界一カッコよかったと思うから。(私のほんの狭い世界での世界一。自惚れんな古川。)

 彼のこの尊いなんて言葉じゃ言い表せないほどの物語は、私の手の届く範囲で可能な限り多くの人に伝えたい。もはやそんな必要ないくらいスターだし、誰も頼んじゃいないし、私のわがままでしかないのだけど。

 ともかく、とても元気をもらった。心からありがとう。

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