見つかった、を見つけてくれる人。
企画をする。アイディアを出す。そういう仕事をしていると、日常的に、自分のアイディアを誰かに伝えるシーンがあり、誰かのアイディアを聞かせてもらう場面がある。単に良し悪しをジャッジするというだけでなく、テーブルに乗せた「アイディアのかけら」のようなものからブレイクスルーが生まれることも多々あるし、メンバー同士のアイディアが化学反応を起こしたりもする。
ひとりで考えていて「あ、これいいかも」という瞬間も楽しいけれど、打ち合わせの場所で新しい何かがうまれるというのは、また違う快感がある。間違いなくコピーライターの仕事の醍醐味のひとつだ。コピーは、自分の脳だけで書くのではない。
そんな、自分の考えと、誰かの考えが結びついたり、掛け合わあさったりする瞬間に出会うために、ひとつ大事だと思っていることがある。
それは、「この人が最も力を入れて考えたものはなにか」に目を向けること。アイディアというのは、最終的に磨き込んでいく段階では、減点法にならざるを得ない。穴(弱点)をつぶしていく感覚。だからなのか、経験を重ねていくうちに、アイディアの第一印象から減点法で見てしまいがちになってくる。あ、これはここがダメだからパーフェクトではないよね、と。
でも、「引き算」からは「掛け算」は生まれない。その人がもっとも注力している部分に、その一点のみに目を向ければ、少なくとも何かのエネルギーが、そこにはある。そのエネルギーを発火させられないか?という視点でアタマを動かしていくと、「見つかる」気がする。
考える作業、コピーを書く作業を、個人的には「見つける」と捉えている。ひらめく、とか思いつく、というよりも、広大な土地から、ひとつの光るものを掘り出す感覚。「あ、見つかった」と思える瞬間があるから、考える仕事を十数年も続けていられるのだと思う。
その「見つかった」を、ちゃんと「見つけてくれる」人が、優れたクリエイティブ・ディレクターなのだと思う。よく見つけたね、と。
その人が「最も力を入れて考えた場所」にすっと目線が向かうこと。それをすくい上げて、さらに磨き上げられないか?を試そうとすること。
コピーライターって、十数時間かんがえて、掘り出したのがたった1単語、みたいなこともある。それも新語とかではなく、ふつうに辞書に載っている言葉。でも、その1単語に、人を動かす力が宿っていれば、それはものすごく大きな資源になって。それをパッと見抜いてくれるクリエイティブ・ディレクターと仕事をするのは楽しいし、逆にいうと気を抜けないなと思う。
見つかった、を見つけてくれる人。そういう眼差しを持っている人でありたいな、と。