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生成AIを活用した顧客課題の効率的な発見と検証プロセス

こんにちは、NEWhの真行寺です。
今回は、生成AIを活用した顧客課題の効率的な発見と検証プロセスを紹介しようと思います。


はじめに

顧客の課題を探るインタビューを行う上で、仮説形成は重要なステップです。顧客が本当に直面している課題やニーズを的確に把握し、解決策の提示に役立てるためには、事前に仮説を立て、それに基づいた質問を準備する必要があります。しかし、従来の方法では仮説形成に時間がかかり既知の課題の収集にも手間がかかることが多いのが現実です。
ここで活用されるのが生成AIです。生成AIを活用することで、特定のペルソナにおける既知の課題を網羅的に収集し、仮説の形成を効率化することができます。本記事では、生成AIを用いた顧客課題の発見・検証プロセスについて、その手順や効果を解説します。

1. 生成AIを活用した効率的な仮説形成

生成AIは、事前に設定した特定のペルソナが抱える可能性のある課題を広範に収集するのに役立ちます。まずは仮説を持つ上で必要な、ペルソナに合わせた一般的な課題を網羅的にAIで生成し、事業領域における顧客課題の全体像を捉えることが可能です。この方法により、時間や労力を大幅に削減しながら、リサーチの質を向上させられます。

1-1. ペルソナ設定と課題抽出のフロー

ペルソナ設定:対象とする顧客像や行動特性を明確に定義し、AIにその情報をもとに課題を出させる。
課題の網羅的収集:生成AIが既存のデータや市場の情報を元に課題をリストアップし、仮説形成の基盤となる情報を効率的に収集します。

事例:慢性疾患を持つ若年層の患者について、AIによって生成された具体的な生活課題

2. 人間による課題の精査と分析

生成AIから得られた課題リストは、多様な可能性を含むものですが、必ずしもすべてが取り扱うべき課題とは限りません。ここで人間の判断力が活かされます。AIが出力した課題の中から、製品やサービスの事業領域に適したものだけをハイライトし、優先的に取り扱う課題を選定します。

事例:前述の生活課題について、サービス提供者の事業がヘルスケア以外の手段でQOLを上げようとしたときに優先される課題のイメージ

2-1. イシューマップによる課題の構造化

選定した課題は、イシューマップという形式で整理し、課題間の関連性や因果関係、階層構造を把握します。これにより、課題全体の俯瞰的な視点から顧客の潜在的なニーズや根本的な問題を明らかにしやすくなります。

事例:AIによって生成された患者の生活課題を、人の手によってイシューマップ化にしたもの

3. インタビューによる仮説検証

こうして構築した仮説は、実際の顧客インタビューによって検証されます。AIが提示した課題をベースに、人間が顧客から生のフィードバックを得ることで、仮説の精度を上げるとともに、インタビューの内容をより豊かなものにすることができます。

4. 従来の調査手法との比較と効率性向上
従来は、仮説形成にあたり、Webや書籍などのリサーチ、あるいは仮説形成のための事前インタビューが必要でしたが、生成AIを用いることでこのプロセスを大幅に効率化できます。既知の課題をAIが収集するため、仮説形成までの準備時間が短縮され、インタビュー前に行っていたリサーチの負担が劇的に減ります

5.このプロセスの課題

しかし、生成AIを使って既知の課題を抽出するプロセスは、AIのトレーニングデータやアルゴリズムのバイアスに依存するため、必ずしも特定の顧客ペルソナのリアルな課題を網羅できるわけではありません。生成AIが抽出する課題は、過去のデータや文献から生成されるため、最新の顧客の思考や行動パターンを反映できない可能性があります。また、特定のペルソナを正確に設定しない限り、生成AIが集めた情報が仮説形成に適切であるか疑問が残ります。

6.解決案

6-1.標準化された評価基準と多様な視点

今後は、生成AIを活用した仮説形成と課題の検証に対して、いくつかの改善策を導入していく予定です。まず、生成AIが出力した課題を精査する際には、誰が評価しても一貫した判断ができるように評価基準を標準化します。具体的には「顧客にとっての深刻度」「解決可能性」「頻度」といった指標を導入し、評価の信頼性を高めます。また、評価者チームには異なる専門性や役割を持つメンバーを加え、多角的な視点から課題を検討することで、より精度の高い仮説形成を目指します。

6-2-1.インタビューにおけるオープンエンド質問の活用

さらに、仮説検証のインタビューでは、AIの出力を基にした質問に加えてオープンエンドの質問を活用し、生成AIがカバーしきれない新しいインサイトを得られるよう工夫します。

6-2-2.複数ラウンド

仮説検証を複数ラウンドで実施することで、AIによる仮説形成と顧客からのフィードバックを循環的に繰り返し、仮説の精度と妥当性をさらに向上させる予定です。

6-3.従来の調査手法のハイブリッド活用

最後に、生成AIを活用したリサーチに加え、従来のリサーチ手法も組み合わせることでバランスをとります。生成AIの出力した仮説を、文献調査や市場レポートで補完することにより、仮説が現実の市場動向に合致しているかを確認するほか、主要な顧客層に対して事前インタビューも行い、AIによる情報を補完していきます。

結論

生成AIの活用は、顧客課題の発見と仮説形成の効率化に大きな変革をもたらします。人間が最終的な精査を行い、仮説を検証するプロセスを取り入れることで、従来の方法よりもスピーディーで精度の高い顧客理解が可能になります。顧客のニーズを的確に捉えたサービスや製品開発の実現には、今後、AIと人間の協働が欠かせません。

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