リスキリングという人材戦略
昨年の後半から、リスキリングが来ているそうです、なんだか耳慣れない言葉ですが、Re-Skillingと英語で書くと、なるほどわかりやすそうです。
リスキリングとは
リスキリングは、現在米欧で注目されている人材開発の手法のようです。リクルートワークス研究所のレポートから読み取れた内容としては、つまるところ、OJTやOff-JTを活用した新しいスキル獲得に近そうな印象です。
ただ、リスキリングの意味するところは、現在ど真ん中の”デジタル”に関わる技術に絞っているようなので、純粋な意味での”スキル”ではないようです。ちょっと前に、同じく話題になっていたリカレントとも違う動きのようですね(そういえば最近聞かない気がしますが・・)。
リスキリングを実践している企業
リクルートワークス研究所でも取り上げられてましたが、米アマゾンはこのリスキリングに力を入れている企業のひとつで、一人あたり数十万円を投じて人材のデジタル化を推し進めているようです(例えば非エンジニアのマーケターや営業にデータサイエンスの手ほどきをする、R, Pythonの基礎を学ばせるなど)。ちなみに米アマゾンの従業員数は十万人くらいなので、数百億規模の投資になりますかね、なかなかです。
よく知られているように、米欧の企業では雇用した人をずっと抱え続けることは一般的ではありません。事業として必要になったポジションに対して雇用して、環境が変わって事業を清算するときには、同時に人も解雇するようですので、既存の人材に新たにデジタルスキルを身に着けさせる、配置転換して再活用することは非常にエポックメイキングなことでしょう。
いやでもなんか若干既視感あるような・・
デジタルに限定されることはさておき、企業がコストをかけて組織内で人材のスキル開発をするというのは、日本の伝統的な企業ではごく一般的なことのように思います。いわゆる総合職、ジョブローテーションというやつです(同レポートでも触れられています)。
ただ、米欧と日本では根源的に思想が異なる印象です。日本は雇用そのものを維持することで従業員のサイコロジカルセーフティを確保、それにより事業に邁進してもらうことを是とした考えだと思います(それも高度成長の終焉とともにもはや一般的な思想ではなくなりつつあると思いますが)。
一方でこのリスキリングは、まだまだ簡単には獲得しづらい”デジタル人材”をどうにか探すのではなく、既存人材で賄おうとする作戦といえます。デジタル技術の使い所も山ほどあるのに、デジタルの進化速度が速すぎることを勘案すると、デジタルに長けた人材を血眼で探して高額で雇うよりも、既存人材をデジタル化する方が、なんだかリーズナブルです。
人材のあり方も変わっていくか
今後、国内でもリスキリングが流行るのかはわかりませんが、少なくともこれから大人になっていく世代は、日本か米欧かを問わず息を吸うようにデジタル技術を身に着けて社会に出てくるはずです。そんな時代が訪れるとき、米欧はこのリスキリングで培った人材開発技術を生かさない手はないでしょう。
ちょっと話は飛躍しますが、現在はHR tech やピープルアナリティクスといった研究も盛んです。これらは人材の情報を統計化して傾向や特徴を掴んで人事戦略に活かすもので、リスキリングの結果もこの材料にできそうです。そして、いつか来る(来るのか?)ポストテクノロジーの時代に求められるスキルの調達に生かせそうです。
日本はせっかくジョブローテーションの仕組みが一部では残っているのですから、これを研究し人材開発に生かすべきでしょう。日本のジョブローテはこれまでずっと好成績を収めてきた仕組みなはずなので、ただ捨てるのではなく、その特長にHR techをかけ合わせるなどして、より強力な人材開発システムを生み出せると良いんじゃないかと思います。