“ジャマおじ”からの脱却を目指すには
『シン・ニホン』では第2章(p110)に”ジャマおじ”という言葉が登場する.しかし,注釈がなされているだけで,ここは詳しくは述べられていない.そのため,今回はこの”ジャマおじ”について考えてみたい.
"ジャマおじ"とは
「ざくっと『シン・ニホン』 :2章 「第二の黒船」にどう挑むか - 日本の現状と勝ち筋 」 でも紹介したように,TED×Tokyoプロデューサーのパトリック・ニューウェル氏の意図する「ジャマなおじさん」からきている.
パトリック・ニューウェル氏「定年までの残り少ない会社生活を平穏にやり過ごしたいと思っている50代の社員たち。彼らの考えや行動には昔の成功体験が染み付いていて、ドラスティックな時代の変化や新しいビジネスのやり方に抵抗する。」
(出典)【企業の「ジャマおじ」だって劇的に変わる!? 世界的なプレゼン講演会「TED」に学ぶ発想法 TEDxTokyoプロデューサー/パトリック・ニューウェル氏インタビュー】 2015.9.18 5:00
(出典)Gerd AltmannによるPixabayからの画像
”おじさんOS”
【小島慶子「私の中にもあった“おじさんOS” 肩書や収入で人の価値をはかっていませんか?」】という記事でタレント&エッセイストの小島慶子さんが以下のように言っている.
「おじさん・おっさん・おやじ」は、独善的で視野の狭い中高年男性を指すこともあります。肩書や収入で人の価値をはかり、役割を押し付けて見下す。現実を見ず、人の話を聞かず、質問に答えず、丁寧な説明もしない。末端に自己責任論を押し付けて責任逃れをする。そんな態度への批判が込められています。
これを読んだ瞬間,何人かの顔が具体的に思い浮かんでしまったが,周りにもこういった状況はよく見られるのではないだろうか?例えば,自分と価値観が合わない人は切り捨て,言いなりになる人をかわいがる人.あるいは,新型コロナが蔓延していても,危機感もなく,まるで風邪かのような対応で済ませようとして,若手社員に「お前ら,怖いんか?」と尋ねる人...
それはともかく,ここで言われる「昔の成功体験」は,まずは学歴に反映され,その後,仕事をした結果としての現在の肩書,収入というところに反映されていると考えられるが,それはある意味でFactであるとしても,その軸だけで判断するところが問題なのだろう.(その割には本人に学歴コンプレックスがあったりもする...)
また,自分の「昔の成功体験」が正しいと考えているがゆえに,「ドラスティックな時代の変化」が起こっている「現実」を見ず,人の意見を聞かないから,「新しいビジネスのやり方」も学ばない.
「技は背中を見て盗め」という時代を生き抜いたがゆえに,また,異なるバックグラウンドのメンバーに対して説明を尽くして動かすことをせずともやってくることができたから,「質問に答えず、丁寧な説明もしない」という態度になるのだろう.
こういった考え方や行動が染みついてくると,
学歴・年収・肩書で序列が決まり、負けたら自己責任。勝ち残った者が長い間居座り、好き放題する。それを「仕方ない」と思わされていないか。
ということになってきて,まさに成長のためのジャマにしかならない.
(出典)Gerd AltmannによるPixabayからの画像
OS(考え方)がアップデートしない理由
【「プライドが高く、頑固…「シニア人材」に手を焼く管理職の嘆き」西村 直哉2019.11.8】という記事によると,頑固になるのは,「そこに何か譲れないものがあるから」であり,その「何か」の一つが「長年会社に貢献してきたというプライド」だという.
そして「過去の成功体験」からくる「自信」。成功体験は,外部環境の影響もあって,通用しないような状況になることもあるが,「アドバイスが受け入れられないことでシニア人材のプライドは傷つ」くということになるという.さらに「役職定年や定年再雇用によって役職を奪われたり給与を減額されたりしたことも、シニア人材のプライドを少なからず傷つけてい」るという.
シニア人材が求めているのは、本来であれば受け入れがたい待遇の悪化を取り戻せるだけの敬意
こそが,記事では重要だと主張しているが,敬意が払われたら,”ジャマおじ”の考えや行動は変わるのか?大いに疑問である.
(出典: Brand Resources > Facebook App > 親指アイコン)
”ジャマおじ”から脱却するためには
”ジャマおじ”にならないためにはどうすればいいか.先ほどの小島慶子さんの記事では,
自問するところから、脱・おじさんOS社会が始まる
といわれているが,そもそも”ジャマおじ”が「自問」なんかするのか?自分でOSをアップデートするのは無理があるだろう.
『シン・ニホン』では,
「スキルを刷新」しなければいけない
と言っている.ここで重要なのは,単に「リスキリング(reskilling)する」だけではなく,マインドセットあるいはOSを書き換えるということである。
(出典:Markus WinklerによるPixabayからの画像)
リスキリング施策を用いてOSをアプデする方策
Amazonが従業員の教育費を全額負担するというニュースが流れていた.
1月から、入社90日目以降の大学の授業料、手数料、教科書代を負担する。国内の数百の教育機関での学位取得に適用
日本では,教育訓練給付制度という形で社会制度として厚生労働省が実践しるところであるが,その趣旨は以下にあるように,「スキル」に焦点があてられている.
人生100年時代を見据え、手に職となるスキルを身につけたい、
新しいキャリアを開拓したい、と考える人を応援するための制度
(出典:教育訓練の種類)
このような形で認定される講座すべてに,”OSアプデ”を仕込んでおくことを必要条件とするといいのではないか.
すなわち,OSをアップデートするような要素を,講座認定の要件にしておくのである.そうすれば,少なくともこの仕組みを使って「リスキリング」する場合は,OSがアップデートされる可能性がある.
もちろんこれだけではないだろうし他に方策もあるのかもしれないが,今ある仕組みの中に組み込んでいくならば,こういったことも考えられるだろう.
まとめ
・”ジャマおじ”特有の「おじさんOS」を書き換えることが重要
・「リスキリング」することでOSをアップデートすることができる
・リスキリング施策の中に「OS書き換え」を仕込んでおくといいのでは?!
トップ画像:O V@Pixabay