ざくっと『シン・ニホン』 :2章 「第二の黒船」にどう挑むか - 日本の現状と勝ち筋
■2章の目的と構成
2章の目的は,世界とも比較しながら「日本の現状」を認識すること!
2章の構成は,以下の7つのパートで構成されている.単なる課題の羅列だけではなく,「勝ち筋」はどこにあるかという示唆もあるので,大きな方向性を考えるヒントがある!
以下,それぞれのパートについて概要を説明する.
■一人負けを続けた15年間
他国が経済成長と遂げる中,一人負けを続けてきた日本.2010年には名目GDPが中国に抜かれ世界第3位となった.ちなみに,購買力平価換算では「中国、米国、インドに次ぐ世界第4位」となっている.
生産性が低いことも指摘されているが,裏を返せば,「伸びしろ」があるということ.なのだけれど,ちょっと残念...
(参考)
・第135回 日本は「世界第3位の経済大国」というけれど https://www.nissay.co.jp/enjoy/keizai/135.html
・国民経済計算(GDP統計) https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html
・World Bank national accounts data, and OECD National Accounts data files.
https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD
・生産性に関する研究 https://www.jpc-net.jp/research/rd/
・Statistical Handbook of Japan 2020 https://www.stat.go.jp/english/data/handbook/pdf/2020all.pdf
■埋もれたままの3つの才能と情熱
現在,日本で埋もれているのは,「若者,女性,シニア層」の3つ. 特にシニア層については,
という状況.「学び直し」もなされていない状況ではあるが,これまたちょっと悲しい…(ToT)
(参考)
・暮らしと金融のデータ ─ データ資料室「知るぽると」金融広報中央委員会
https://www.shiruporuto.jp/public/data/life/
・OECD.Stat Real minimum wages https://stats.oecd.org/index.aspx?DataSetCode=RMW
・「雇用関係によらない働き方」に関する研究会 報告書 https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20170330001.html
■国力を支える科学技術の急激な衰退
日本の大学のプレゼンスが下がっていると言われている.その証左として,論文数が伸び悩み,他国に追い抜かれている.
海外の大学では,論文を書けば奨励金がもらえるが,日本では,雑誌への投稿掲載料を個人で負担している状況.
(参考)
・151研究領域におけるTOP10%論文数の 国際シェア順位の推移(7か国比較) https://www.jst.go.jp/osirase/2019/pdf/Top10papers_20190513.pdf
・NSF SCIENCE & ENGINEERING INDICATORS https://ncses.nsf.gov/indicators
・THE(Times Higher Education)World University Rankings https://www.timeshighereducation.com/content/world-university-rankings
・U.S. News &World Report ”Best Global Universities Rankings” https://www.usnews.com/education/best-global-universities/rankings?int=top_nav_Global_Universities
■データ×AI世界で戦うには
データ×AIの世界で戦うためには,仕組みや技術,人が必要.
その一方で,理数素養のある学生の割合が少なすぎるというのが日本の現状.日本の若者たちは、持つべき武器を持たずに戦場に出されている.そのため,以下のような状況に陥っている.
このままでは「ジャマおじ」だらけの社会になり,
という状況に陥りかねない.
一方で,ジャマおじにならないためには,「スキルを刷新」しなければいけないが,「身に付ける方法が分からない上,学ぶ場がない」という状況.
(参考)
・ 産業構造審議会 新産業構造部会 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shinsangyo_kozo/index.html
・産業構造審議会 新産業構造部会 第2回 資料6「AI×データはビジネスをどう変えるか」(安宅和人)2015.10.28 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shinsangyo_kozo/pdf/002_06_00.pdf
・TEDxTokyo2016 シン・ニホン – 安宅和人 https://www.tedxtokyo.com/tedxtokyo_talk/shin-nihon-kazuto-ataka/?lang=ja
・「データ時代に向けたビジネス課題とアカデミアに向けた期待」(応用統計学セミナー)(安宅和人)2015.5.23 http://www.applstat.gr.jp/seminar/ataka.pdf
・企業の「ジャマおじ」だって劇的に変わる!? 世界的なプレゼン講演会「TED」に学ぶ発想法 TEDxTokyoプロデューサー/パトリック・ニューウェル氏インタビュー https://diamond.jp/articles/-/78502?page=5
・産業構造審議会 新産業構造部会 第5回 参考資料「これから求められる人材について」(安宅和人)2016.1.25 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shinsangyo_kozo/pdf/005_s02_00.pdf
■日本に希望はないのか
そんな状況ではあるが,さて,日本に希望はないのか?いや,ある!ということで,ここでは「希望」を見出すためのヒントが述べられている.
データ×AIの話は,「入口系」と「出口系」がある.日本は,出口系となるところを持っており,その強みとチャンスを活かすべき!ということ.
(図の出典:「第10章(講演録)“シン・ニホン”AI×データ時代における日本の 再生と人材育成」(安宅和人)https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/00report/inv2017/inv2017_report10.pdf )
■まず目指すべきはAI-readyな社会
一筋の希望が見出せそうということだが,まず最初に目指さなければならないのは「AI-readyな社会」.
日本は,AIを議論する用意すらできていないが,そのような状況下で,AI-readyにするための10個のポイントが挙げられている.
一丁目一番地は,「AIとデータの力を解き放とうとしているか」という「志」自体をもてているかということである.
また,本文では,企業レベルでもAI-ready化された状態かどうか5つのレベルが示されている.(参照:AI-ready化ガイドライン)
(参考)
・経団連「Society 5.0 -ともに創造する未来-」 http://www.keidanren.or.jp/policy/society5.0.html
・経団連「AI活用戦略 ~AI-Readyな社会の実現に向けて~」(AI-ready化ガイドラインを含む) http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/013.html
・人間中心のAI社会原則検討会議 https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/humanai/index.html
・人間中心のAI社会原則検討会議 第2回 資料3-3「“AI ready”とは何か?(試案)」(安宅和人)2018.6.1 https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/humanai/2kai/siryo3-3.pdf
・独立行政法人情報処理推進機構 技術本部 ソフトウェア高信頼化センター「AI社会実装課題の調査と対策の方向性に関する報告書を公開」https://www.ipa.go.jp/sec/reports/20180619.html
■日本の本来の勝ち筋
日本の戦後の勝因は,
ではなく,実態は,
というところ.若い才能が挑戦するところから産業が生まれているので,それを思い出して,「もう一度ゲームチェンジを仕掛けよう!」
この章には,そういうメッセージが込められている.
■まとめ
・日本はこの15年間,一人負けしていて,科学技術も急激に衰退している
・まずAI-ready化を目指そう
・日本はこれまで若い才能が挑戦して産業を生みだしてきたことを思い出せ