ざくっと『シン・ニホン』 :6章 残すに値する未来
■6章の目的と構成
6章の目的は,具体的な提言およびその作り方を理解すること!
6章の構成は,以下の4つのパートで構成されている.
・不確実な未来にいかに対処するか
・この星は今,どうなっているか
・新たなテクノロジーと持続可能な世界
・ビジョンから未来をつくる-「風の谷」という希望
以下,それぞれのパートについて概要を説明する.
■不確実な未来にいかに対処するか
未来は不確実である.しかし,単に想像するだけ,予測するだけのものではない.
未来は目指すものであり,創るもの
という考え方の下,どのように向き合っていくかが記されている.
(参考)
・DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2009年7月号「不確実性時代の戦略思考 【新訳】4段階に分けて適切な戦略と行動を選択する」 https://www.dhbr.net/articles/-/359
・ Enduring Ideas: Portfolio of initiatives(October 1, 2009) https://www.mckinsey.com/business-functions/strategy-and-corporate-finance/our-insights/enduring-ideas-portfolio-of-initiatives
■この星は今,どうなっているか
水産資源が枯渇しているとか,地球温暖化が問題になっているとか,巷で言われている話は,『シン・ニホン』でも記載されている.
(参考)
・太平洋広域漁業調整委員会議事録 https://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_kouiki/taiheiyo/index.html
・海面漁業生産統計調査 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kaimen_gyosei/
・『サバがトロより高くなる日』(井田徹治)https://amzn.to/3zdgMRw
・『ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来』https://amzn.to/3kfONKL
・『ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来』https://amzn.to/3sMyfhp
・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル http://www.env.go.jp/earth/ipcc/6th/index.html
・IPCC AR6 Climate Change 2021: The Physical Science Basis https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/
■新たなテクノロジーと持続可能な世界
『シン・ニホン』では,目指すべき未来の姿は,社会運動論的なSDGsとテクノロジードリブンなSociety5.0の交点にあると述べている.
ちなみに,SDGsの17のゴールを,「才能と情熱を解き放つ」ための9つのゴール,「持続可能な空間を作る」ための6つのゴール,「力と方法を持つ」ための2つのゴールといった形に分けて考えているのは『シン・ニホン』以外ではあまりお目にかかったことがない.
(参考)
・外務省 Japan SDGs Action Platform https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html
・国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所 https://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sustainable-development-goals.html
・内閣府 Society 5.0 https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/
・ソサエティー5.0 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%82%B5%E3%82%A8%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC5.0
■ビジョンから未来をつくる-「風の谷」という希望
課題を見極めて解決していく方法として,「ギャップを埋める」ものと「ビジョンを設定する」ものがあることについても述べられている.
そして,ビジョン設定型の典型的な例として,宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』に見られる原風景をイメージして,「風の谷を創る」という運動について紹介されている.
探究すべきは「オフグリッド的な解」だと考え,関連する課題を解決するためには,どうすればよいかという検討もなされているようである.
また,健康医療システムの例として,「菊の花構想」というものも考えられている.都心の中核医療機関が菊の花の真ん中にあるように考え,周辺に菊の花びらがあるように,自動走行による巡回バスが走るといった構想である.
このような場所は,都市に対応し得る求心力を生み出し,維持し続けることができるのか,という問いも立てられている.一つの解決策として,土地ごとに根付く重層的な記憶を活用してはどうかという考え方も提示されている.
こう考えていくと,「風の谷」は,一つの在り方であり,それに賛同する人たちが運動として盛り立て,実現していくことで,新たな解決策を見出し,イノベーションにつなげていくこともできるかもしれない.
(参考)
・「風の谷」という希望 - ニューロサイエンスとマーケティングの間 https://kaz-ataka.hatenablog.com/entry/2019/07/15/015558
・Introduction 「風の谷を創る」ことで、未来そのものを創る https://slowinternet.jp/article/intro_valley-of-wind/
■さいごに
著者の安宅和人氏は,湯川秀樹博士の言葉とともに最後を締めくくっている.
「一日生きることは,一歩進むことでありたい」湯川秀樹
さあ行動だ.
そう,残すに値する未来に向けて,自分ができることをやっていくこと.それが大切なのだ.『シン・ニホン』は,多くの人の背中を押してくれるものである.