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ざくっと『シン・ニホン』 :1章 データ×AIが人類を再び解き放つ - 時代の全体観と変化の本質

■1章の目的と構成

1章の目的は,副題のとおり,「時代の全体感と変化」を認識すること!

第1章の構成は,以下の4つのパートで構成されている.

・歴史的な革新期
・知的生産そのものが変わる
・不連続な変化はデータ×AIだけではない
・未来の方程式

以下,それぞれのパートについて概要を説明する.

■歴史的な革新期

「歴史的な革新期」のパートでは,まず初めにAIの進化の様子が紹介されている.

<囲碁AIの進化>
『シン・ニホン』の冒頭では,2016年3月,英DeepMind社(Googleが2014年に買収)の囲碁AI「AlphaGo(アルファ碁)」がプロ棋士イ・セドルに勝ったところが紹介されている.

囲碁は,

宇宙より複雑なゲーム

と言われている.AlphaGoと対戦したイ・セドルは,

1996年に12歳でプロに昇段し、それ以降に18回の世界王者となっている

が,そのイ・セドルにAIが勝利したことで,囲碁AIが人間よりも強くなったことが証明されたという歴史的な出来事だったのである.

(参考)
・世界トップ棋士のイ・セドルにGoogle AIが挑んだ五番勝負、4勝1敗でAIが勝利 https://jp.techcrunch.com/2016/03/16/20160315google-ai-beats-go-world-champion-again-to-complete-historic-4-1-series-victory/
・黒37手と白78手:AlphaGoとイ・セドルが再定義した「未来」https://wired.jp/special/2016/alphago-vs-sedol/
・AlphaGo対李世ドル https://ja.wikipedia.org/wiki/AlphaGo%E5%AF%BE%E6%9D%8E%E4%B8%96%E3%83%89%E3%83%AB

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<深層強化学習>
AIは,深層強化学習を用いて進化していく.そのため,

「情報の識別」「予測」「目的が明確な活動の実行過程」をことごとく自動化していく

ところにつながっていく.

(参考)

連載:図でわかる3分間AIキソ講座 深層強化学習とは? AlphaGo(アルファ碁)の仕組み https://www.sbbit.jp/article/cont1/58531

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その結果,どういうことになるか.

リニアな思考では世界を読み違える

ということになる.よって,

すべての変化は桁で考える必要がある

のである.ちなみに,

指数関数的というのは不連続という意味ではない

連続的だが,少し時間がたつだけで「想像を絶する変化」になっていることに気を付けなければならないということ.これは裏を返せば,「前向きな話」であり,

今,技術的にできないからといって簡単に諦める必要はない

ということ,すなわち,時間が経過すると,できなかったことができるようになる可能性があるということなのである.

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■知的生産そのものが変わる

事業者がサービスを含むプロダクトを提供し,ユーザーが用いることで,そのデータが収集され,そこから状況を把握して洞察を得ることで,アルゴリズムに反映し,サービス・プロダクトを改良していく.

このような「ループ」は,いわば「系(システム)」であり,これからは,

系そのものをチューニングすることが業務の中心になる.

よって,単にデータがあるだけでは価値がなく,それらを有機的につなげていくことができることが重要になるのである.

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(図の出典:公正取引委員会 デジタル市場における競争政策に関する研究会(第7回)「アルゴリズム/AIと競争優位性(データとの関連を中心に)」2021.2.8(長島・大野・常松法律事務所 弁護士 小川聖史)[pdf])


ちなみに,AIとは,

計算機×アルゴリズム×データ

と表現できるという.情報処理能力が高い計算機と,機械学習や深層学習などの情報科学,ここに大量のデータが重ね合わされてはじめて,特定用途向けのAIとなるのである.

(参考)
特定用途向けAIについて:
・内閣府 人間中心のAI社会原則検討会議 2018.6.1 「“AI ready”とは何か?(試案)」(安宅和人)[pdf] p.7


■不連続な変化はデータ×AIだけではない

データ×AIというソフトウェアの分野だけでなく,ハードウェアの分野でも不連続な変化が起き始めていることが, 2016年のノーベル化学賞となった分子マシン(Molecular machines)などを例にして紹介されている.

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(図の出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Nanob.jpg

(参考)
・【速報】2016年ノーベル化学賞は「分子マシンの設計と合成」に! https://www.chem-station.com/blog/2016/10/nobel2016.html
・分子でできた世界で最も小さな装置のデザインと製作 https://www.nikkyoko.net/common/download/2016/chemical2016.pdf
・分子マシンの時代がやってきた https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v12/n12/%E5%88%86%E5%AD%90%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%8C%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%9F/69944

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(図の出典:「東大で(研究内容が)今年のノーベル賞に最も近かった学生が解説!「分子マシン研究のロマンと基礎研究の重要性」【ノーベル賞Week②】」)


■未来の方程式

このような状況を踏まえた未来の方程式は,単なる技術だけでなく,「新たな価値への挑戦(夢)とそれを形にする力(デザイン)」と掛け合わせることで,未来の価値を生み出していくことになり,その式の形は,

未来=夢×技術×デザイン

となるという.ここで,デザインとは,単なる意匠ではなく,「目に見えない特別な価値を生み出す」ものであり,

素晴らしい世界を描き,領域を超えたものをつなぎデザインする力

とされているが,これがこれまで以上に重要になっている.我々は,この事実をきちんと認識しておくべきである.

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■まとめ

・AI = 計算機×アルゴリズム×データ は急速に進化している.そのため,リニアな思考では世界を読み違える.

・今後,データを集め,データを活用する「系」そのものをチューニングすることが業務の中心になる.

・未来の方程式=新たな価値への挑戦(夢)×技術×夢を形にする力(デザイン)


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