Column #23 12/14発売の新作2枚について
本名名義として、そして自分のレーベル「Symphony Blue Label」からの作品として、2作目&3作目を12/14に同時リリースする。僕にとって2度目のヨーロッパ企画・サウンドトラックと、6曲入りEP「冬の大六角形」。どんな形であれ、自分のレーベルのカタログが増えるというだけで嬉しいものだ。
今回は一般流通を通さないので、新しく立ち上げた通販サイト「青木商店」とライブ会場のみでの販売になる。HARCOのキャリア後半も、ポリスターから出した代表的なアルバム以外は、とくに流通を通さずにハルコレートから細かくリリースしていたので、今回もどちらかというと後者の感覚(後述するが、そういう感覚にしてはかなり良いものが出来てしまった...!)。
先に「冬の大六角形」の方の紹介を。このEPの制作までの経緯としては、本来2ndフルアルバムを念頭にコツコツと作っていたのだけど、8月後半の時点でまだレコーディングに入る状況には至らず、「2019年のうちのリリースはフルアルバムだともう間に合わないな...」と思ったところがスタート。
ならば、その時点で作りためていた曲たちよりは、もう少しさらりと聴きやすいライトな曲を集めたEPの制作の方に舵を切ってみようと思った。というわけで、それまでの曲は一旦忘れて、9月中に新鮮な気持ちで立て続けに書き下ろした。それが6曲中の3曲。いずれも構成を難しくしたくなかったので、あえて完成までの時間をごく短く設定してみた。
その3曲のうちの1曲と、10月に入ってから作ったもう1曲は、短歌の歌人である伊波真人さんに詩を書き下ろしてもらった。1年半ほど前に、彼の本が本屋さんに並んでいて、それを何気なく購入したのが伊波さんを意識したきっかけ。なんとその日のうちにSNSで繋がって、そこで伊波さんが何度か僕のライブに来てくれていた人だということが分かり、一緒にお茶をして意気投合。そこで作詞も得意ということを聞いていたので、短歌のセンスですでに信頼していた僕は、今回こうして依頼。ふたつの楽曲が出来上がった。
このEPは1stアルバムのピアノ弾き語りとは打って変わって、ゲストミュージシャンも多数。エレクトロ系を得意とするトラックメイカーの安田寿之さん(下の写真・右)に、シンセやリズムパターンの協力をお願いし、メールのやり取りを中心とした遠隔作業で打ち込んでもらう。ギタリストの石本大介くん(下の写真・左)には、おなじみの彼の自宅スタジオに出向いたり、やはり遠隔でやり取りしたりして、5曲を弾いてもらった。このふたりにはHARCOのラストアルバム「あらたな方角へ」でも、3曲の同じ曲で参加してもらっているて、リリース後の僕も含めた一度きりのトリオ編成ライブでは、大いに盛り上がった。
女性コーラス陣も豪華。6曲中2曲を先日ライブで共演したばかりの常盤ゆうさんに。やはり他の2曲を、来年僕のレーベルからリリース予定の女性SSW・Otto(オットー)こと乙川ともこさんに。それと、流暢な英語のセリフで参加してくれた、HARCOバンド・ドラマーの榊原大祐くん。(下の写真・左→右)これでゲスト参加者は6人。6曲入りで「冬の大六角形」と「ぼくときみの第六感」というふたつの曲があったり、今回「6」という数字になにかとこだわっているので、ここでも奇遇だったのが嬉しい。
今回のEP、すでに書いた通り、フルアルバムに比べてさらりとした聴きごたえというか、メロディやコードは深く作り込まないようにしようと思っていた。言い方は非常に悪く、聴いてくれる人にもある意味無礼だとは思うのだが、「いわゆる"良い曲"は作らない、入れないようにしよう」と自分に言い聞かせた。ドラマチックではなく、プレーンな質感の方の気楽さと面白さを探したかった。
でもその意識のせいで肩の力がかなり抜けたのか、結果的にここ数年の中でも、良曲率の高い、いわゆる"名盤"が誕生してしまったのではないか!? と、今では思っている。その定義には曲数は関係ない。そして6曲入りだと名盤が生まれやすいと言ったら、HARCOリスナーだったら頷いてくれるだろう。あの3部作よりもっとHARCO初期の方のミニマル感があり、どの曲も僕の元来の声とすこぶるマッチしている気がする。こんなにゲストを呼ぼうとも思っていなかったけど、今になって思えば、曲の力がそうさせたのかな。
そもそも1stアルバム発売時の雑誌やラジオのインタビューでは、次やそのまた次くらいまではピアノ弾き語りか、そうでなくてもアコースティックなアルバムを作り続けると言っていたのに、全然違って、エレクトロ要素のある、リズムからコーラスまで多くのトラックを重ねたアルバムとなったことに、自分でも驚いている。つくづくこう思う。インタビューで今後の方向性を聞かれたとしても、断定したように答えるものではないなと。
さて、かわって同日発売のもうひとつの作品のタイトルは、『ヨーロッパ企画 第39回公演「ギョエー!旧校舎の77不思議」オリジナルサウンドトラック』。長い…。2015年の「遊星ブンボーグの接近」に続いて、劇団「ヨーロッパ企画」への2度目の音楽参加であり、2枚目のサウンドトラック。
オカルト青春コメディをテーマに掲げたお芝居で、CDはなんと77曲入り! そのうちの55曲は、お芝居の中で怪奇現象が起きるたびに、文字通り役者さんが「ギョエー!」と叫んだり(叫ばなかったり)して、同時に鳴り響く効果音を制作したもの。それらを録音している。
実際に怪奇現象は77回(本当は78回...)起こり、そのたびにタイプの違うものを作ったのだが、CD自体を77曲入りにしたかったので、音楽を22曲、効果音を55曲、というバランスにさせてもらった。ちなみに配信版はそれらが入っていないので、22曲入り。すべて網羅したい人は、ぜひCDで!
今回の目玉は役者さんが演奏に参加していること。どちらもヨーロッパ企画の正規メンバーではなくて客演としての出演なのだが、フルートを祷(いのり)キララさんが、琵琶を日下七海さんが演奏してくれた。このおふたりは劇中でも実際に演奏しているのだけど、お客さんは一瞬「ええ?役者さんが本当に演奏してるの!?」という顔になるし、実際のパフォーマンスも素晴らしく、それだけで贅沢な空間。
さらに「骸死骸(むくろしがい)高校 校歌」(なんともおぞましい校名...)というタイトルの曲では、ヨーロッパ企画と親しい劇団「THE ROB CARLTON」の村角ダイチさん、満腹満さん、ボブ・マーサムさん(写真・左→右)が参加してくれた。 昔の唱歌のような歌い方をしてくれて、劇の中でもこの歌のシーンが重要な役割を担っていた。
僕自体の制作はというと、「ブンボーグ」のときで代表・脚本・演出の上田誠さん(下の写真)の脚本が出来上がるペースはなんとなく掴めていたので、公演が迫るぎりぎりの中でも気持ち的には余裕を持って作曲と編曲が出来たし、CDのデザイン担当のSKGにも協力してもらい、本公演初日に間に合うようになんとかCDを完成させることが出来た。
ただひとつ、CDの方には「カナデ」という役名を「カエデ」という名前で3曲ほど誤表示をしてしまった(みなさんにお詫びします)。忘れていたけれど、初期の脚本のときはどうやら「カエデ」だったらしいから、僕もそれでつい間違えてしまったのか。ひとつ言えるのは、劇中での「カナデ」はピアノを弾く幽霊で、相手の裏切りを決して許さない怨念のこもった女性。ああ、僕もきっと呪われるのだろう...(ギョエー!)。
EP「冬の大六角形」も、ヨーロッパ企画のサウンドトラックも、CDは特殊パッケージとなっていて、一枚の紙を絶妙な具合で折りたたんである。これはおもにSKG代表・助川くんの「配信が徐々に勢力を増してCDの存在が薄れていく今だからこそ、ひとつひとつが特別なものであって欲しい」という想いから。とくに"六角形"の方は、これが立体の箱だったらとびきり上品なお菓子を詰めたくなる、そんな一品なのだ。
ぜひぜひどちらも手にとってもらいたい。というわけで、ただいま青木商店にて、絶賛予約受付中!(他のCDやグッズも、よかったら一緒に買ってね♡)
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2020年2月末日まで、新作発売記念特典をご用意しています。特典1:新作1枚ご購入につき、青木慶則直筆サイン入りポストカードをプレゼント。特典2:同日発売のヨーロッパ企画サウンドトラックとの同時購入で送料無料。12/10ごろからの発送を予定しておりますので、それまでにご予約された方々へ発売日の12/14にはお手元に届くようにいたします。新作2枚もしくはどちらか1枚と同時に他の商品を購入しますと、12/14より前には届きませんのでご注意ください。