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大学院生と現場教員の「架け橋」 - 日本に残った1年で私が高校現場で取り組んだこと③【18】

 家族で海外移住する際に、私だけ1年間日本に残り公立高等学校の中で取り組んできたことについていくつかの記事に分けて記録してきました。この記事では、「現場の教員」と「教職大学院の学生」をつなぐ活動について述べた後に、これまで日本に残って取り組んだことについてまとめました。

大学院生のインターンシップ

 私が勤めていた高等学校では、大学からの実習生だけでなく、教職大学院の学生の実習も請け負っていました。1回生の9月に3週間、2回生の4月に7週間の2度にわたる10週間の実習です。大学院の学生の実習を何度か担当させてもらい、それぞれ教科指導とクラス指導に関わってもらいました。実習生を請け負うメリットは、クラスの生徒達が年齢の近い学生と関わることができるところです。学校外の人との関わりが限られている生徒達にとって、外部の人に関わってもらうことは良い機会になります。

 学部生の実習との違いは、教育実習を既に一度経験しているところです。また、教職に関する専門的な研究を行いながら実習に入るため、担当する私たちにも大きな学びがあります。こちらが指導側になりますが、授業に関してこれまで現場で実践した私の経験と、学生が大学院で学んでいる研究を照らし合わせて考えられるところが魅力的でした。

教員養成において重要な「実習」

 私が高校現場で見てきたのは、実習生を受け入れる場合、どちらかというと嫌がる教員が多かったように思います。それは、業務上実習生を受け入れる余裕がないからで、実習生を受け入れたとしてもあまり綿密なサポートができていなかったようにも思います。私が学部生の時に教育実習でお世話になった先生は、部活動が終わって生徒が帰った後の19時ぐらいから模擬授業を見てくださっていたので、今考えてみればその環境自体が異常でした。

 教員養成課程の中では、教育現場での「実習」はとても貴重な時間です。教育実習だけの観点であれこれ議論をするのは難しいですが、教員になるための「貴重な経験」にはかわらないので、受け入れる側にも余裕を持てるような労働環境であってほしいと思います。私が実習生の 1 人目を担当した時は、子どもの保育園の送り迎えを妻と分担しており、勤務時間中は学校内で終わらせなければならない業務を優先しなければならず、その後遅い時間まで職員室に残って打ち合わせをすることができなかったので、家に帰ってから実習生と電話で授業に関する打ち合わせをしていました。

 私が大学の教職課程で教育について学んでいる時は、現場経験のある先生があまりいないこともあってか、授業の中では理論的な話が多く「実践」と「研究」には乖離があるように感じていました。実際に現場に出てみると実践と研究の両方を常に繰り返しながら考えることが大切だと分かりましたが、多くの学校では「授業研究どころではない」というのが学校教育の現状だと思います。

実習生からの学び

 私は学部生でも大学院生でも、授業見学をしてもらったら、授業の進め方や授業で扱うトピックについて実習生の意見を聞き、議論するようにしていました。これは実習生の方だけでなく私にも大きな気づきを与えてくれます。特に、大学院生は実習を一度経験し、教職大学院で自分なりの理論を実践しに来ているので、その話もまた興味深く聞くことができました。

 現場の教員は、自分の授業や学校内での業務に精一杯なので、自分のスキルアップのための時間を確保することは困難です。私は教職大学院の学生が来てくれたおかげで、日頃の業務の中で教育の研究についての話をいろいろと聞くことができたので、これを学校内の他の教員にも共有したいと思いました。

 「大学院生はもっと現場の授業を見たいと思っている」と実習生から聞いていたことや、現場の教員にとっても「学生との交流は自身のスキルアップにもつながる」ことから、お互いに交流できる場を設けたいと思っていました。これは学生に限らず、大学院や他の校種の先生でも良いと思います(ただ現場教員は忙しい)。

 教育を専門的に学んでいる人たちに授業を見てもらうことで、お互いの授業の在り方を客観的に見つめ直すことができます。また、授業を他の人に見てもらうというのは、教員だけでなく生徒達にもメリットがあると思います。私の場合は、校長や他の先生が授業に見学に来られる時は、ニュースや書籍についての議論に対して意見を述べてもらっていました。生徒にとってみたら、いろんな大人が同じ物事に対していろんな見方をしており、「いろんな感じ方、考え方があって良い」ということを知ってもらいたいと思っていました。

教員と学生の交流会を企画

 当時の校長に大学院生との交流会を提案したところ、快諾してもらったので早速実施に向けて企画を進めていきました。初めての企画なので、実習生と実習期間が終わってからも何度も何度も打ち合わせをし、お互いに周知や時間調整などに苦労しましたが、学生と教員合わせて10名程度の参加がありました。時間を確保すること自体難しい中で交流会に参加し、共に議論してくれた同僚や学生には感謝しています。

 1回目は大学院に私が赴いて、学生と交流させていただきました。そこでは、現場と大学院での研究をつなぎたいという私の気持ちと、学校に足を運んでもらうことが現場教員のスキルアップにつながるということを伝え、私が勤めている公立高等学校の状況や授業などについて紹介しお互いに感じていることを話し合いました。続く2回目は私が勤務していた学校に来てもらい、数学や社会、英語などそれぞれの専門とする教科の授業を見学してもらい、その後それぞれに協議をしてもらいました。

 たった一度では大きな効果は生み出せませんでしたが、参加してくれた同僚の先生や学生からは「学ぶ良い機会になった」という感想をいただきました。私なりに、教育現場を開き他の機関とのつながりを持つことは、学生にも教員にも生徒にとっても良い効果をもたらすと改めて感じました。

まとめ

 私が1年間日本に残って取り組んだことについて、あまり濃い内容とは言えませんが、「高等学校での勉強方法の見直し」「読書勉強会」「現場教員と教職大学院生との交流会」に分けて、備忘録としてまとめました。複数年の取り組みではないので、活動としては確立されておらず、私自身がチャレンジしたことの記録になりましたが、私なりに「教育の本質」を考える良い機会となりました。

 たった1年のうちにできることは限られており、現場に残ってもっとやりたいことがたくさんありました。しかし、そういった実践をこれから進めるにしても多忙を極める中でどこまで「体」が持つのか、「家族との時間」を大切にしながらこれからも続けられるのか、私が教員として「学校教育」を客観的にみることができているのかどうか、いろんな不安がありました。

 「教員としての自分」だけでなく、私「個人」として、人生において何が大切なのかを常に話し合ってきた妻の「パートナー」として、そして 1 人の子どもの「保護者」として、総合的に判断した結果が海外での学び直しです。ここでの経験を必ず活かせるよう、これからも日々精進していきたいと思います。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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