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海外で1年間「日本語学習サポート」をして気づいたこと【110】

 昨年の7月頃から、本格的に海外で生活する子どもたちへの日本語学習サポートを始めました。
 学習サポートをするにあたって、初めは分からないことも多く、子どもたちの様子をよく観察しながらサポートの内容を考えてきました。
 海外で暮らす子どもたちの場合、日本語に触れていた時期や環境が多岐に渡り、誰一人として全く同じ条件であることはありません。そのため、日本のような学年に応じて綿密に分けられた統一的なカリキュラムで日本語を教えることがかなり困難であるという事が分かりました。
 今日はそのことについて、この約1年間で学んだ大切だと思ったことを記録しています。

子どもの全体像をよく観察する

 子どもの日本語の学習サポートを行う時、私はその子の全体像を観るようにしています。
 例えば、日本語を話すのは苦手だけれど運動が大好きとか、通っている学校で算数とか理科が好き、などその子がどこに好奇心のアンテナを張っているのかを確認します。なぜなら、そこに日本語を学ぶきっかけがあるからです。
 私の感覚として、「日本語を勉強しなければいけない」と思っている子がいたとしても、日本語そのものを積極的に学びたいと思う子はなかなかいません。そのため、「日本語を学ぶ」ではなく「日本語で学ぶ」ことを大切にしています。

子どもを尊重する

 子どもが日本で暮らしたことがないとか、もしくは日本語を使わない環境で育った場合、日本語がうまく話せない、または読み書きがあまりできないことは当然だと考えています。
 たまに、日本語ができないことを自分の能力が劣っているからだと思い込んでいる子がいます。そういった子には「日本語ができないことは当然のことで、あなたの能力とは何の関係もない」ことを説明します。私も、海外で母語を習得するのは簡単なことではないと、オランダに来て学びました。
 これを共有して、少しずつ日本語に対するネガティブな感情を解いていきます。もちろん日本語の力を付けていくためには、継続的なサポートが必要で、すぐに結果が現れるというものではありません。少なくとも、本人の日本語に対する気持ちや行動が変わることがファーストステップだと考えています。

 また、継続的な学習を可能にするためのアプローチとして、本人の得意なことや好きなものを「日本語で表現する」ところからスタートします。習っているサッカーの話、好きなアニメのキャラクターの話など、その話をしている子どもは一生懸命に相手に伝えるために、自分の考えを表現しようとしてくれます。
 最初の方は、話すこと自体に慣れていないこともあるので、「ゆっくり考えていいよ」「間違えてても良いから、もし言いたい事があれば言葉にしてみてね」といった声かけをして、日本語ができない自分に緊張を感じないようにします。そうすることで、日本語に対するネガティブな感情が少しずつ和らいでいきます。

指導を自動化しない

 これまでの私の指導経験から、常に心がけていることがいくつかあります。その一つとして、子どもの数だけサポートするアプローチも異なるということです。
 新しい教材を作成したり、既にある教材の順番を変えたりしながら子どもの学習状況に合わせてカリキュラムを設定します。

 集団の授業の時でさえ、クラスによって盛り上がるポイントが異なり、進度やテストの内容を大きく変えたくなったほどです。学習者を中心に置くとこちらで設定したペースで進めることは難しくなりますが、その分子どもたちの学習満足度は高まるように思います。

海外だからといって特別なことはない

 以上、私が海外での日本語学習のサポートを1年間続けてきて感じたことです。
 海外の日本語であろうと、日本の子どもたちのオンラインサポートであろうと基本スタンスは変わらず、学習者の状況をなるべく深く理解し、学習者との対話を通して学習を進めていくことが重要だと思いました。
 今は日本にいる子どもたちのオンラインサポートも始めていますが、どちらも経験して私が感じたことです。
 これからも自分ができる範囲で、子どもたちの学習サポートを進めていけるようにしていきたいと思います。

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