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娘が通うオランダ現地校での子どもたちの昼食の過ごし方について〜保護者同士で考えを共有する〜【Aflevering.217】

 オランダの私が住んでいる地域では、8月21日(月)から新年度のスタートを迎えました。娘も新しい学年に進み、勉強の内容が少し難しくなり、遊びの時間も減ってしまったそうなのですが、学校生活に関しては今の所問題なく毎日楽しそうに通っています。

 今日は、クラスのメッセージグループで起こった「子どもたちの昼食時の過ごし方に関する保護者たちの議論」について記録しておきたいと思います。

「学校の数だけ教育がある」と言われるオランダ

 オランダでは憲法で「設立の自由」「理念の自由」「教育方法の自由」が保障されているため、たとえ近所の学校だったとしても、各学校の教育の進め方は全く異なります。それと同時に、保護者にも学校を選択する自由が保障されているので、日本の教育と比較する時はそういった根底的な違いを理解しておく必要があります。
 同じく、管理職や教員の採用に関しても自治体採用ではなく学校採用です。教員養成課程なども日本とは全く異なります。オランダに限らずいろんな国の教育制度について知ることで、教育を捉える視野が広がっているように感じます。

 こういった教育の自由がオランダにはあるため、私の学校の事例は他の学校の事例には当てはまりません。今回お話しする昼食時の過ごし方についても同様です。

新年度の雰囲気はどう?

 日本の教育を受けてきた私にとって、新年度というのは緊張感が伴うイメージがあります。新しいクラスメイトや担任とうまくやっていけるだろうか、あるいは勉強についていけるのだろうかなどの不安があったように思います。

 それでは、娘の学校ではどうなのでしょうか?娘が通う学校の場合、Groep3(日本でいう小学1年生)から最終学年までクラス替えはありません。それを初めに聞いた時は、「クラス替えをした方が、子どもの人間関係が広がるのでは?」と思いました。しかし、学校生活の中で他のクラスメイトや、他学年の子たちと遊んだり関わる機会があるようなので、そんなに問題ではないのかもしれません。むしろ、クラスはお馴染みのメンバーで居心地がよく、新しい年度の緊張がなくて済みスタートが切りやすいというのは子どもにとって良いのかもしれませんね。新担任についても夏休みに入る前から開示されています。娘の学校では、持ち上がりではなく、基本的には各学年に教員が固定されているようです。

 私の娘が通う学校の新年度が始まって2日ぐらい勉強はしていなかったそうです。その間は学習を始めるための準備などがメインで、3日目ぐらいから学習がスタートしたと話してくれました。
 また娘の話によると、同じ学年の横のクラスでは、朝のスタートはCITOテストというオランダの中学校以降の進路選択に関わるテストから始まるそうで、その時娘のクラスの子たちは静かに廊下を歩かないといけないそうです。
 その一方で、娘のクラスは先生と一緒に学習内容について確認してから小テストを受けているそうです。娘曰く、「初めは先生から説明してくれる方が、内容もわかりやすい」らしく、オランダ語が母語ではない娘にとってはありがたい環境です。同じ学校・学年でも、クラスによって進め方が異なるのが面白いところですね。

昼食時の過ごし方について

 私の娘の学校は、給食などはなく自分で昼食を持って行きます。クラスの子たちは昼食に何を食べているかというと、「ハムやチーズをはさんだパン」や果物や野菜などが入っていてとてもシンプルなものがほとんどです。オランダに暮らす人たちは「食」に対するこだわりがあまりないようで、それは私自身ヨーロッパ旅行に出かけた時にも感じました。そのため、オランダの食事は作ることにもあまり時間をかけず、さっと作ってさっとすませる印象があります。

 学校の昼食も同じで、昼食の時間、担任は休憩に入り、昼休みに教室で子どもたちを見るために別のスタッフ(おばあちゃんとからしいです)がきます。そして、子どもたちの食事時間はだいたい15分ぐらいだそうで、タイマーが設定されているとのことでした。幼い子どもの場合、いつまで経っても食べ終わらないということもあるのでしょう。時間を設定して、その時間が終わったら嫌でも片付けて外遊びに行かなければならないそうです。

 その昼食時の過ごし方について、なんと私たちの学年では、映画を見せられながら昼食をとっているのだそうです。クラスの保護者が、たまたまクラスの前を通り、その状況をクラスのメッセージグループに報告してくれました。

 「今日たまたまクラスの前を通ったのだけど、Groep4ではどちらのクラスも昼食の時に映画を見せられていたの。私は映画を見せることと昼食は一緒にするべきではないと考えるわ。ランチタイムは、子どもたちのおしゃべりの時間だと思うし、実際に映画に夢中になってしまって子どもがランチを残している時もあるの。私はこれはおかしいんだと思うんだけど、みんなの意見を聞かせてくれる?」

 オランダ語でのメッセージなので、少し本人が意図したところと変わってしまっているところがあるかもしれませんが、他の保護者からの意見を見てもこのような主張をしていたと考えられます。
 他の保護者からもいろんな意見が寄せられましたが、私がすごいと思ったのは賛成か反対かということだけを話し合うのではなく、何が問題なのかをそれぞれが意見していたところです。

「確かにうちの子もランチをよく残して帰ってくる」
「去年までもずっと学校にそれはしないでほしいと伝えているのだけど、なんでこうなるのかしら」
「私はそこまで気にならないわ。子どもにとって映画がリラックスしていることには変わりないと思うし、おしゃべりだったら外の時間でもできているのだからそんなに問題ではない。」
「映画を見てリラックスすることには同意だわ。でもうちの子はランチを食べることを忘れてしまうみたい。映画自体は悪くはないと思うけど。」
「問題なのは映画なのではなくて、食べるのが遅れている子どもたちに大人が働きかけることではないかな」
「休憩は脳を落ち着かせ、食事に気持ちをむけさせなくてはいけない。味や食感に気持ちを向けて、子どもたちに『食べる』ことそのものについて考える機会が必要だと思う。スクリーンはそのプロセスを混乱させると思う。」

といった多様な意見が出てきました。私もせめて自分の意見を表明しておきたいと思ったので、「昼食時の子どもたちには話をすることを楽しんでほしい」とだけメッセージをしておきました。

 こう言った、意見を出し合った内容を世話係の保護者が学校に進言してくれます。そして、学校も必ず動いてくれるかどうかは分かりませんが、何かしらの反応を示しています。学校と家庭の関係というのはとても大切で、かつ複雑なところがあると思います。力のバランスが取れている状態を作り、お互いに話し合う場があることも大切です。もちろん、学校には学校のやり方があって、何もかも保護者の主張が通るわけではありません。
 その他には、例えば学校外のこと(上級生は近くのスーパーに昼食を買いに行ける、など)で何か問題があった場合、「家庭できちんと話し合ってください」という連絡が来ます。確かに学校の時間ではありますが、そこに教員が立番を設定したり、学校外でのことを学校が全て責任を追わないという線引きも重要だと思います。これについては、オランダに暮らす保護者でもいろんな意見がありますが、学校も自分達の活動範囲をしっかりと決めるところは学ばなければならないと思います。

 学校へのある一定の信頼をおいている私のクラスの保護者たちですが、何か問題ではないかと感じたことについてはクラスの保護者同士で話し合い、学校に意見をするという動きがあります。オランダに暮らす人たちは、幼い頃から家庭や学校で「私はこう思う」という意見の表明をずっとしてきています。そのため、日本人が気にしがちな「誰がどっちの意見を言ったか」というよりは、「自分はどう思うか」の意見をしっかり主張するように感じます。

 私は、保護者同士が自分の意見を伝え合っている様子(メッセージ上ですが)を見て、「お互いが対等に意見する関係とそれができる力」はとても大切だと感じました。そういった力は大人になってから身につけるものではなく、オランダでは先述のとおり家庭や学校の中で学び身につけていきます。今回のことで、オランダのアイデンティティのようなものに触れられたような気がしました。

今後、クラスでの昼食時の過ごし方がどうなるかはまだ分かりませんが、クラスの保護者の一人として見守って行きたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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