ポールの新譜McCartneyⅢレビュー 全曲楽曲紹介「M2. Find My Way」。(連載その2)
ポールのNEWアルバム「McCartneyⅢ」! 第2回は、M2「Find My Way」です。 ここでは、「ポール・マッカートニー作曲術」作者として、曲作りを中心に楽曲解説をしていきたいと思います。
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M2. Find My Way
■ポール一人で全楽器を多重レコーディング
インストメインのM1曲が、アルバム全体のオープニングとすれば、M2の「Find My Way」は、アルバムのテーマソングと言えます。
いかにもポールなポップ・メロディー、Aメロとミドルエイトのみのシンプルな構成の佳曲です。
サウンドやレコーディングの雰囲気は、オフィシャルに発表された動画でよく分ります。全楽器、ポールが一人で演奏している様子がよく分りますね。
楽器に混じって、アナログのテープレコーダーが入っているのが一興です。1966年のアルバム「Revolver」や67年の「 Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」の頃から、ポールは自宅のテープレコーダーで作った様々な効果音のテープループを駆使して、サウンドを作っていました。
つまり、テープレコーダーはポールにとって楽器の一部のようなモノなのです。動画中、1分17秒あたりの低音フレーズがブ~~ンと下行する効果は、このテープレコーダー操作によるものです。ポールも、そのタイミングに手振りで指示していますね。ポールお気に入りの効果だと分かります。
イントロの鍵盤楽器は、ハープシコード(チェンバロ)で、通常のクラシカルな使い方ではなく、ベース楽器として、リフを担当させています。
本曲の最大の特徴は、太い低域楽器の大活躍と言えます。ハープシコード、バイオリンベース、ギターのパワーコード、シンセサイザーベース、シンセブラス……などなど、これでもかと低音で迫ってきます。
それに反して、高音域で目立ってくるのは、リードギターやドラムのハイハットなどの金物です。それらが良いバランスで、アレンジを引き立てています。
■ギターとコーラスのコラボレーション
前記の低域のフレーズの中、0分47秒から間奏のリードギターの高音域のロングトーンが登場します。低域VS高音域という、対比と言ってもよい組み合わせです。そして、これがとても印象的で、アレンジの中の、ワンポイントになっているのです。
当然、2回目もそのフレーズを期待するのが、リスナーの人情ですね。だから、作曲では、いいフレーズは繰り返せ(野口談)! なのです。
そこで、1分03秒から始まる「そのフレーズ」を聞いてみると、フレーズは同じですが、ポールのスキャット・コーラスに置き換えられているのです。このセンス! M1の解説でも語ったポールの裏声で、ギターフレーズをなぞっているのが、カッコ良いです!
このように、予想を裏切って、さらにカッコ良さを提供するのが、ポール流のサウンド作りと言えますね!
■メロディーとコード進行
Aメロは、恐るべきシンプルさです。(固定ドで)♪ドドドラファソ~を4回繰り返すだけです。コード進行も、F-C-Dm-Cを2回繰り返すだけ。
同じメロディーを繰り返すシンプルな楽曲としては、「ワンダフル・クリスマスタイム」がありますね。あれも短いメロディーを4回繰り返すだけの構成でしたね。
レノン・マッカートニーの二人は、どちらも、シンプルを繰り返すのが個性の一つと言えます。とくに、レノンは!
「Come Together」も「Imagine」も同じ手法でしたね。
ミドルエイトは、コード進行に注目しましょう。
E♭-Dm-D♭-C……と、マッカートニーコードであるE♭から、半音で下行していきます。そのキーの♭Ⅶ度の音をルートとするコードを、ボクはマッカートニーコードと呼んでいます。
とてもポールらしいミドルエイトと言えますね。
■歌詞における対比の美学
さて歌詞を見てみましょう。実は、最初に歌詞を見て、我が意を得たり! と膝をピシャリと叩きました。
弊著「ポール・マッカートニー作曲術」をお読みの読者はご承知のことと思いますが、ボクはポール・マッカートニー作品の大きな特徴として「対比」を上げています。
歌詞で言えば、「Hello Goodbye」に代表される反対の言葉を並べる作詞法(High→Low、Stop→Go)など、実に、多岐にわたり様々な対比の作品を作り出しています。
「Find My Way」のAメロの歌詞を引用してみましょう。
イエローのマーカーが対比部分です。left(左)とright(右)が目に入った途端、「おっ、対比だ」となったワケです。その後、day and nightでも日中と夜で対比! しかも、rightとnightは、韻を踏んでいるというオマケ付きです。
VERSE2(A’メロ)では、2行目と4行目が、light(光)とnight(夜)で対比の関係。しかも、AメロとA’メロで、rightとlightを響きで対比させるなど、実に、細かい配慮が感じられます。
やっぱりポールは対比のアーティストだ! と本当に嬉しかった……野口でした。
■「ポール・マッカートニー作曲術」
こんな感じで、ポールの作曲ノウハウをまとめた弊著が、「ポール・マッカートニー作曲術」(ヤマハ刊)です。
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次回は M3「Find My Way」を解説します。
M1「M1. LONG TAILED WINTER BIRD」はこちらをクリックしてくださいね。
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