子どもの「足」を守るために
note記事2回目を執筆いたします。
横浜市神奈川区の整形外科【吉野整形外科】院長の吉野匠です。
私は整形外科医であり、特に「足の外科」を専門としています。
足の専門医は、全国でも約1,000人と言われており、とても特化した領域です。
今回は「子どもの足の健康」にフォーカスしていきたいと思います。
子どもと「足の健康」
当院には、子どもの患者さんもたくさん来院されます。
ひと口に「子ども」といっても、発達の段階によって悩みやトラブルは様々です。
乳児期:先天性障害など
乳幼児期:歩行障害や発達の悩みなど
学童期:運動能力の悩みなど
これらはあくまで一例ですが、成長の段階によって医療ニーズは変わっていく傾向にあります。
そもそも、人は誰でも生まれた時は「扁平足(土踏まずがない状態)」です。
それが成長の過程で徐々にアーチ構造が形成され、小学校高学年~中学生くらいには土踏まずができます。
アーチ構造は、足にかかる荷重や衝撃を和らげるものであり、これがないことで足のトラブルに繋がる可能性が高くなります。
実際、足で当院を受診される患者さんの大半が、この「扁平足」が原因で何らかの症状を発症しています。
子どもの足の成長に大切なこと
子どもの足の成長に大切なことは「裸足」で歩くことです。
人が「靴」を履いて生活するようになったのは、人類の歴史からみても、割と最近のことです。
裸足で生活するということは、足底部から「情報」を得ることになります。
足の裏には、感覚受容器(メカノレセプター)というセンサーのようなものがあり、地面の凹凸や傾き、障害物などを「情報」として脳に伝達しています。
その情報をもとに、脳は全身の各筋肉や関節の動き筋をコントロールして、バランスを取りながら立位を保持することが出来るようになります。
これを繰り返すことで筋骨格が健やかに成長してゆくのです。
このセンサーがうまく機能しないと、脳から適切な指令を出すことができず、姿勢や運動能力・全身コントロールに支障をきたし、ケガなどのトラブルに繋がってしまいます。
靴や靴下を履くと、足底部から脳に伝わる情報が遮断されますので、足の成長の妨げとなってしまいます。
これからの寒い時期は、常に裸足でいることは難しいかも知れませんが、お子さんの足の成長のために、できるだけ「裸足」で生活されることをおすすめします。
足にやさしい靴の選び方
これは診察の際に、患者さんに一番よくするお話です。
一般的に、生活をするうえで靴をはかない日はほとんどないと思います。
つまり人生の中で「靴」と共に過ごす時間はとても多いのです。
にもかかわらず、正しい靴の選び方を知る機会は全くと言ってよいほどありません。
足に合わない靴は、足のトラブルのもとになり、例えば外反母趾や内反小趾、爪の変形、足趾のしびれ(モートン病)、有痛性胼胝(たこ)などを引き起こす可能性があります。
そして足の痛みや障害は、日常の歩き方や姿勢を不自然にさせ、結果的に膝関節や股関節、腰の痛みに繋がることもあります。
もちろん、これらは靴だけが原因ではありませんが、足にあった靴をはくことで、これらの痛みや障害の可能性が少しでも減るのであれば、靴の合わせ方を知り、指導することもまた、整形外科医の役割のひとつだと思っています。
【靴選びの前提】
靴の最大の役割は、足の保護ですが、姿勢保持や歩行の際に足を支えるという役割も持っています。そのためには、足の形やサイズを知り、足に合った靴を選ぶことが重要です。
靴をはいたときにすき間が大きく、緩くなっていてはいけないし、同時に、本来の自然な足の形を圧迫してもいけないのです。
そのため、スリッポンやクロックスのようなものでなく、紐で調整できるものを選ぶのがベターです。
【靴の選び方ポイント7】 ※大人も同様です
①午後になると足はむくむため、靴選びは午後(できれば夕方)がおすすめ
②ひもで調整できる靴をえらぶ
③サイズ選びの際はつま先を先端方向に押し込み、かかと部分に人さし指が1本無理なく入ることを確認する(勿論、履くときは踵に足を詰めてしっかりとひもを結びましょう。きつくても、ブカブカでもNG)
④先端が細すぎて母趾や小趾が圧迫されないもの
⑤幅は広すぎても狭すぎてもいけない
⑥かかとが簡単に脱げないことを確認する
⑦土踏まずと足のやや前方部の2か所に、足のアーチを支えるふくらみがあるものを選ぶ
子どもは成長が著しく、すぐにサイズアップしてしまうので、靴を大きめサイズで検討される方も少なくありません。
靴を買い替えることは確かに経済的な負担がありますが、お子さんの足の健やかな成長のため、ぜひ正しいサイズをはかせて欲しいと願っております。
子どもの患者さんとの向き合い方
前回の記事で『患者さんを家族と思って接する医療を行う』ことについて記載しましたが、患者さんが「子ども」である場合には、さらに配慮する必要があります。
特に乳幼児期や学童期のお子さんは「白衣」を見ただけで泣いてしまう子もいます。
予防接種などの経験から、白衣を着た人は痛いことをする人と認識されているためです。
私は子どもの患者さんを診察する際には、第一印象を大事にしています。
クリニックには、駄菓子屋さんで売っているようなオモチャを常に用意してあるのですが、それを使いながら最初の話しかけをします。
そして「痛いことをする人」から「一緒に遊んでくれる人」に意識を持っていくようにします。
するとお子さんも心を開いてくれて、コミュニケーションがとれるようになり、診察もスムーズに進むようになります。
患者さんが大人であろうと、子どもであろうと、常に「人間関係」を大切にしていきたいと思います。
今回の記事は以上です。
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どうぞよろしくお願いします。
吉野整形外科
院長 吉野 匠
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