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平凡で普通

面白くもなんともない、データ入力や電話対応の仕事をしながら、脳味噌の一部(もしかしたら全体かもしれない)では、ねみ〜とか帰りて〜とかいうぐうたらな思考がべたーっと横たわっていた。ひとまず、ストレッチでもして休憩。

デスクのそばに数人が集まって何か話している。しばらくして全員爆笑。高架下の電車通過音よりも音量がデカいんじゃないかと思った。
私は基本的にそこに混ざらない。人を遠ざけているつもりはないけど、やっぱり集団で盛り上がるのは得意じゃないし、自分のデスクに電話ボックスみたいな仕切りが欲しくなる。
ここの職場ではワイワイしてるのが普通。だけど私は私で普通。とはいえ、職場の人たちからしたらニュータイプなのかもしれない。

私は特別不幸で変。
というのは今や過去であり、そして別に変ではなかった。本当は、いつも身近にささやかながらも幸福があり、私という人間は、平凡で普通だった。
自分はそこら辺を歩いている人と何も変わらない人間で、合わないと思っている職場の人たちとだって、多分そう変わりはないのだ。ちょっとタイプが違うって感じだ。

いろんな過去が遠ざかっていくのをぼんやりと見ていたのだが、どれもこれも、なんだか自分のことではなかったような不思議な感覚になっていた。そういったものは、もう引っ張り出して考える事柄ではなくなっていき、徐々に小さくなって、道端の小石のように転がっているだけになるのかも。
それが増えていく度に、なんとなく、そこに自分以外のものが入ってくるようになった気がする。
自分が生きる現実に人もいる。ここでたくさんの人が生活していて、自分もその中の一部なのだ。特別でもなんでもない、それがなんだか心地良いと感じた。

だから人々の中で生きていきたいかというとそうでもなく、ポツンと一軒家みたいな感じが理想だ。
それと、労働時間も短い方がいいな。生活するにはお金がいるから考えものだけど。
筋トレしてても毎日本当に疲れてしまうから、フルはちょっときつい。何も考えず普通に働けたら良かったんだろうけど、少し厳しいかもしれない。久しぶりに働いて改めてそう思った。特に秀でたものがない自分には金になりそうなものはないから、地道にやるのが一番なんだろうね。普通に働くってなんだろ。

周りでみんながしゃべっていて、またドカンと爆発のような笑い声が聞こえてきた。何dBだろう。
デスクで一瞬舟を漕ぎながら、鳴った電話に出る。普通にもう帰りたい。


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