文章舎|吉牟田祐司

仕事ではセールスコピー、求人コピー、雑誌やムックの記事を中心に書いています。書評を投稿しているのは得意じゃないから。肩の力を抜いて書いていくつもり。構成が大雑把だったり、表現が雑だったりすることもあると思いますが、読んでいただけるみなさんの心になにか残していければ。

文章舎|吉牟田祐司

仕事ではセールスコピー、求人コピー、雑誌やムックの記事を中心に書いています。書評を投稿しているのは得意じゃないから。肩の力を抜いて書いていくつもり。構成が大雑把だったり、表現が雑だったりすることもあると思いますが、読んでいただけるみなさんの心になにか残していければ。

最近の記事

書評|『命がけの証言』清水ともみ(WAC)

これが現実に起こっていることなのか。驚かずにいられない。明らかになるのは、鬼畜の所業。知るほどに恐ろしい。 証言しているのは女性4人、男性2人。ウイグル自治区で保育園を運営していたカザフ人女性を除いた5人がウイグル人。中国という国がどういう国なのか。ウイグルで何をしているのか。身の危険を顧みず、実名で、広く知らせようとしている。 いたるところに監視カメラが設置されている。にもかかわらず、行方不明になる子供の数が減ることはなく、カメラに人さらいの姿が映ることはなぜか少ない。

    • 書評|『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン/久山葉子[訳](新潮新書)

      スマホやiPadが人間、特に子供や若者にどういった影響を与えるか――。 スウェーデンの精神科医であるアンデシュ・ハンセンは、心の不調で受診する人が、特に若い人の間で著しく増加している要因として、一気にデジタル化したライフスタイルを疑う。 現在、大人は1日に4時間をスマホに費やしている。10代の若者なら4~5時間。自身もスマホに毎日3時間を費やしていることに気づき、ショックを受けたという。スマホをはじめとするデジタルデバイスはもはや生活に欠かせないガジェットだ。しかしその一

      • 書評|『浅草迄』北野武(河出書房新社)

        俺の一番古い記憶といえば、母親におんぶされてネンネコ半纏から顔を覗かせ、洟を垂らしたほっぺたを近所のおばさんに撫ぜられ、「たけちゃんは誰の子?」と訊かれると、必ず「アメリカ人の!」と答えていたことだ。 河出書房新社の季刊文芸誌『文藝』2019年冬季号で発表され、文芸誌デビュー作となった「足立区島根町」で描かれているのは、幼少時から高校を卒業するまで。表題作「浅草迄」も『文藝』2020年夏季号が初出。「只ダラダラと顔を出しただけの高校生活」を過ごしたのちに大学に進学するも「夏

        • 書評|『「バカ」の研究』ジャン=フランソワ・マルミオン編/田中裕子訳(亜紀書房)

          「世の中、バカが多くて疲れません?」 1991年、エーザイ・チョコラBBドリンクのCMで桃井かおりさんは語りかけたが、視聴者からのクレームによって、結局「バカ」の部分が「お利口」に変更された。そのせいで仲畑貴志さんのコピーが台無しになってしまった。ものすごくバカげた話だと思う。 あれから約30年、今、世の中はバカが多いところが、バカだらけなのかもしれない。 2018年10月にフランスで刊行され、わずか1年で8万部の売上を記録したベストセラー。ノーベル賞を受賞したダニエル

          書評|『新橋パラダイス 駅前名物ビル残日録』村岡俊也(文藝春秋)

          政治雑誌の編集をしていた頃、企業スキャンダルが得意なジャーナリストのMさんが根城にしていたニュー新橋ビルに何度も足を運びました。 よく集まっていたのが3階、肉の万世です。忘年会をしていて、フロア中央にある共用トイレに財布を置き忘れてしまったこともありました。テナントで入る割烹の店主さんが拾って管理センターに届けてくださったおかげで、無傷で戻ってきました。 新橋駅前ビルといえば居酒屋のおふくろ。くさやを焼いて熱々を食べさせてくれ、これがうまかったのです。しかしお店があるのは

          書評|『新橋パラダイス 駅前名物ビル残日録』村岡俊也(文藝春秋)

          書評|『肉とすっぽん 日本ソウルミート紀行』平松洋子(文藝春秋)

          おいしそうに読ませる。読んだら食べたくなる。『週刊文春』の「この味」も、『danchu』の「台所の時間」も、平松洋子さんの連載は毎号見逃せない。 食べものエッセイの名手が肉を追ったノンフィクション。羊、猪、鹿、鳩、鴨、牛、内臓、馬、すっぽん、鯨。生きものが食材になる。命をいただく。情景が目に浮かび、狩りのシーンに息をのむ。料理の描写にのどが鳴る。日本全国に肉にまつわるストーリーがある。関わる人の言葉が生々しく、胸を打つ。 島根・美郷町役場産業振興課の職員・安田亮さんは「自

          書評|『肉とすっぽん 日本ソウルミート紀行』平松洋子(文藝春秋)

          書評|『安政五年、江戸パンデミック。 ~江戸っ子流コロナ撃退法~』立川談慶

          ずっと読みたかった立川談慶師匠の意欲作。慶応義塾大学経済学部を卒業。大手総合下着メーカーのサラリーマンを経て落語立川流に入門。立川談志の十八番目の弟子となって九年半の前座暮らし。前座名は「立川ワコール」でした。『大事なことはすべて立川談志に教わった』など、そのときの無茶ぶり、小言を土台にした著作が多数。執筆依頼の絶えない「本書く派」の落語家です。副題は「江戸っ子流コロナ撃退法」。コレラ禍に襲われた江戸とコロナに翻弄される令和のいまとの共通点を考察しています。 「落語家を生ん

          書評|『安政五年、江戸パンデミック。 ~江戸っ子流コロナ撃退法~』立川談慶

          書評|『僕は君たちに武器を配りたい』瀧本哲史(講談社)

          初版が発行されたのは、マグニチュード9.1の大地震と大津波が日本を襲い、原発事故が発生した2011年3月からおよそ半年後。新型コロナウイルス禍に喘ぐ今と同じように、経済が冷え切り、回復の兆しはまったく見えず、世の中が閉塞感に覆われてきた時期だった。 私が本書を執筆することにしたのは、こうした厳しくなる状況の中で、一人でも多くの学生や若い人々に、この社会を生き抜くための「武器」を手渡したいと考えたからである。日本がこのような経済的に厳しい状況に陥り、若者の未来に希望が感じられ

          書評|『僕は君たちに武器を配りたい』瀧本哲史(講談社)

          書評|『これから、絶対、コピーライター』黒澤晃(マスナビBOOKS)

          広告・マスコミ業界を目指す人を応援する就職本シリーズ。それが宣伝会議のマスナビBOOKSです。 黒澤晃さんはコピーライターとして活躍し、日経広告賞の受賞など多数の輝かしい実績を残された博報堂のレジェンドクリエイターのひとり。 黒澤事務所を立ち上げて独立されるまで、博報堂で人事にも携わり、新卒・中途の採用、教育を担当されていました。武蔵野美術大学や文教大学の非常勤講師、宣伝会議のコピーライター養成講座の講師も務められています。 いわく「コピーライターになりたい人を、コピー

          書評|『これから、絶対、コピーライター』黒澤晃(マスナビBOOKS)

          書評|『君に友だちはいらない』瀧本哲史(講談社)

          この国の将来に危機感を抱き、2019年8月10日に47歳で亡くなるまで、次世代の教育に力を注ぎ、若者に檄を飛ばし続けた瀧本哲史さんがチームアプローチ、つまり「仲間づくり」の重要性について説いた2013年の一冊。 2011年に出版された『僕は君たちに武器を配りたい』を読んで、気になる感想を寄せてきた若者に対する「回答」だという。 【目次』 第1章/秘密結社をつくれ 第2章/本当の「よいチーム」とはなにか 第3章/ビジョンをぶちあげろ、ストーリーを語れ 第4章/よき仲間との出

          書評|『君に友だちはいらない』瀧本哲史(講談社)

          書評|『dancyu“食いしん坊”編集長の極上ひとりメシ』植野広生

          池島信平、壁村耐三、花田紀凱、島地勝彦、岸田一郎、山本隆司、岡留安則……(敬称略)。名物編集長と呼ばれ、雑誌の売り上げを伸ばした大立者がいる。『dancyu』の植野広生さんは、今、もっとも知名度のある名物編集長のひとりだろう。 業界紙記者、『日経マネー』編集者を経て、植野さんが『danchu』編集部に入ったのは2001年。しかし『danchu』には1990年の創刊直後から携わっていて「おいしかった」をもじった「大石勝太」のペンネームで記事を書いていたという。 大学時代は銀

          書評|『dancyu“食いしん坊”編集長の極上ひとりメシ』植野広生

          書評|『人生論ノート』三木清

          京都帝大で西田幾多郎に学んだのち、ドイツに留学して、リッケルトやハイデッガーに師事、哲学者であるとともに、社会評論家、文学者でもあった三木清のエッセー集。 学術論文のような堅苦しさはなく、語るような筆致で「~について」の23項目が書かれている。 死について/幸福について/懐疑について/習慣について/虚栄について/名誉心について/怒について/人間の条件について/孤独について/嫉妬について/成功について/瞑想について/噂について/利己主義について/健康について/秩序について/感

          書評|『人生論ノート』三木清

          書評|『アイデアのつくり方』ジェームス・W・ヤング

          年に数回、読み返している本がある。デイヴィッド・オグルヴィ『ある広告人の告白』『「売る」広告』、ジョン・ケープルズ『ザ・コピーライティング』、ロッサ―・リーブス『USP』、そしてジェームス・W・ヤング『アイデアのつくり方』。どれも言わずと知れた古典的名著だ。 つねに手を伸ばせば届くところに置いていて、頭がこんがらかってきたときなどに、気分転換するために読んでしまうのが、この『アイデアのつくり方』。持っているのは阪急コミュニケーションズ刊の初版第65刷。1986年印刷版からの

          書評|『アイデアのつくり方』ジェームス・W・ヤング

          書評|『言葉ダイエット』橋口幸生(宣伝会議)

          電通のコピーライター・橋口幸生さんが伝授する文章術。 「企画書やメールを読みやすく書きたい」「人事の印象に残るエントリーシートを書きたい」 そんな悩みを抱えるビジネスパーソン、就活中の学生に向けて書かれている。 読みやすい文章を書くスキルは、すべてのビジネスで必要だ。 しかし人は、とくにビジネスにおいて、書きすぎてしまう。 この本を書こうと思ったのは、仕事で接する文章が長くて読みづらいと、ずーっと感じていたからです。 たとえば、仕事で受け取るオリエンシート。 どんな広告

          書評|『言葉ダイエット』橋口幸生(宣伝会議)

          書評|『東京、はじまる』門井慶喜(文藝春秋)

          〈人があつまる、東京をつくる〉 言いかえるなら、東京を人間の整理箪笥にする。 そうすれば日本はきっと発展する、というより、そうしなければ、ほろびるのだ。 明治十六年、三年間のイギリス留学、ヨーロッパ視察から帰った辰野金吾は、横浜の波止場へ上陸したその足で汽車に乗り込み、東京・新橋停車場へ向かった。建設途中の鹿鳴館に組まれた足場の杉板に座り、巨大な空箱のような風景をながめて思う。 建物が、いや建物の不在が、日本を世界の三等国にしてしまったのだ。 日本近代建築の父と称される

          書評|『東京、はじまる』門井慶喜(文藝春秋)

          書評|『2020年6月30日にまたここで会おう』瀧本哲史(星海社新書)

          東京大学法学部を主席で卒業し、大学院を飛び越えて助手として採用されるもマッキンゼーに転職。その後、3年で独立してエンジェル投資家、教育者となった瀧本哲史さん。京都大学では客員准教授として「意思決定論」「起業論」「交渉論」の授業を担当。著作物やディベートの普及活動を通して、次世代の教育に力を入れていたが、病のために2019年8月10日に47歳で亡くなってしまった。 この本には、2012年6月30日に瀧本さんが行った“伝説の東大講義”が完全収録されている。生徒の参加資格は29歳

          書評|『2020年6月30日にまたここで会おう』瀧本哲史(星海社新書)