書評|『浅草迄』北野武(河出書房新社)
俺の一番古い記憶といえば、母親におんぶされてネンネコ半纏から顔を覗かせ、洟を垂らしたほっぺたを近所のおばさんに撫ぜられ、「たけちゃんは誰の子?」と訊かれると、必ず「アメリカ人の!」と答えていたことだ。
河出書房新社の季刊文芸誌『文藝』2019年冬季号で発表され、文芸誌デビュー作となった「足立区島根町」で描かれているのは、幼少時から高校を卒業するまで。表題作「浅草迄」も『文藝』2020年夏季号が初出。「只ダラダラと顔を出しただけの高校生活」を過ごしたのちに大学に進学するも「夏