オンライン学習について
学校教育に、大きな改革の機会が訪れている。ここで取り上げたいのが、オンライン学習についてだ。
オンライン学習が学校に導入される
オンライン学習と一口に言っても、様々なものがある。もともとは、インターネットを介して学習すること全般を指す言葉だ。語学学習として「オンライン英会話」が流行した時期もあった。
それが学校教育に導入されるようになったのは、意外に最近のことだと思う。リクルートやベネッセが、オンライン上の学校教育を支援する学習プログラムを開発した。当初は学校の学習の補完的なプログラムとして、予習・復習を主な役割としていた。
折しも反転学習(授業の前に授業で取り組む内容を学習しておき、学校の授業ではその定着や応用を図るという学習方法)という学習方法が日本にも入ってきたこともあり、その際にオンラインの授業が役立つことになった。それぞれが家庭で学習する方法として、オンラインの映像授業が助けになったのだ。
多様な学ぶ場とオンライン学習
一方で、ホームスクーリングやフリースクールで学ぶ子どもが増えてきたことで、オンライン学習の需要が生まれたこともあった。何らかの理由で学校に通学することができない子ども達に、選択肢が生まれたのだ。
ホームスクーリングとは、学校に登校するのではなく、学習を主に家だけで完結させる学習方法である。海外では導入が進んでいるようだが、日本でも最近では選択肢になってきた。紙媒体のテキストを用いたり、保護者が独自の教育を行う場合もあるが、オンラインで学習することもできる。
フリースクールとは、学校に登校するのではなく、学校以外の場所で学ぶ学習方法である。ここでの学習とは、必ずしも教科教育ではなく、共同で何かを作ったり、イベントを行ったりと、活動の幅は広い。その活動の一環として、オンライン学習が役立つ場合がある。
動画コンテンツの流行
以上に加えて、動画コンテンツの流行がある。YouTubeが特別な人だけが発信する時代から、誰もが発信できる時代になるのに、そう時間はかからなかった。多様な動画コンテンツの中で、当然学習コンテンツが生まれた。プロの予備校講師はもちろん、バックグラウンドを持たなくとも、良質な学習動画を作成する人が多く生まれた。
このような背景があり、「映像授業」としてのオンライン学習は、どんどん質が向上していた。
そうしたところに、授業のオンライン化が求められたわけであるが、既に素材はあったのである。これらの素材を参考に、現場の教員がオリジナルの映像教材を作成している。
インタラクティブなツールとしてのオンライン学習
ところが、オンライン学習にはもう一方の側面がある。それは、教員や生徒のインタラクティブなツールとしての側面である。例えば、生徒一人ひとりと教員との連絡や相談、助言のツールである。また、生徒同士の交流に使うツールである。こちらの技術はどうであろうか。
この点で一日の長があるのが、広域通信制高校の技術である。かつては、通信制高校といえば、教材は紙媒体で、それを直接やりとりしていた。ところが、今ではインターネット上で完結できるようになってきている。例えば、学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校では、兼ねてからSlackでやり取りしているし、レポートはウェブで提出できる。
外部資源を活用し、学校の存在価値を考え直す
ということは、学校教育にオンライン学習を取り入れる技術的側面は、ほぼ先行例があることになる。あとは、どのように学校教育に活かせるかだ。ここで大事なのは、今さら一から学校現場でコンテンツや技術を開発するのではなく、既存の技術を活かすことだと思う。とかく、学校は全てを自分達で解決したがる傾向がある。積極的に、外部資源を利用したらいいと思う。
その上で大きな課題となるのが、学校の存在価値を考え直すことだ。上記の例を見てくると、「あれ、それなら、学校っていらないんじゃない?」と考えてもおかしくない。そう、学校が絶対の選択肢では、既になくなっているのだ。そのことを認めた上で、学校だけが与えられる価値は何なのか、その存在価値は何なのかを考え直さなければならないと思う。
学校のために、声をあげる
withコロナ時代にあって、学校という場が絶対安全な場所ではない以上、オンライン学習を取り入れていかざるを得ないだろう。これは、このような緊急事態にならなければ、これほど導入は進まなかっただろう。しかし、もともとニーズはあり、先進的な取り組みをする学校は、既に導入していたはずだ。
学校は、内側から変えるには時間がかかるが、外からの要請には早急に対応するという性質を持つ。社会が声をあげていけば、学校は変わっていくのだ。