見出し画像

同性婚訴訟の地裁判決まとめ

概要

札幌、東京、大阪、名古屋、福岡の地方裁判所で行われた裁判で、多くの「違憲」「違憲状態」の判決が出された。よって、国(国会)は早急に法整備を進めなければならない。また、今後も続く訴訟のために、寄付をすること、正しく知ること、関心を広げることが大切である。

1、同性婚訴訟とは

同性婚訴訟は、2019年に札幌、東京、大阪、名古屋、福岡で同時に国を訴えた裁判です。同性婚できないことについて、国(国会)が法律を整備しないことが、憲法に違反するとの訴えです。2021年には東京で更に新たな訴えも行われました(東京二次訴訟)。その判決が、2023年の今になって、ようやく出されたということになります。

2、論点となっている憲法の条文

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
② 
華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
② 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

3、各地方裁判所の判決の概要

〇 札幌地裁 判決

憲法第13条   (幸福追求権) → 合憲
憲法第14条第1項(法の下の平等)→ 違憲
憲法第24条第1項(婚姻の自由) → 合憲
憲法第24条第2項(家族)    → 判断なし

〇 大阪地裁 判決

憲法第13条   (幸福追求権) → 合憲
憲法第14条第1項(法の下の平等)→ 合憲
憲法第24条第1項(婚姻の自由) → 合憲
憲法第24条第2項(家族)    → 制度を検討すべき

〇 東京地裁(一次) 判決

憲法第13条   (幸福追求権) → 判断なし
憲法第14条第1項(法の下の平等)→ 合憲
憲法第24条第1項(婚姻の自由) → 合憲
憲法第24条第2項(家族)    → 違憲状態

〇 名古屋地裁 判決

憲法第13条   (幸福追求権) → 判断なし
憲法第14条第1項(法の下の平等)→ 違憲
憲法第24条第1項(婚姻の自由) → 合憲
憲法第24条第2項(家族)    → 違憲

〇 福岡地裁 判決

憲法第13条   (幸福追求権) → 合憲
憲法第14条第1項(法の下の平等)→ 合憲
憲法第24条第1項(婚姻の自由) → 合憲
憲法第24条第2項(家族)    → 違憲状態

4、解説

「合憲」

今の状態は憲法に反していないので、法整備を整える必要はありませんよ、という判断。

「違憲」

今の状態は憲法に反しているので、法整備を整える必要がありますよ、という判断。

「検討すべき」

大阪判決では、全ての条文に合憲としましたが、同性パートナー等の家族に対する法整備について、検討していく必要はあるという内容がありました。

「違憲状態」

東京一次判決、福岡判決では、憲法に「違反する状態にある」と述べたものの、法整備のあり方には、パートナーシップ制度などのさまざまなものが考えられるので、「違反すると断ずることはできない」としています。これを、「違憲」と区別して、「違憲状態」と呼んでいます。ただ、これは実質「違憲」と言っていいのではないか、という解釈になっているようです。

「実質勝訴」

同性婚裁判は、同性婚ができないことに対して、国に賠償を求めるというものです。これは、賠償を求めるという形でしか訴訟を起こせないからであって、賠償責任が認められる(勝訴)が目的ではありません

同性婚裁判では、判決の中で、同性婚できないことが違憲であるということが述べられていることが大切です。結果的に違憲な状態にあると司法(裁判所)が認めれば、立法(国会)は法整備を進める必要があるからです。

従って、判決の中で「違憲」「違憲状態」であることが述べられていれば、立法(国会)は法整備を進める必要があることの根拠になり、裁判の目的は達成されたので、実質的には勝訴であるという意味で「実質勝訴」と言われることがあります。

5、これから

札幌、東京、大阪、名古屋、福岡の地方裁判所での判決が出そろいました。その中で、明確に「違憲」「違憲状態」という判決が出されています。ですから、国(国会)は、同性婚についての法整備を整えなければならない根拠があるということになります。

また、おそらくこの後は、全ての裁判において最高裁判所に上告することになると思います。その動向についても、注目されます。

6、私たちにできること

まず、直接に原告(裁判を起こした当事者の方々)、弁護団、支援団体を応援することです。裁判には、お金も時間もかかります。また、精神的・身体的な負担も大きいです。

そこで、公共訴訟のクラウドファンドを扱う「CALL4(コールフォー)」で寄付を募っていますので、ぜひ協力いただければと思います。

公共訴訟とは、「どうして同性カップルは結婚できないのか?」「どうして国の収容所で外国からの非正規滞在者は亡くなったのか?」といった、身の回りで起きている「おかしなこと」をなくすために行われている裁判です。(CALL4のサイト参照)

そして、間接的には、同性婚裁判についてよく知ること周囲と話すことも、大きな力になります。なぜなら、公共訴訟の判決には社会的な要請や、国民の理解が大きく影響するからです。正しく知ること、関心を広げることが、裁判の助けになります。

CALL4のサイトでは、寄付をすることができるほか、訴訟の資料や判決文なども閲覧できます。


サポートしていただければ嬉しいです!