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眠る前の音声配信

noteというプラットフォームには、音声配信機能がある。僕はその配信機能を利用している。

音声配信の始まりは朗読だった。一応著作権に配慮して、著作権の範囲外の作品について朗読を始めた。まずは、青空文庫の中から、宮本百合子の短編をいくつか。その後、方丈記と日本国憲法、中原中也や萩原朔太郎の詩を朗読した。

次に、フリートークを配信し始めた。観た映画や読んだマンガなど、雑多なことを語っていた。その中で、演奏会や美術展について話すことが何回かあったので、それをそれぞれ、「わたしの視聴室」「わたしの美術手帳」という内容で別枠でまとめた。

その後に、どうも体調が安定しなかった頃に始めたのが、眠る前の音声配信だった。

家にいる時間が全国的に多くなっていたことで、YouTubeやInstagramで配信をする人が増えた。その中で、眠る前の様子を配信する人が何人かいた。眠る前は意識があやふやで、外面ができない状態にある。そんな状態だからこそ現れるその人の姿がある。その様子がとても魅力的に映った。

僕たちはどこかで、リアルを求めている。編集された番組や動画にはない、リアルを欲する瞬間がある。特に、人と直接会う機会が減った今、その欲求が強くなっているように感じる。眠る前の配信は、まさにリアルなものであるとともに、その人の知らない一面を覗いたような気持ちにさせる。

発信する側として魅力なのは、自分の意識による制限がややはずれた状態で配信できるということだ。作り込んだ自分のキャラクターではなく、どこか自分の制御下にない自分。その存在を一つの表現として残すことは、興味深い試みだった。

とは言うものの、もともとは体調がわるい中で募る不安を、どこかに吐き出したかったということが大きい。友人知人はもちろん、赤の他人にさえ会えないような状況で、ひたすら自分の体調と向き合うのは辛いことだった。

たとえ相手がいなくても、語る場所が必要だった。そんなときに半ば衝動的に発信したのが、眠る前の音声配信、というか、眠れない夜の音声配信だった。

僕の「眠る前に」という配信は、その直後に眠れることは実はまれで、ほとんどはしばらく眠れないでいる。あくまで、今から眠ろうと決意したときの語りであって、実際には眠りに苦労する。

眠れないからこそ、せめてその日の様々な思いを吐き出して、少しでも眠りに向かおうとしている。場合によっては、少しでも今現在の苦しみを吐き出して、やりすごそうとしている。

だから、調子がいい時や自然と眠くなっているようなときは、音声配信への衝動が少ないので、収録しないことも多い。世情が落ち着いてきたり、生活リズムが整ってきたら、配信はしなくなるかもしれない。

そんな配信だけれども、一定数の人が聞いてくれているようだ。データ上はアクセスした人数しかわからないけれども、ある程度のアクセス数はある。何らかの形で需要があるかもしれないので、しばらくは続けようかと思っているし、アーカイブも残しておくつもりだ。

どんな人が聞いてくれているのか、なぜ聞いてくれているのか、知りたいような知りたくないような。どちらかというと知りたいので、良かったらコメントをいただけたらうれしい。

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