見出し画像

非食品強化子 犬通貨の構築

一次強化子として使えるものは食べ物、つまり動物にとって一番必要とされているもののみです。その一次強化子と紐づけることで強化子となるのもは二次強化子と呼ばれます。

クリッカートレーニングでは、クリッカーで行動をピンポイントでマークし、すぐに一次強化子を出すことでオペラント条件付けをことができます。つまり、クリッカー音は二次強化子に当たります。

この場合、一次強化子は必ず食べ物になるわけですが、この一次強化子を食べ物でない未知の強化子に置き換えることができます。手っ取り早く言えば、食べ物の代わりにお金で支払うのです。

私たち人間の世界では通貨は食べ物以上の価値を持っています。それは、その通過で欲しいものが必ず手に入ると保証されたものであるからです。この理論を使って、全く未知の何の意味も持たない刺激を食べ物以上に重要な価値のあるものと犬に認識してもらうことができるのです。これを仮に犬通過と呼んでみましょう。


犬通貨の利点

では何故わざわざ食べ物ではない強化子を使う必要があるのでしょうか。まず考えられるのが、食べ物を使えない状況下での使用です。

生活をしている中で常にトリーツを腰にぶら下げているわけではないでしょう。たまたまトリーツを持っていなかった、しかし強化子を出したい場面に出会した時、この犬通貨はとても役に立ちます。

オビディテンスやアジリティなど、食べ物を使えない競技会でも犬通貨は効力を発します。競技中に強化子を与えることで、モーティベーション(やる気)を保つことができるのです。

2種類の非食品強化子

非食品強化子には大きく分けて2種類あります。
1. 条件付けまたは学習した強化子
2. 自然強化子 トレーニング初心者には一次強化子は食べ物だけと断言していますが、実は他にもあるのです。

以下に、2020年のクリッカーエキスポでのケン・ラミレスの講義を簡単にご紹介します。

非食品強化子の構築スケジュール

通貨制度を世に定着させるのは一晩ではなしえないように、この犬通貨を使えるようにするには時間と適切な導入手順が必要です。その導入手順は5段階に分かれ、全ての手順は最短で8ヶ月かかる仕組みとなっています。そして導入後も、犬通貨の価値を保つために、常に一次強化子(食べ物)との紐付けをし続けなくてはなりません。この紐付けとは、私たちが毎日のようにお金を使って欲しいものを購入している行動にあたります。つまり、トレーニングに食べ物を使いたくないからという安易な理由でこの非食品強化子を導入することはおすすめできません。

ステップ1

全く新しい刺激(強化子)を示し一次強化子を与える
全く新しい刺激とは、
 ● 手を叩く
 ● 親指を立てる
 ● 言葉のキュー
 ● チキンダンス
要するに、全く見た事も無い未知のものなら何でもいいのです。合図を決めたら、それを示してから一次強化子(食べ物)を与えます。この時クリッカーは使いません。時には何か簡単な行動を挟んでもいいです。この時点では、新しい刺激はクリッカーを教えた時と同じ方法をたどり、まるでクリッカーにような役目を果たします。

ステップ1を、1日2〜3回のセッションで、最低2週間、必要ならばもっと長く続けます。

ステップ2

1. 簡単な、すでに知っている行動をする
2. クリック
3. 新しい刺激(ステップ1の練習で使ったもの)
4. 一次強化子(食べ物)

上記の基本に加えて
A. 行動→クリック→トリーツ
B. 新しい刺激→トリーツ(ステップ1)
C. 行動→クリック→新しい刺激→トリーツ(ステップ2)
これらを織り交ぜる。

ステップ3に進む前に、ステップ2を最低4〜6週間続ける。

ステップ3

1. 簡単な行動
2. クリック
3. 新しい刺激
4. キュー
5. 行動
6. クリック
7. トリーツ

上記の手順を1セッションで最低3回繰り返す。
ステップ3を最低6〜8週間続ける。

ステップ4

1. 難しい、しかししっかり身についた行動をする
2. クリック
3. 新しい刺激
4. トリーツ

これはステップ2と同じですが、難易度の高い行動をしてもらうところに違いがあります。
このステップを最低4週間続けます。

ステップ5

1. 難しい、しかししっかり身についた行動をする
2. クリック
3. 新しい刺激
4. キュー
5. 難しい、しかししっかり身についた行動をする
6. クリック
7. トリーツ

これはステップ3と同じですが、難易度の高い行動をしてもらうところに違いがあります。
このステップを最低12週間続けます。

メンテナンス

通貨の価値を維持するためには、常にそれが利用可能であることを示す必要があります。犬通貨(非食品強化子)が流通し始めた後も、常に一次強化子との紐付けを怠らず、犬通貨の価値を保つ必要があります。

これは食べ物を使わないトレーニングではなく、信用取引に基づいたトレーニングであることを理解していないと機能しないことを必ず念頭においてください。

犬通貨を機能させる理論

この通貨システムは、科学的に言えば「高次条件付け」といわれるものです。高次条件づけとは条件刺激を無条件刺激の変わりに用いて、新たな条件刺激の条件づけを行うことです。 犬に対して、新たな刺激の「光」と条件刺激となった「ベルの音」を対呈示し条件づけがなされると、「光」の刺激を与えることでも、条件反射「唾液が流れる」が生じるようなります。この新たな刺激が「犬通貨」となるわけです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?