小野好美

ライター。 現実非現実マッシュアップ. 東京 → 高知 → 鹿児島. https…

小野好美

ライター。 現実非現実マッシュアップ. 東京 → 高知 → 鹿児島. https://ameblo.jp/reading-our-story

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これまで書いたもの、書いているもの

▼障がいのあるアーティストの方を紹介するメディア「DIVERSITY IN THE ARTS」webとpaperがあります。2021年より執筆させていただいています。 ▼ライターのおしごと 東京〜高知移住関連 https://note.com/ihayato/n/nb4294f8e10e5 ▼高知での生活を書いていたブログ

    • 【あらすじ】わたしの庭 / マナミ編

      調香師のマナミが住むマンションには、彼女しか入れない庭がある。 庭にはハーブや花、樹々など香りの材料がなんでも揃っている。 庭を歩き進むとやがて森になる。 森の奥にマナミは、 昔斬り捨てた男や他人からの嫉妬などをそのまま捨て置いている。 窓の外から、ずいぶん昔に斬り捨てたはずの男がこちらを見ていることがある。部屋の中で愛し合うマナミとパートナーを見て、死んだ男は得も言われぬ香りを立ち上らせる。 マナミはその香りをヒントに、次のクライアントのための香りをつくる。 そう

      • 【あらすじ】わたしの庭 / オミコ omico 編

        百貨店の外商が出入りする屋敷で暮らすオミコ。 外商が持ってくる不思議なものにオミコは飽きつつあるが、 その日はバクを選ぶ。 オミコが子どもの時から一緒に暮らすことを夢見ているのはユニコーンだ。 しかし外商の男はユニコーンの話になると いつも言葉を詰まらせる。 その日の明け方、オミコの夢の中にバクが入り込んでくる。 バクの視線を追うとそこにはユニコーンがいた。 オミコは手を伸ばしかけるが、 ユニコーンの背後には醜いモンスターがいる。 ユニコーンとモンスターは一体とな

        • わたしの庭 / オミコ omico

          いつもの外商がうちにやってきて、 新しく仕入れた珍しいものを見せてくれる。 次々と開かれる箱から、 夢を食べてくれるという小さなバクに 私の目は留まった。 バクは明け方、勝手に寝室に入ってきて 夢を食べるので、 それ以外の食糧は 新鮮な水と少しの干草だけでいいという。 しかし私にとって夢は大事な魂の旅であり、 時空を超えた人々との会談の場でもあるので、 食べられてしまっては困る。 それでバクにはたっぷりの水と干草、 それに私が食べようとしたら反応を示した アイスクリー

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        これまで書いたもの、書いているもの

          現実および夢のなかの沢田マンション

          27歳で都内の実家を出て以来、 都内、高知、鹿児島と引越しを重ねた結果 今住んでいる家は7か所目になる。 実家以外はどの家も住んでいた期間が短いせいか、 夢に見ることはない。 唯一、例外が高知市の沢田マンションで、 私はときどき、そこの夢を見る。 沢田マンションと隣つづきになったマンションに住んでいたり、 実際よりも広い廊下を散策したり、 豪華なテーマパークのようになっていたり、 さまざまに形を変えながら、その場所は夢に出てくる。 魅惑の沢田マンション。 住んでいたの

          現実および夢のなかの沢田マンション

          希望の園の川上さんのこと

          (2022年3月の記録) 去年の夏に取材した、 希望の園の川上画伯が亡くなったと連絡をいただいた。 夏に続いて、今年の2月にもう一度お会いする機会があった。 そのときは川上さんではない、別の方の取材だった。 それでも取材の合間に二度ほど、 私は川上さんの隣にいって、しゃがんで過ごす時間を持った。 多分どちらも、1分か2分くらいの時間だったと思う。 わいわいと賑やかな作業室の一画で、 川上さんは車椅子の上で静かに過ごされていた。 うとうとされたりもしていた。 すべてを受

          希望の園の川上さんのこと

          k

          どうしてうちの兄貴は 自分をいつも 殴ってくるのか 悪魔みたいに 訳が分からなかった やさしくて仲のいいきょうだいが 羨ましかった 年子とは言え 兄貴には力もスピードも及ばなかった だいたい、いつだって向こうが理不尽に 吹っかけてくるのだから 自分は逃げ足と避けるスピードだけが 磨かれていった やり返せよと言われて 悔しくて力まかせに殴り返す ときどきそれが決まることがあって 9:1の割合で負けることが多かったけれど 決まった時の快感は忘れられなかった 勉強もがんばっ

          m

          生まれたときから全部が退屈で ぬるく色褪せて見えて イライラして仕方なかった 強くなること そこだけに少し希望があった 誰かに勝つとちょっとだけ気分が良かった それも長くは続かないけれど だから強くなり続けることだけ 勝ち続けることだけやり続けた それ以外どうでもよかったし いつ死んでも良かった 今は背負うものが増えたから いつ死んでもいいとは言えなくなった でも心の奥底ではほんとうはいつ死んでも良くて 自分より強い相手が現れて 叩きのめしてくれるとホッとする 今度は

          わたしの庭/マナミ

          マナミが住んでいるのは都心のマンションの4階だが、 そこには彼女だけが入れる庭がある。   マナミは調香師だ。 依頼主の本来の姿を表す、 あるいは行きたい場所やなりたい姿を指し示す香りをつくる。   マナミ自身、いつも香りを用いて理想の未来に印を付け、 それを叶えてきた。 仕事も、マンションも、男も、人間関係も。   夜が更けた。 昼に会ったクライアントのことを思い浮かべながら、 窓を開け、裸足のまま庭に出る。   昨日が満月だったので、月は明るい。 光が淡く、肌に届く。 少

          わたしの庭/マナミ

          紫陽花、エクセルシオール( 3 )

          修羅場は一晩中続き、私は朝方、家に帰った。たぶん。   後日、彼が浮気していると教えてくれた友人に一部始終を話し、慰めてもらった。 その後、これもよくある展開だが今度はその友人に告白された。 さらによくある展開で、私はその友人のことが大好きだったけれど、 兄のようにしか思えなくて、断った。 時々、その友人のことを思い出す。 友人こそ、その界隈でもっともいい男だったのだ。 私には男を見る目が徹底的に欠如していたのだろう。   それから4、5年後。 私は新しい彼氏と初めての同棲を

          紫陽花、エクセルシオール( 3 )

          紫陽花、エクセルシオール ( 2 )

          彼の家の前に着いたとき、明かりが点いていなかったので ああ留守なのか、そう思った次の瞬間、明かりが点いた。 帰宅したばかりなのか、それとも。   とにかく家に入った。 あの慎重な彼が合いカギをくれていたのだろうか? 思い出せないが、家に入れたからもらっていたのだろう。   玄関には女性の靴があった。 あーあ。ブスなあの子がいるのかよ、会いたくない。 でもそれより何より、彼と今日別れたい。 そう思いながら階段を上がると、 そこには彼と、見たことのない女性がいた。 まったく美人じ

          紫陽花、エクセルシオール ( 2 )

          紫陽花、エクセルシオール( 1 )

          彼と出会ったのは、社会人になりたてで通い始めた、とある講座だった。 違う曜日のクラスを取っていたので、合同の飲み会で出会ったのだと思う。 当時はmixiの時代。 きっと飲み会でmixiがつながったのだろう、彼はメッセージをくれた。 「今度飲みに行きませんか?」 シンプルな誘い文句の後に 「大人な感じで返してきなさい」 と続けられていて、クスッと笑えたし、 スマートさを表していていいな、と思った。 yesの返事をして、その時点でかなり体温が上がった私は、 落ち着くため

          紫陽花、エクセルシオール( 1 )

          わたしの庭/美帆

          ここでは私は庭にばかりいる。 飲み物と軽食はいつでも運んできてもらえるし、本もスピーカーもある。 鳥やリスにパン屑をあげるのもいい。 愛犬と湖畔をゆっくり散歩するのも飽きない。 何より風がある。 花のにおい、樹々のざわめき。 時おり日本のことを思い出すが。それは一瞬のことだ。 陽射しはまだ高い。 温室に据えたあたらしいキャンバスにはおとといから向かっており、 アイボリーを基調にして色を重ねている。 ここに咲き誇るマグノリアの花々。 重厚さと可憐さ、その香りとが一体にな

          わたしの庭/美帆