現状を異常化する
この記事は、前回のアメリカ大統領選挙の少し前である2020年8月17日に配信された。民主党はジョー・バイデン、共和党はドナルド・トランプが候補者となって戦っていた頃だ。ケイトリンさんは、この記事では選挙戦そのものについてではなく、世界の現状認識について書いている。今回のアメリカ大統領選に関しても、ケイトリンさんは多くの記事で触れているが、ハリスかトランプかという視点では書いていない。彼女は世界の現状の”異常さ”を様々にパラフレーズして書いている。その一貫性がこの記事でも読み取ることが出来る。
異常を認識する
もし私たちが健全な社会に生きていて、突然、権力者たちによってこの社会の病的で狂った現状を押しつけられたとしたら、私たちは皆、街頭に出て、権力者たちの生活を一瞬にして大変なものにしていただろう。
今、私たちは同じような状況にある。私たちは、権力者たちによって、権力者たちの利益のために、あまりにも狂った現状を押しつけられているのだ。ただ違うのは、私たちは皆、街頭に出ているわけではなく、この恐ろしい状況を突然突きつけられたのではなく、ずっとそうされてきたということだ。
それこそが、私たちが街頭に出ない理由なのだ。私たちはこのめちゃくちゃの中に生まれたのだから、それが普通であり、物事はこのようになるものなんだと思い込んでいる。しかし、そうではない。
正常であるというのは、健康であるということだ。健康がデフォルトの状態なのだ。もしあなたが熱と腹部の刺すような痛みで目覚めたら、「まあ、これが普通なんだろう。発熱や刺すような腹痛がないなんてあり得ない」とは言わないだろう。緊急の問題があると認識し、それを解決するために行動を起こすだろう。
生涯ずっと病気だったとしても、自分の状況が普通ではなければ、それを理解できるだろう。基本的なデフォルトの状態は健康だが、なんらかのシステムにおける機能不全があれば、それが正常な状態を奪っていることを理解するだろう。
現在のシステムの機能不全を押し返すためには、同じようにシステムを見る必要がある。健康という基本的なデフォルトの状態から、いかにそれが見事に乖離しているかをはっきりと認識する必要がある。いかに病んでいるか。いかに異常であるかということを。
個人であれ社会であれ、健康な状態が正常であり、病んでいる状態が異常であることをはっきりと認識する必要がある。
正常ではない社会
ある文明が富裕層と秘密主義の政府機関に支配され、ほぼ完全に偽りの指導者の地位への偽りの選挙で、二人の権威主義的な企業戦争屋の選択のどちらかしか選べないというのは正常なことではない。
すべての人を養い、世話するのに十分な富がありながら、その代わりに底知れぬ大金を手にする人々がいる一方で、他の人々が貧困で死んでいくのは正常なことではない。
地球規模の帝国が、少数の社会病質的な操り手の一極覇権を維持・拡大するためだけに、際限のない軍事暴力と飢餓制裁で私たちの種を支配するのは正常なことではない。
生態系と調和して協力することを学ぶ代わりに、究極的には私たちの頭の中にある架空の経済を成長させるために、私たちの生態系を破壊しているのは正常なことではない。
世界全体のために協力し合うのではなく、世界全体を犠牲にして互いに競争し合うのは、正常なことではない。
異常を正常だと思わせる操作
このような状態が正常であると思わせる巧みな操作で私たちの社会全体が満ちているからといって、それは正常ではないのだということを明確に理解する必要がある。
私は、イラクの大量破壊兵器、ロシアゲート事件、架空の労働党反ユダヤ主義危機など、マスメディアが悪名高く広めてきた、よりひどい、扇動的な嘘についてたくさん書いている。しかし、マスメディアが私たちに伝える最も破壊的な嘘は、私たちの集団記憶の中で最も目立つものではないのだ。
マスメディアが私たちに伝える最も有害な嘘とは、スピン、省略、中途半端な真実、歪曲等によって毎日何度も何度も私たちに吹き込まれる小さな嘘であり、それによってこの現状が正常であり、不可避であるという印象を私たちは持つ。
それは、戦争擁護のオリガルヒ的な仲間うちコンセンサスからほんの少しでも外れた立場に立つ政治家を、まるで過激派であるかのように語るやり方や、ベラルーシや香港の抗議に焦点を当てながら、ボリビアやフランスの抗議は無視することや、イエメンが今地球上で起きている最も恐ろしい出来事であるにもかかわらず完全に無視するさまや、借金や低賃金など現状維持さえ出来ない症状がほとんど取り上げられないお笑い番組や映画に現れている。
毎日、毎日、数え切れないほどの他の方法でそれを目の当たりにし、それが積み重なっていく。こんな深刻な機能不全システムの中に生まれ落ち、それを比較するための健康らしきものを知らない人にとって、それが積み重なっていく。彼らはいつも自分は病気がちで、健康な人のことを知らないし、聞いたこともないようなものだ。
文明が始まって以来、健康な社会などなかったと言うのは、あなたの勝手だ。あなたが言っているのは、私たちは常に病気だと言ってるのと同じことだ。ずっと病気であることは、健康が普通ではないということでも、健康を緊急に求めるべきではないということでもない。もしなんらかの意味があるとすれば、それはもっと緊急に求められるべきものだということだ。
このような病気になるのは人間の本性ではないし、そうだと言う人は嘘をついている。貪欲で、暴力的で、支配的で、虐待的であることが人間の本性だと言う人は、人類の本性について語っているのではない。自分自身の本性について語っているのだ。そして、彼らに背を向けるのはおそらく悪い考えだ。
私たちに出来ること
私たちは健康になることが出来る。私たちは正常であることも出来る。しかし、発熱や腹痛を正常だと偽っても健康には戻れないのと同じように、後進的で狂った現状が正常だと信じ込まされるのを許している限り、健康な社会を作ることはできない。
だから、現状を異常化するのだ。機会があるごとに異常であることを異常であると認識するのだ。健全な社会がどのようなものであるかという明確な考えを心に抱くことで、現状を異常だと認識し、そのビジョンからの奇妙な逸脱を機会あるごとに指摘するのだ。こんなのは狂っていると人々に思い出させるのだ。こうである必要はないと念を押すのだ。このような状態を保っているのは、権力者たちが莫大な富を注ぎ込み、私たちがそうすべきであると思い込ませるよう操作し続けているからなのだ。
人々が健康とは何かを知ることを助けよう。そうすることによって、人々は病気とは何かを知ることができる。この選挙シーズンに、どの風味の病気が望ましいかなんて会話を遮り、本当の健康とはどのようなものかを指摘しよう。私たちの現状が正常だと思わせるすべての試みを中断させ、異常であることを異常であると認識する手助けをするために、自分が持っているすべての手段を使おう。
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