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人間はいま大切なものしか見ようとしない
苫米地氏「テレビは見てはいけないより引用」
人間の情報処理能力は非常に限られています。見える光の周波数も、聞こえる音の周波数も、ものすごく小さいのです。
壁の向こう側を透視することはできません。
人間が認識可能なのは、限定された空間のみなのです。
そうした物理的な意味での認識の狭さも確かにありますが、もっと大きな問題があります。
私たちの認識は「すでに知っているもの」しか見ることができないということです。
知らないものは見えない。そのうえ知っているものであっても、そのときのリアルタイムで重要性の高いものしか目に入らないようにできています。
心理学用語に「スコトーマ」という概念があります。
前にも出てきましたが、スコトーマとは「心理的盲点」という意味です。
具体例→
車が好きな男の子が、街で走っている乗用車を見かけたら「あれはTOYOTAの〇〇だ」「あれはベンツの〇〇だ」とメーカーや車種まで判別がつくでしょう。
場合によっては、排気量や性能、エンジン音などの細かい差についても区別できる。
しかし、車にまったく興味のない女の子にとっては、それらはすべて「車」。
乗用車とタクシーの違いくらいは見分けられるかもしれませんが、それ以外は、彼女にとってはほとんど同じものです。
つまり、その男の子と女の子では、同じ車を見ていながら、ぜんぜん違うものが見えているのです。
それは、二人にとって車の「重要度」が違うからです。
こうした例は車にかぎらず、世の中のあらゆることについていえます。
先ほども例に出したように、たとえば年収300万円がコンフォートゾーンにある人にとっては、年収600万円の稼ぎ方、使い方が見えません。600万円という金額はリアリティがないため、見えなくなっているのです。
もし人間が、自分が存在する世界をすべて認識できたら、脳がパンクしてしまいます。
視覚でいえば、眼球の網膜に映って、視神経を通じて脳に送り込まれた映像情報のうち、ほんのごく一部しか脳は解釈していない。
眼球が見たすべての映像を解釈することになったら、脳はあっという間にオーバーヒーしてしまうのです。
だから人間は、自分にとって重要性を基準に世界を分類し、重要度が高いものしか見えないようにできているのです。
自分の安住するコンフォートゾーンから外れたところにあるものは、重要度が低いために見えなくなっている。
コンフォートゾーンをずらす意味はそこにあります。
コンフォートゾーンをずらすことで、いままで見えなかったスコトーマを見ることが可能になるのです。