コケた聖地はどうなのか?
先日、ラブライブサンシャインのアイドルグループAqours 4thシングル「未体験HORIZON」の試聴動画
https://www.youtube.com/watch?v=TJ20hjGgVag
が発表されるやいなや、PV内で使用された多摩動物公園がラブライブサンシャインの聖地として話題になった。
深夜の発表にもかかわらず多摩動物公園がTwitterトレンド入りしたほどである。
シングル自体は9月25日発売だが、すでに訪問したファンもいるとのこと。
大ヒットの天気の子も予告段階で田端駅や気象神社、代々木会館などを訪問するファンが数多く存在し、公開後はさらに各地の聖地巡礼が行われている。
昨年のヒットアニメ・宇宙よりも遠い場所に至ってはなんと南極を訪問するファンが登場した。
それも複数人いる。
このようにファンを集めた大ヒット作は舞台となった聖地にはファンがひっきりなしに訪れる。
では、ファンを集められなかった作品の聖地はどうなのだろうか?
私は今週2度に渡って銚子を中心に千葉東部の太平洋エリア(一部茨城県も訪問しているが後述)を調査した。
当該地区は「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(以下「打ち上げ花火」)と「きみと、波にのれたら」(以下「きみ波」)の舞台となっている。
概要を述べると「打ち上げ花火」は1993年のフジテレビ系実写テレビドラマ「If もしも」の1エピソードである(初回放送8月)本エピソードは岩井俊二氏が原作脚本監督を手掛け岩井氏の出世作となった。その後1995年8月ににほぼそのままで映画として公開された。さらに2017年8月にアニメ映画が新房昭之氏総監督・大根仁氏脚本で公開された。
実写アニメとも旭市(飯岡)や銚子市などが舞台のモデルとなっている。またアニメ版では神栖市の風力発電所などもモデルとしている。両者とも鉄道駅が重要な舞台の一つだが、実写版は飯岡駅、アニメ版は宮城県の歌津駅がモデル(現在は未使用)。また電車は実写版がJR東日本総武線、アニメ版が銚子電鉄となっている。
「きみ波」は2019年6月に公開されたアニメ映画で湯浅政明氏監督・吉田玲子氏脚本。
舞台には銚子の千葉科学大学や屏風ヶ浦の他、九十九里ビーチタワーや千葉ポートタワーなど千葉県各地の観光名所が使われている(他に神奈川県の湘南も舞台)。
さて、実写版の打ち上げ花火は大ヒットし、飯岡には聖地巡礼するファンが訪れた。
日本の作品聖地巡礼史においてもメルクマールとなるほどであった。
舞台のクライマックスで出てくる飯岡灯台には現在打ち上げ花火のモニュメントが置かれている。
他方、アニメ版は微妙であった。夏休み後半となる8月17日公開だったのも時期が悪かったのだろう。それでも15.9億円の興行収入であり、一般にアニメ映画での合格点である10億円は超えた。なおクライマックスの灯台は犬吠埼灯台に変更されている。
今回訪問したところ、夏休みにも関わらず打ち上げ花火関連のファンは実写アニメとも見かけなかった。唯一飯岡灯台では2人ほど見かけた。実写はさすがに時間が立ちすぎたのかと思ったがそうではなかったようだ。
アニメ版の方は皆無。銚子電鉄自体がある種のコンテンツ(赤字でぬれ煎餅など副業で持っている、おもちゃみたいな機関車がある、など)なので銚子電鉄自体を目的に来た観光客は多かったのだが。
きみと、波にのれたらの方も見かけなかった。こちらは映画としては不振となってしまった(初週6100万円)。
公開直後に千葉ポートタワーに行ったら展示に注目する客は結構いたが、集客にはつながらなかったようだ。また鴨川シーワールドとのコラボ広告が現在でも千葉エリアのJRに掲載されているが、それ目当てで鴨川シーワールドに行こうという声も聞かなかった。
屏風ヶ浦や九十九里ビーチタワー、釣ヶ崎海岸など舞台の地でも目撃なし。もっともこれらの観光地はもともと観光客が多い。
実は鴨川は2012年にも輪廻のラグランジェというアニメで聖地として売り込んで失敗している(鴨川シーワールドも作中に登場)。
原因は輪廻のラグランジェ自体がヒットしなかったからである。
作品自体がヒットせず、ファンを呼べないと、聖地にしても誰も巡礼しない。
そのことを聖地として協力する自治体や観光協会、その他の企業も意識したほうがいいだろう。