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好きなことを仕事にしてはいけない問題

「好きなことは仕事にしない方がいいんですよね?」

けっこうときどき聞かれる。わたしは、とある大学のキャリア相談員(も、やっている)。これまで9年近く学生のキャリアの悩みに寄り添ってきたわけだが、自分の将来の仕事に悩む学生から、冒頭の質問をしばしば受ける。

おそらく、将来に悩む学生に、そうアドバイスする大人が一定数いるのだろう。

気持ちは分かる。仕事とはキレイごとではない。好きで始めた仕事、でも好きなことだけやっていればいいわけではなく、たいてい嫌なこともやらなくてはいけない。自分のペースでもやれなくなる。そうなると、段々と好きだったことも嫌いになってしまう、そうならないように、好きなことは仕事にしない方がいい、そういうことだろう。

気持ちはよく分かる。よく分かる。でも、本当にそうなのかな。

仕事、キャリアって、突き詰めれば「縁の積み重ね」な気がする。特にキャリアの初期の頃。自分のやりたいことも、自分が何にむいているのかも、自分は何に喜びを感じるかも、ほとんど何も分かっていない。でも、分からないなりにキャリアをスタートさせようとするとき、そこに「取っかかり」が必要となる。業界研究のために本を読むにも、先輩にとりあえず話を聞いてみるにも、すべての業界の本を読むわけにも、すべての先輩にも会うわけにはいかない。そうなったとき、「自分の好きなこと」「自分の興味のある分野」を「取っかかり」に、

じゃあ、わたしはビールが好きだから、まずはビール会社について調べるか、みたいに。そして調べていくうちに、

―やっぱり「発酵」っておもしろいよね→醤油メーカーも見てみるか

―ビールもいいけど、もっと人の生活に欠かせないことに関わりたいな→となると、これからの時代はITかな

とか

そうやって、好きな「ビール」を出発点に、どんどん自分の世界が広がっていく。

そしてそこで出会った会社を、ひとまずいろいろ受けていくうちに、就職試験に受かったり落ちたりして、どうしても行きたかったところからは内定がもらえず、たまたま就職サイトで「この企業にエントリーした人は、こういう企業も見てます」リストにあったから何気なくエントリーしたところがとんとん拍子で選考が進んで受かって、結局そこに入社することになったり。入ってみたら、そこでこれまで知らなかった仕事に出会い、案外面白くて、一生懸命やって、やっているうちに今度は・・・70歳まで続く

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そう、つまり、好きなこととは「取っかかり」

好きなことじゃなきゃ仕事をしたくない、というと、あまりに選択肢が狭くなってしまうし、かといって、好きなことは仕事にしてはいけない、と初めから遠ざける必要もない。

あなたの世界を広げる取っかかりとして、「好きなこと」「興味のあること」をどんどん使っていこう。

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