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J124節 京都サンガVSコンサドーレ札幌     スタイル対スタイル 

中断明け初勝利!
残留争いに大きな一歩。
クソンユンが出れないなか、太田がPKストップ。クリーンシート。
加入後初得点を挙げた原や、安定したパフォーマンスの三竿。
パワフルだった福田。二桁到達パトリック。皆ハイパフォーマンスで、全員がMVP級の働きをしてくれた。ただ、やはりサンガサポ的には太田がMVPだろうか。GKのポジション争いという点でもこの試合は大きかった。

特殊な戦術を貫く札幌に対し、サンガスタイルを貫く京都。
『スタイルを貫く』ことに対して、サッカーという”相手”を意識するスポーツにおいては賛否両論があるはずだ。

お互いがスタイルを貫く。
サッカーには相手がいる。
かみ合わせはどうか?

かみ合わさった時に、それを良しとするか嫌がるか。
自分たちの『武器』が活きるのか?
それらによって結果が変わってくるのは当然で、
今節は見事サンガが『武器』(FC東京戦レビューでも考察)をスタイルのぶつけ合いで活かすことができ、勝利に繋がったといえるだろう。

そんな試合を今回はふりかえってみる。





・札幌のスタイルによっておこる現象

札幌のスタイルによっておこる現象。
それは中盤の空洞化である。
大雑把に言えば、サイドで優位性を作ろうとするため、真ん中に人がおらず、スカスカな状態でビルドアップをするため、ロングボールで逃げるとセカンドボールの回収に苦労する。

勿論、サンガもコンサドーレもそれは承知。
デメリットを理解した上で、メリットを優先している。

コンサドーレは3-4-2-1がスタート。
3バックは配置のバランスが初めから整っているため、自らバランスを崩さなければ、相手のバランスも崩れない。固定されていると安定はするが、停滞を招く。なので、一般的には4バックスタートから、片方のSBが上がったり、ボランチが落ちてきて後ろ3枚の状態を作ることが多い。

しかし、コンサドーレは3バックが初期配置。
そこから、ボランチをDFラインにずらし、最終ラインで数的優位を作ろうとする。また、ボランチが下がると、左右のセンターバック(CB)がワイドの高いポジションまで上がり、ウイングバック(WB)がやや内側に位置するか、もしくはその逆もある。2シャドーもサポートに入り、幅を広く使う。

幅を広く使うため、サイドチェンジや長いボールも多い。中盤は無理にビルドアップで細かくつながず、あくまでピッチの幅を意識する。
そのため、中盤は空洞化する。

ロングボールをインターセプトされると、トランジションが発生し、中盤の空洞化がウィークポイントとして露呈する。


札幌の組み立て。
中盤スカスカ。

一方、守備は基本マンマーク(ゾーンも併用)。マンツーマンディフェンスは全体的にコンパクトでなければ機能しないため、札幌の3バックはややハイライン気味。後ろのスペースはGKが飛び出してカバーする。

サンガのハイプレス同様、ボール保持者からすると相手DFラインの背後がねらい目だ。また、マンツーマンの為トランジション時は一時的にバランスが崩れるため数的優位が作れる可能性が高い。


開始2分。オフサイドにはなったが、背後の狙いgood

29分のシーンでも、コンサドーレ駒井と福森がDFラインに降りてきてダウン3を形成。

サンガが前三枚の同数でハメようとする。広がったCB中村にボールが渡る。CBが開いているため、サイドで数的優位ができる。中村にはサンガ豊川が二度追いで寄せる。中村は寄せられたため、中の小林にダイレクトでボールを送る。しかし、厳しく寄せた京都CBアピがボールをインターセプト。

間延びし、空洞化した中盤のスペースにそのままアピが持ち上がる。
山崎がフリーになる。札幌の後ろ3枚はゴールを意識して急いで絞める。
CBの岡村は高い位置にいたため間に合わない。そして山崎がフィニッシュ。

札幌のビルドアップの形を逆手に取れれば、得意のハイプレスとショートカウンターでシュートまで持って行くことができるのだ。

また、札幌は3-4-2-1のため、サンガの4-3-3とかみ合う形になる
サンガからすれば、後ろはがっちゃんこする。自分たちがボールを持った時にどうするか?ここで『武器』をどういかすかという話になってくる。


札幌のマンツーマン
サンガはどこにどうロングボールを入れるか?

・サンガ『背後と手前』 判断と実行

サンガはあまり後ろで数的優位を作ってビルドアップしない。そして、札幌はハイライン。そのため、ロングボールでプレス回避と前進を行うことが得策。ただ、動きが固定的ではエアバトル次第になる。
そのため、前線三人の動き出しと距離感、IHの動き出しと前の選手との距離感が大切。特に、動き出しだ。

先制ゴールのPKに繋がる場面も、動き出しによるものであった。
また、その動き出しの駆け引きも直前のシーンで行われていたのだ。


川崎が裏抜け。原が落ちる。豊川絞る。

36分のシーンでは、太田がボールを持つと2CBとアンカー、IHの松田にまでマンツーマンでマークがつく。SBの福田と三竿に対してもWBがマーク。
この時点で、IH川崎が空いてWBの背後へ裏抜けをする。
このIHの裏抜けが超超重要!

WBの背後を狙うことで、相手の3CBがラインを下げざるを得なくなるからだ。低い位置ではCBが流れてカバーすることがあるが、高い位置ではラインを下げて対応するのが普通だ。

そのため、FW原の手前、相手CBの手前にスペースが空く。そして、札幌ボランチとCBの間が間延びし、コンパクトさを保てなくなる。案の定、FW原がやや降りてきて競り合い、WG豊川も間延びしたスペースに入ってくる。セカンドボールの回収に備える。
この場面では結果的にファールになりサンガボールに。

川崎が背後。原が手前。豊川も手前。

そして37分。PKに繋がるシーン。
このシーンの直前から、また川崎がロングボール時に原の横に入り、豊川も原の斜め下にポジショニング。セカンドボールと裏抜けに備える。そこではCBに跳ね返されるが、その流れで川崎が前線に残っていた。

SB三竿にボールが渡り前を向く。相手WBは食いついている。前からプレスをかけているから。ラインは高い。その瞬間に原が背後へ。そして、川崎は手前に落ちてくる。豊川も原のサポートに着けるポジショニングをとる。


原が裏抜け。川崎が落ちる。豊川絞る。

川崎が手前。原が背後。
そして優先順位は背後へ、だ。

ポストプレーが得意な選手が降りてきたらそこに出し、セカンドを拾う。
背後のスペースが空いてればそこへ出す。

優先順位を守った上で、ロングボール時の約束事を守り、相手と味方の特徴に合わせた判断と実行ができていたのに加え、三竿と原のクオリティが伴っていたのが大きい。


・終盤戦へ

この試合ではGK太田のPKストップや開始直後のビッグセーブが印象的だった。あのプレーがなければ試合は違う方向へ転んでいたかもしれない。

そして福田のパフォーマンスも良かった。はっきりとしたプレーが多く、本人もプレーしやすそうだった。特に、後半WBになってからはより前への意識が分かりやすくなり、背後とポケットを狙う動き出しも良かった。結果としてそれが二点目に繋がり、試合を大きく動かした。

低い位置やハーフェーライン付近でボールを福田が持ったとしても、或いは位置取りを下したとしてもなかなかチャンスクリエイトにはつながっていなかったが、高い位置へ出ていくことを意識させてあげるだけで思い切りの良さが出る。

結局夏の移籍ではSBの補強が上手くいかなかった?ので、福田に頼るしかないなか、今節のパフォーマンスはサポーターと監督、フロントを安心させるものだったかもしれない。おそらくWBなら荒木もプレー可能で、佐藤を右に回すというアイデアもあるかもしれない。

ただ、あくまで『かもしれない』ので、本職右SB、WBの選手が他にいないことは終盤戦に向けて一つ懸念材料だろう。

福田がこの試合で良いパフォーマンスをしたことと、補強しないことは別の話だ。本職が二人抜けているのだから。累積や怪我を考えると一人は必要ではなかったか?

また、山崎の怪我も気になる。原のコンディションが良くなり、夏以降はパトリックの稼働時間も増えるとはいえ、ポストプレーが得意な選手が一人抜けるのはイタい。木下も真ん中でプレーできるし、一美も可能。
彼らの奮起に期待したいし、やはり得点がとれるパトリックはでかい。

そしてなんといっても、ミヤと武田。早くスタジアムで躍動するのが観たい。





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