J1第22節京都サンガVS柏レイソル
SB(WB)問題は解決する気があるのか。
ロングボールを多用してくる相手に、なすすべなしの前半。
結局最後は力業で何とかしようとするが…
とにかくサンガが嫌なことを柏が90分やり続けたなと。
開幕戦の鹿島戦同様、ロングボールが得意でしっかりプレスをかけにくる相手にとことん弱い。
・ハマった状態のうしろ
サンガはいつも通り4-3-3。レイソルは4-2-3-1(4-4-2)。
お互いに縦への意識が強く、無理にビルドアップはしない。
ボールを持ったらまず背後へ。
戦前の予想通り、互いに中盤を省略しセカンドボール狙いとなった。
まず、この試合で機能してたのはサンガではなく、レイソルの前からの守備。細谷と山田が2トップ気味になり、サンガの金子を警戒しながらSBへボールを渡らせる。そこから対角に山崎めがけてロングボールを狙うが、そのまま後ろにそれたり、正面からCBに潰され、なかなかマイボールにできない。このような形がしばらく続く。
レイソルは明確な意思を持って統率ができており、自信を持って守備をしていた。
サンガもそれに対して中盤の平戸が気を利かせる。
CB井上がボールを持ち、アンカー金子が2トップに消された場合、IH平戸が2トップの斜め後ろにポジションを取り、柏のフロントラインを突破しようとしていた。平戸だけでなく、後半から入る谷内田も同じで、他の試合でも彼らは後ろでハマっていると気を利かせて斜めの位置取りをする。実際、ミスにはなったが36分のシーンは、豊川に渡ればチャンスだった。
しかし、20分のシーンのようにIHが落ちてきてフリーになってもパスが来ないことがあったり、40分のシーンのようにIHがサポートをしても味方との距離が遠く、結局ロングボールをミス。
役割が多いIHがただただ負担を強いられる。もちろんバックパスでやり直せばよいが、後ろで数的優位を作って揺さぶり、CBが勇気をもってボールを運び、相手をつり出してフロントラインを突破するといった攻撃は基本サンガはアピが入らないとしない。
前半は、金子が2CBの間に入り3枚を形成したときに、柏2トップがどういったリアクションを見せるのか様子を見ても良かったのではないか?4-4-2で来るのであれば、後ろを3枚にして数的優位を作り、相手全体を絞らせたうえでロングボールを相手SBの裏にけりこむのもアリかと。また、後ろで数的優位を作ると、1トップの山崎のポストプレーも生きてくる。
キジェ監督は試合後のインタビューで、選手がボールを受けるのを怖がっていたという風な発言をしていたが、ハマった状態から抜け出せないのはJ2時代から同じで、川崎や武田が個人の判断で『いてほしいところにいた』だけであり、チームとして誰が出てもできる状態に持ってこなかったつけを払っている様に見える。
・ロングボール対ロングボール
柏はシンプルだった。サンガの3トップが前からプレスをかけるため、それに連動してSBの佐藤と福田もやや前気味にスライドし、コンパクトネスを保つ。当然福田と佐藤、特に福田の裏にマテウスサヴィオや細谷が走りこみ、裏抜けを試みる。CBに跳ね返されたとしても、柏2ボランチは基本ビルドアップ要員ではなくセカンドボール回収要員。リアクションもよく、サンガはなかなかセカンドボールを回収できない。ロングボール対ロングボールでは、セカンドボールを回収できるかどうかとどこにけりこむかが肝心であるが、レイソルはより明確で再現性があった。
サンガは対応に苦しみ、いつもなら相手WGにボールが入ればIHが横スライドをするが、この日は福田が縦スライドしていた。ただ、柏に狙いを考えれば、途中から横スライドに中盤の守備を修正するのもアリだったのではないか。また、敢えてボールを柏に持たせてカウンターを仕掛けるのも見たかったが、あくまで自分たちのスタイルを貫きたかったのだろうか。
攻撃面でも、サンガは再現性とターゲットに苦労していた。
2CBが開いてロングボールを蹴りこむやり方が、柏にうまく抑えられてしまっていたので、そもそもがハメられた状態で苦し紛れにロングボールで逃げるため、IHやアンカーがDFのサポートに回っているため、そこからロングボールを放り込んでも前三人だけの関係になる。また、ロングボール自体も、SBの背後ではなくCBに対してやや正面にけるため、全くセカンドボールに繋がらない。
これでは縦ポンサッカーと言われても仕方がない。
セカンドボールの回収とそこからの前進がロングボール戦術の目的である。
キジェ監督はおそらくリヴァプール、クロップ監督が好きなんやと思う。
4-1-2-3、ハイプレス戦術、ベルマーレ時代のインタビュー、J2や昨シーズンのSB構成。サイドに貼らないWG。あまり後ろから組み立てをしない点も似ている。いろいろ共通点はある。
ただ、クロップには、リヴァプールには圧倒的なSBがいる。突破力のあるWGがいる。選手たちのキャラクターがマッチングしているのだ。
今のサンガはどうか。シーズン前に荻原が浦和へレンタルバック。突破力のある白井が抜けた。キープでき、スキルフルなパウリーニョも抜けた。
補強はまたしてもGKと長身FW。
ロングボール戦術では精度の高いキックができる後ろの選手と、競り合える選手、回収できる選手、追い越せる選手が必要。今のサンガにたりないのは、キックが武器で追い越せるSB。(もしくは突破力のある純粋なWG)
WGに関してはおそらくこのままだろう。
ではSBはどうか。SB問題再びである。
・SBの補強はなぜ進まない?
先ほど述べたように、明らかにSBがいない。
特に右。
荒木をWBとして使うつもりなのだろうか?個人的には、今のメンバーだとその可能性が高いと思う。即戦力を入れるなら、和歌山キャンプに合流させるだろう。しかし、ここまでSBの補強はなし。
明らかに福田は心配で、このままでは相手のユニフォームをちぎりかねない。
前半は福田で行って、後半WBに荒木を使うつもりか。ただ、福田が怪我か累積などで出場できない場合はどうするのか。
WBに福田を使った今節の後半。立ち位置がやや前目になったことで、前半のようにアーリークロスだけでなく深い位置まで侵入してくれるかと思ったのだが、ボールが入ってもワンタッチで中にとりあえず入れる姿を見て、もう少し勇気を出してチャレンジしてほしいと思った。
また、福田が仕掛けられないのであれば、IHがポケットに侵入して背後をつくなど、深い位置まで入ってクロスをあげなければ、パトリックと原を入れている意味がない。アーリークロスは押し込んだ状態でなら有効であるが、苦し紛れに入れても意味がなく、また精度が低ければ元も子もない。
監督は攻撃において追い越しやポケットへの侵入をJ2時代からこだわってやって来たはずなのに、荻原と白井という個人の優位性が無くなるとこうなるのは予想できたのではないか。これだけ不可解な現状が続くと、強化部が本当に効果的に仕事ができていないのかと気になる。
仕事ぶりがきちんとフィールドプレーヤーに還元できていれば、外国人GK3人とっても誰も文句は言わないだろう。ただ、最優先のポイントを補強できないでいるため、サポーターから批判されても仕方がない。
戦いかたを変えないのであれば、少なくとも現状を維持もしくはプラスにできる補強をしてほしい。おそらく、新外国人GKのクソンユンは高パフォーマンスを見せてくれるだろうが、あくまで監督がGKを変える判断をした時にしかピッチに立てない。
しかし、フィールドプレーヤーに関しては交代含めチャンスがある。
チャンスすら提示できないフロント、強化部はこの敗戦を重く受け止めるべきだろう。筆者の記憶が正しければ、まだマーケットはオープンのはずで、SBの補強をお願いしたい。