「屍鬼」 和風のゾンビものだが、ベースは聖書のアベル・カインの物語になっている
なんとなく「サマータイムレンダ」の記事で言及したら、この作品も読み返したくなってしまったので。
本作は封神演義の次に藤崎竜が取り組んだ原作小説アリのコミカライズである。十二国記の小野不由美さんの代表作の一つとあって非常に面白かった。
本作では、吸血鬼(屍鬼)に襲われたものはその何割かか屍鬼としてよみがえり、人を襲うようになる。屍鬼は田舎町に潜み、少しずつ少しずつ数を増やし、村人たちに気づかれないように人々を屍鬼に変えていく……。
というわけで、あらすじだけ見るとめちゃくちゃシンプルな話だ。
しかし、村人たち一人一人の描写が丁寧であり、こういう丁寧さで一人一人を語れることが、物語を作るということなのだなと思う。
とにかく序盤の恐怖というか絶望感の煽り方が上手い。
3巻まで何もわからないままじわじわと人が死に、人が減っていく。
最初は伝染病なのでは?と疑うが全く対処法が見つからない。そうしているうちにも次々と死者が増える。知らぬ間に消えていく人たちも出る。
ある時、村の「起き上がり」という伝説にヒントを得て「吸血鬼の仕業なのでは?」と疑って警戒を始めると、ついに証拠が見つかる……
しかし、そのころにはもうかなりの人間が屍鬼たちに乗っ取られており、気づいた人たちは一人一人順番に狙われては口をふさがれていく……。
屍鬼サイド
ちゃんと理性はあり、最初は人を襲うのに抵抗があるが、空腹や飢餓感を抑えられないために結局人を襲うようになる。そしてすぐに慣れてしまう。
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