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「サイコろまんちか」24話 虐げられてきた人間は、力を得た時に謙虚でいられるか問題
マッド・サイコロジスト・ガールが、やりたい放題! 心理学×青春コメディ第2弾! 「心理テスト」や「フット・イン・ザ・ドア」など身近な題材から、人間を狂わせる禁断の実験「スタンフォード監獄実験」まで…奇人女・伊東(いとう)が心理学研究部の成立を目指し、ますます大暴走! 学園一の変人女・伊東、がっかりイケメン・阿部(あべ)、腐女子なメガネ巨乳・江崎(えざき)、元エリートの不良・宇堂(うどう)…全員クズな心理学研究部の明日はどっちだ!?
まぁそれはともかく、こちらの記事で紹介した「サイコろまんちか」は本当に面白いのでおすすめだよ、という話をします。
心理学と言われるとめんどくさそうだけれど「好きな人の気を引いたり人と仲直りするためのテクニック」っていうとみんな興味あるよね
「サイコろまんちか」は「心理学うんちく」マンガです。心理学を使って学生たちの悩みあるあるを解決したり、よりややこしくしたりします!
最近人気の「あくまでクジャクの話です」と同じ作者さんですね。こちらが好きな人な絶対楽しめるのでおすすめ!
心理学と言ってもアカデミックな話はほとんどなく、あくまで学校の生徒達の悩みが主で、それに対して主人公が「コレは心理学でいうところの◯◯効果だ」って当てはめていってそれをもとに解決策を考えていくお話です。
心理学は魔法ではないので「これはこういうものだ」ってことがわかってもどうにもならないこともありますが、だからこそ面白いなと思います。
24話は「学習性無気力」の話です
24話に登場するのは「身の程を知っていろいろ諦めてしまったオタクくん」の話。かなり切ない。
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20年くらい前のオタクのイメージってこんな感じだったと思う。
今でもそのころのイメージを引きずって「オタクは現実で人と向き合えないから女の子が出てくるアニメにしか恋できないのだ」みたいなことをしたり顔で言うおっさんおばさんがいるし、今もオタク全体が馬鹿にできないとなったら「チー牛」みたいな言葉を使って意地でもバカにしてこようとする人いますよね。
で、こういう悩みを抱えているオタクくんに対する主人公の診断は…
「学習性無気力」。
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何をしても無駄だから「頑張らない」「無力であることを意識的に選択する」状態になる。「つらいけれどこれが今の最善で合理的だ」と自分に言い聞かせて「ただひたすら耐える」という状態になっている。
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さすがにこの言葉を知らないという人はあんまりいないと思いますが、そのくらい普遍的な現象なんですよね。
問題なのは、この「学習性無気力はどうやって解決するか」です。
最初のアプローチは「他の人が羨むものを手に入れさせる」=「一発逆転」
この作品ではまず、学園のアイドル的存在と一日付き合ってもらいます。
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「無力だからこそ謙虚に見えていただけ」の人は、ちょっとでも優位になるとすぐに調子に乗る
この作品はマンガなのでかなり露悪的に描かれますが、負け組だったオタクくんは急に調子に乗り始めます。
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これ似たようなパターンとして
「コミュ障の人が距離感を間違えたり、メンヘラになってしまう」
「株の上げ相場で急に儲かるとイキりだすが、下げ相場で調子に乗って一気に破滅する」
などいろんなパターンがあります。
特に前者は私も当てはまっていて、コミュニケーションに苦手意識をもってると普段はものすごく人見知りで受け身になるんですが、ちょっとでも親しくなると距離感を間違えて急に馴れ馴れしく振る舞うせいで嫌われるのを繰り返してしまいがちです。 私はさすがにここまでひどくはなくなりましたが、それでも未だに適切な対人距離感がわからないので、一定距離以上親しくなるの怖いなーって思ってます。
今まで虐げられてきたオタクくんは、より弱者を見つけてマウントを取ってしまう
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ここまで最低なことを大声で叫べるのすごいよね。
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「自分がされていやだったことを、いざ立場が優位になったら自分がやる」人というのは、「それが悪いことだからイヤ」だったわけじゃなくて「自分がやる側でいたかった」だけなのか・・・?
実際はもうちょっと複雑です。 嫌なやつと接し続けた結果、それに耐えるために、それを受け入れるために嫌な奴の振る舞いを内面化してしまうパターンもあります。 これが差別のもっとも恐ろしいところです。
いわゆる「社会的スティグマの内面化」「ハラッシーハラッサー」というやつですね
実際に、オタクとして虐げられてきた結果、その差別を内面化して、オタク趣味は恥ずかしいことであるから隠れていなければいけないってスティグマを抱えてる人かなりいますからね。
しかも、「トラウマの原因」とか「いじめてきた人相手にやり返す」ならわかるんですがこのオタクくんはそいつら相手じゃなくて、弱い自分にも親しくしてくれていた「友達」相手にマウントを取ってイキろうとするので色んな意味で最悪です。
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でも実際、こういう行動する人ってすっごい多いんですよ。これフィクションの話だけじゃない。
不甲斐ない自分をごまかすために、たいして努力もしないくせに「一発逆転妄想」を大事に温存し「◯◯で逆転したらみてろよ」と中二病めいた発言をTwitterで恥ずかしげもなく垂れ流す。
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こういう人はいざ本当に成功したら、人を虐げる側に回るんだろうなってのがはっきりわかりますね。実際上のツイートをした人は、オタク差別反対と言いながら女性差別的なミソジニー発言を垂れ流しています。弱者アピールをしつつも見下せるものを探してる。最悪ですね。
「弱いから社会の害になっていないだけで、絶対に力を与えてはいけないやつだ」と周りからバレてしまっているので、自分の身を振り返ってちゃんと人の役に立つ発信を続けるとか、人に好かれるような発言を意識して他人へのdisをやめるか、それも無理なら株かなにかで一発逆転するしかないと思います。
第二のアプローチ 身近にある大切な人との付き合いを通じて自分は無力でないということを思い出す
環境を変えるのが先か、自分が変わるのが先か
これはどっちが先でもいい
なにか売りになる能力をもってるなら、その能力を買ってくれる人を見つければ逆転できる人というのは実際多くいる。
ただ、「一発逆転」というほど劇的な変化が起きるのは「不遇な環境で腐らず腕を磨いてきた人」だけだ。不遇な環境に過剰適応して、無力であることを選択してしまっていただけの人は、環境を変えても何も変わらない。
「パーティー追放されたけど実はすごい力があって俺を追放した人ざまあ」という展開は、なろう小説で描かれるストーリーの中にしかない。
であれば、なんとか時間を捻出してちょっとでも何か自分にスキルをみにつけていったり、今の自分の身の回りの人を大切にして好感度を稼いでいくとかなにか自分を変えていかないといけない。
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その点、この作品の幾島くんは、途中は最低だったけれど、ちゃんと反省して友達を大事にするという地点に戻っている。
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自分を褒めてくれる人がいるとすぐに調子に乗ってしまい、ちょっとでもその人が自分に批判的なことをいうとすぐにふてくされて投げ出してしまうMさんと比べると、すごく格好いいしこの人は大丈夫なんじゃないかって思わせてくれる終わり方になっている。
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