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【スタートアップ向け】事業計画、投資家さんはどこ見てる?

こんにちは!
株式会社プロフィナンスの木村 義弘です!

20年近くの経験とノウハウを濃縮した「魂の事業計画講座」(全体像見出しはこちら)の連載を開始しました。

さて、前回記事では「事業計画を活かす!意外に知らないPDCAの進め方」と、事業計画の活用方法について触れましたが、今回は資金について考えたいと思います。
資金については、「スタートアップ向け」、「大手企業の新規事業様向け」、2つの記事に分けて、お伝えできればと思います!
*大手企業の新規事業向け記事はこちら

本記事はスタートアップ向けなので、スタートアップとして事業計画において「資金調達をどう考えていけばよいか」について触れていきたいと思います。
とはいえ、この手の話は無数に良記事が出ているので、どちらかというと資金調達のオプションを俯瞰しつつ、事業計画視点で語りたいと思います。


本記事でわかること

まずは、本記事を通じて読者の方が何を得られるのかご提示します。

【本記事でわかること】
1. 資金調達の大分類
2. 銀行からの借入のときに意識するポイント
3. 投資家さんの目線と事業計画を提示するときの工夫


資金調達の大分類

事業を始めた!もしくは事業計画を作った!
そしたら、「事業を進めるために●●円のおカネが必要!」となります。

資金調達方法を大きく分類すると、3つです。

資金調達というと、「融資」か「増資」かで考える場合も多いですが、もちろん「自分で稼ぐ」という方法もあります。
スタートアップにおいて、「自分で稼いで、再投資し続ける」も有益な資金調達の手段です。よく「ブートストラップ(Bootstrap)」と言ったりしますね。

ただ、本当は大きく新しいことを実行したい!というとき、いわゆる営業収益の範囲内でしか投資ができません。営業収益が成長のボトルネックとなってしまいます。

そのため、さらなる成長を遂げるために外部からの資金調達を燃料に成長加速を狙います。

その大きな手法として、

A. Debt Finance(デット・ファイナンス):
金融機関からの有利子負債による資金調達

B. Equity Finance(エクイティ・ファイナンス):
投資家からの出資による資金調達

が挙げられます。
それぞれがどういうものなのか、というのは細かな議論なので、この後については、「それぞれの資金提供元が、事業計画の何を観ているのか?」にフォーカスしてご紹介したいと思います。

*実はファイナンス理論で、資金調達の優先順位として、「自分の稼ぎ」→「Debt Finance」→「Equity Finance」だよね、というペッキングオーダー仮説というものがありますが、本記事での詳述は控えさせてください。

*たまにいらっしゃいますが、Debt Financeなので日本語・カタカナで表現するなら「デッ・ファイナンス」となります。ときおり、「デッ・ファイナンス」と表記してしまう方がいますが、Dead Financeになってしまい、「死んでるで!」とX (旧Twitter)あたりではお祭りになるので気をつけてくださいませ。


銀行の方が事業計画で注目している点は?

借入金・融資で資金調達する場合は主なプレイヤーは銀行、信用金庫・信用組合となります。
金融機関の方は主に借入金実施の検討(=融資審査)の際には「返済可能性」を観ています。それを示す最良の方法は、過去の実績、つまり過去決算書を分析して、返済可能な収益力、もっというと営業収益・営業キャッシュフローを生み出せることが、実績として示されているかを考えます。
なお、以前は「担保もっているか」等を観ておられましたが、さすがにスタートアップで担保となるようなものを保有していることは少ないでしょう。そのため、金融機関の方は、損益計算書で計算できる「償却前営業利益」に注目しています。

償却前営業利益=営業利益+減価償却費

会計に詳しくない方でも一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、損益計算書内の費用として、「減価償却費」というものが登場することがあります。この減価償却費という費用は、「現金支払いが伴わない費用」です。会計講座ではないので細かな話はしませんが、この現金として出てない費用を営業利益に足し戻してあげることで、簡易的に営業キャッシュフローを算出しているのです。

この営業キャッシュフローは、銀行の方から見た場合、「返済原資」となります。ここで十分な営業キャッシュフローがないと返済できなくなります。

さて、銀行の方は、最初の融資取引の場合は、概ね5年程度の返済期間で検討してくださることが多いと思います。

例えば、償却前営業利益、営業キャッシュフローが1,000万円だったとします。そうすると償却前営業利益1,000万円×5年=5,000万円。これくらいを融資額として想定されることが多いようです(他の借入金がないことが前提)。

これは別の視点でいうと、
営業キャッシュフロー5年分を前借りしている、と見えます。
例えば自社(年間で稼げる営業キャッシュフロー1,000万円)として新しい取り組みをするにあたり、5,000万円の投資を今実行したいとしましょう。普通にやっていくならば5年間待たなければなりません。
しかし、この営業キャッシュフローの実績に基づいて、融資を受ければ5,000万円の投資をすぐに実行できます。
営業キャッシュフローの前借り、もしくは将来の営業キャッシュフローを担保に融資を受けている、とも言えましょう。

実際に銀行に勤務する友人にこの話をしたところ、「確かに!」と納得された覚えがあります笑。
銀行の方も、意外に気づいていないのかも?

以上を踏まえると、過去の決算書が拠り所になっていますが、事業計画では「借入金を何に使って、その結果どう収支が動くのか」を事業計画で語れているかどうかが重要となります。


投資家の方が事業計画で注目している点は?

一方で投資家の方々は事業計画において何を観ているのでしょうか。
端的に言うと、事業仮説の整合性と思考の深度を観ています。

まず大前提として、お相手がどういう考え方でスタートアップへの投資判断をされているのか、最近はベンチャーキャピタルの方を主人公にした書籍も出てきていますが、まず実務的な部分を確認する上ではこちらがおすすめです。

こちらで語られている話で言うと、初期検討では、経営チーム市場機会プロダクト/ビジネスモデルであると語られています。

「ベンチャーキャピタルの実務」より

よくキャピタリストの方が、Why This、Why Now、Why Youで聞いている、と語られるときがあります。
まさしく
・Why This =プロダクト/ビジネスモデル
・Why Now=市場機会
・Why You = 経営チーム

と読み替えて頂ければいいと思います。
このあたりについては、キャピタリストの方自身がnoteや、インタビュー記事で語られているので、生の声をお聞きになるのが一番です。

投資家の方に事業計画を見せる工夫

大前提

起業家が提示する事業計画というのはそのステージの違いはあれど、「仮説」が内在していることは提示される側のキャピタリストの方も十分認識しています。
その上で、キャピタリストの方は以下の視点で事業計画をみています。

  • 起業家は仮説と事実を区別して語っているか?

  • 仮説に対して、示唆を深められているか?

これを踏まえた上で、前述の初期検討の視点を踏まえて、数字の計画で何をどう語るかについて最後触れたいと思います。

市場機会

まず、事業計画において以下のポイントを押さえて頂ければと思います。

  • トップライン(売上高の規模)と成長性

  • 売上計画における顧客ターゲットに対する単価感

おそらく、事業に関する説明の中で、市場規模についても触れていると思いますが、その市場規模に基づく、トップラインの成長を描けていればいいと思います。

単価については言わずもがな、ターゲットとする顧客に売る上で妥当な価格になっているか、そこについてどのような仮説を持っているか、解像度を観ていると思います。

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一つよくある話についてお話します。
一定経験のある起業家の方の場合、市場規模も売上予測も「保守的」に算出して、キャピタリストの方に提示してしまうときがあります。
かく言う私もそうしたことがありましたが、キャピタリストの方(この道10年を超える方、というと絞られてしまう?)にはこのように言われました。

起業家であるあなたが保守的に叩く必要はない。
叩くのは私たち(キャピタリスト)の仕事。
起業家として、まず大きな夢を見せてほしい。

とあるキャピタリストさん

もちろん嘘でふくらませるのは言語道断ですが、起業家としては「可能性」を示すことも大切ですね。
起業する、ということはその市場のリーダーを目指す存在です。
リーダーを目指す存在自身が、その市場の可能性を過小評価していいのでしょうか。
起業家は、自身を信じるだけでなく、対象とする市場の可能性も信じ抜く人である必要があります。


プロダクト / ビジネスモデル

プロダクトやビジネスモデルについては、特に以下のポイントが重要になるかと思います。

  • どこからおカネをもらうのか?

  • 何がスケールするドライバーか?

前述の単価感もそうですが、どのようにおカネをもらうのか、いわゆるビジネスモデル・構造についての仮説を聞いてこられます。

また、成長に向けて、何がドライバーなのかについて起業家の考えを聞いてこられます。

PMF手前ならば、顧客獲得のための施策についてどのように施策があるか、どのように検証をしているのか、現状はどのようなトラクションなのかを聞かれると思います。
PMF後であれば、顧客獲得に対する施策の優先順位と顧客獲得コスト(CAC)を踏まえて、キャピタリストの方が投資した資金がどのように顧客獲得・売上拡大に寄与するのか、方程式を聞いてこられます。

残すは経営チームということですが、ここについては、上記の内容をきちんと説明できるかでキャピタリストの皆様は見極めておられると考えてもいいでしょう。

起業家として、そのあたりの仮説や検証結果について、事業計画内に数値として落とし込めているかを観ています。

このあたりを仮説と事実を分けて、しっかり整合性をもって説明できることを求めておられます。

前述のキャピタリストの方と討議する中で、その方はこのようにも仰っていました。

結局、投資家としてどのリスクを取ればいいのかを知りたい。

とあるキャピタリストさん

起業家が考えている仮説、というリスクについて理解を深めることで、投資対象である目の前のスタートアップが何のリスクと向き合っているのかを理解し、投資におけるリスクを見極める。そしてそのリスクはキャピタリストとして取りうるリスクなのかどうかを最後判断する、ということと理解しています。


キャピタリストの方にご提示するときのTips


さて、いざ作成した数値の計画ですが、キャピタリストの方にお出しする際に
「やっとできた!これを送ろう!送信っと…」
すぐに共有されている方が多くいらっしゃいます。気持ちはすごくわかります。ただ、その前に一度振り返って頂ければと思います。

事業計画は「コミュニケーションツール」の側面があることを以前の記事で語りました。相手に伝わりやすいよう、もしくは伝えやすいようになっていますでしょうか?

例えば、次のようなポイントは確認しておいていただければと思います。これは投資銀行の方が表計算ソフトで財務モデル(≠事業計画)を作る際の工夫ですが、流用・参考にできます。

投資銀行の方が、表計算シートを作成するときの工夫
1. 直接入力数値は青字にする
2. 計算式は黒字にする
3. 計算式内に直接入力数値を混ぜない(例:E5*0.5はダメ。0.5を別のINPUTとして別のセルで設定する)
4. (実はローカルルール発?)他シートからの参照は緑字にする
5. 計算の中にイレギュラーなベタ打ち箇所がないか?

まずこれだけでも、「どこを観たらよいか」わかります。

キャピタリストの方は、提出された表計算を自分でもいじったりします。なので、どこを観たらいいのか、どういうロジックで計算式が組まれているのか確認するので、やりやすいように設計しておきたいところです。

あと、例えば「売上」「マーケティング」「人員」…なんかを別シートにしたり、1シートで縦長に作ったりする場合もありますが、これは個人的には「好み」だと思っています。
*シートを分ける場合、列配置の統一は気をつけていただきたいです。事業計画のスタートがあるシートではC列から、あるシートではF列からとなると見にくいですし、あとで計算エラーも出てきます。

そんな話もありますが、ここで一つおすすめの方法があります。
キャピタリストの方へのインタビュー時にお見せして、ほぼ全員が

  • こういうのがあるといいよね

  • 議論が深まりそう

  • できるCFOがいるスタートアップだと用意してる

と後押ししてくれたのが「1枚サマリーシートを入れる」です。

縦長なのか複数シートにまたがるのかはさておき、無数に変数を設定していると思います。
その中で自身が考える大切な変数、つまりKPIは何か、その結果としてKGIとなる売上高や顧客数、その他従業員数やキャッシュフロー等の指標を一つのシートにまとめて事業計画自体を俯瞰し、議論を深めたりシミュレーションをしたりします。

サマリーシートイメージ

抜き出した変数について、その変数の値や根拠等を記載して、ここで数字の編集もできるようにします。そしてその影響を受ける売上高や顧客数の推移等を同時に眺めることができるようにします。

私自身が長い事業計画作成および支援に携わる中で、議論や意思決定においては論点絞って進めるよね、ということで考え、作成してきたものです。

ちなみに…
当社プロダクトであるVividir(ビビディア)では、このサマリーページ、なんと実装済みです!

Vividirのサマリーシート(入力値はダミー)

今回の記事では、「資金提供側の方たちがどのように事業計画を観ているのか」について記しました。
もちろん、個別では一概に言えない部分もありますが、共通項として捉えて頂ければ幸いです。大切なのは目の前の方に向き合うことであることは変わりません。

また本記事は、「スタートアップ向け」に語りましたが、大企業内の新規事業については同時リリースの別の記事で触れさせていただきました。一部重複する部分もございますが、ご興味ある方はそちらの記事もご覧いただければと思います

今回ご紹介したようなポイント、表計算ソフトで作る場合のTipsも少し触れましたが、なかなか作って、メンテナンスするのも難しいですよね。
我々が開発・提供しているプロダクトVividir(ビビディア)は、「よい事業計画を作ろう」と考える皆様の味方です!
事業計画を作成するのもカンタンです!
さらに実績を取り込み、仮説検証をシームレスに実行できます!
また本文で触れた「サマリー」機能もあるので、議論・意思決定に大きく寄与することでしょう!

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では、次の連載記事まで、ごきげんよう!

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