いにしえの輝きを取り戻した古代刀剣――Museum Collection #9 宮崎県立西都原考古博物館
いにしえの輝きを取り戻した古代刀剣
宮崎県立西都原(さいとばる)考古博物館は、豊かな自然環境と優れた歴史的景観を今に伝える特別史跡西都原古墳群と一体となったフィールドミュージアムとして二〇〇四(平成十六)年四月に開館しました。今回は、当館の逸品の一つである「研磨刀剣」をご紹介します。
「研磨刀剣」とは、南部九州特有の古墳時代墓制の一つである地下式横穴墓から出土した刀剣三振を新たに研ぎ直したもので、小林市野尻町(のじりちょう)の大萩(おおはぎ)十四号地下式横穴墓から昭和四十八年度の発掘調査で出土しました。写真の上から鉄刀(平造〈ひらづくり〉)、鉄刀(切刃造〈きりはづくり〉)、鉄剣となります。
刀剣そのものは錆で覆われていましたが、一部地金も見えるほどの保存状態であり、宮崎県総合博物館の特別展「日向の古墳展―地下式横穴の謎をさぐる―」(昭和五十四年度)にて展示されましたが、来館者の刀研師の目に留まったことから、出土品の保存と刀剣の実態を観察する目的で研ぎ直しが行われました。
研ぎ直された刀剣は、約一五〇〇年前の輝きを再び取り戻しましたが、地鉄の素晴らしさや地沸(じにえ)、映りの良さは研師が感嘆する程の出来だったそうです。現在、当館にて展示中の「研磨刀剣」は、やや暗い空間の中でひと際、妖しげな光を放っており、来館者を魅了してやみません。
当館は、二〇二四(令和六)年四月に開館二〇年を迎えます。さらに多くの方々に親しまれ、宮崎の歴史に関心を持つ方々の学びの場となるよう、様々な展示活動を展開する予定ですので、是非ご来館ください。
(ひだか ひろと・宮崎県立西都原考古博物館学芸普及担当主幹)