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2025年・ライブ始め

ライブ:花田裕之 ”流れ”(福島・Hoo Chy Coo、2025年1月25日) 

「やまびこ」に乗って福島県は福島市へ。昨年10月の郡山・流れは全行程各駅停車の旅だったから、今回の旅は速い、速い。さすが新幹線。およそ5年ぶり3度目の県都訪問、そして私自身、2025年・ライブ始めである。

会場はブルース喫茶「Hoo Chy Coo」。ちょっとレトロな雰囲気のこじんまりとした空間に、やわらかく、あたたかなあかりがほの暗く灯る。カウンターの後ろの棚にはレコードがぎっしりと。

マグカップの熱い梅昆布茶を飲みながら、福島の夜を味わう。総じて花田さんのオリジナルが多い印象。鳥頭の記憶では、おそらく3分の2ぐらいが自曲だったのではないかと思う。「何処へいっても」や「借家のブルース」などのカバーを自らのテイストで端正にまとめ上げる一方、自曲では心のおもむくまま弦を鳴らす。何を企んでいるのか、ためらっているのか、謎めいているのもまた一興。なぜかずっとマイクの音量が不安定だったのは、誰かがどこかでこっそりみていたからかしらん。

この晩は「なまずの唄」がよかった。何かドラマを期待させるような導入部から始まり、エンディングで再び同じテーマに回帰する長尺バージョンで、久々にフルに聴いた感じ。かつて「なまず亭」という店をやっていたという、この店のあるじに敬意を表しての一曲か。

「それでいいのさ」もなかなか。この作品、個人的にはかなり苦い。コーヒーのように嗜みとして愉しむ苦さとは違い、むしろ粉薬のような苦さ。できれば避けて通りたいが、時には対峙せざるを得ない類のもの。ただ、プレイする花田さん自身、あまり感情で塗り込めることをしないスタイルなので、聴き手としては救われている気がする。

「Sadness City」は休憩後のステージ後半第1曲目。この順番は珍しい感じ。同じく後半、「二人でいよう」はこうした派手めな曲の陰に隠れてしまいがちだけど、やはり隅においてはおけない。概して「流れ」はハッピーな、というか、甘い系の要素が少ないので、こういうナンバーがあるとほっとする。疲れた時に甘いものが欲しくなったりしませんか? 人生、口に甘い良薬がもっとあっていい、と思うのだが。

冒頭の新年の挨拶と、時々の短い謝意の言葉以外はほとんどMCもなく、ひたすら目の前の瞬間に没頭。変わらずマイペースぶりをみせてくれた花田さんだった。今年はどのような展開になるのか....、それはその時のお楽しみ、ということで。