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表参道酔夢譚

ライブ :  花田裕之 “流れ” (表参道・The Moon under Water、2024年8月3日)

前回は風薫る5月、今回は熱波猛り狂う8月の表参道「流れ」。お洒落な都会は宵っ張りさんが多いのか、開演は遅めの20時をさらに少し過ぎたころ。チューニングしながらゆるゆると「(She’s So) Untouchable」でライブはスタート。相変わらずの厳しい暑さと弦の調子、それから花田さんのボーカルのスラー(というか呂律?)の感じから、前回(上尾)、前々回(阿佐ヶ谷)に近い感じのプログラムかな、と思ったら、良い意味で当てが外れた。

「My Elegy」「祭りのあと」「Knockin’ on Heaven’s Door」といった意外な曲が次々登場。確か「My Elegy」はいちど飯能で聴いたきり。「祭りのあと」もやはり「流れオンライン」で耳にしたぐらいか。また「Knockin’ on…」に至っては「流れ」では初めて。一見、陽気。だがその下に果てしなく広がるブルーな気分。いつかリクオさんとのセッションで聴いたレゲエ調、というよりはアコギ一本のせいか、ふとカントリーっぽくも感じられて面白かった。

また、先月の阿佐ヶ谷よろしく「Lady Cool」あたりが来るかと思いきや、久々の「かんかん照り」。これぞまさしく今、ここにいる皆の心の叫び!(笑) 選ぶべくして選ばれた渾身の1曲といえよう。「帽子をかぶった子供が」という歌詞変更かしへんはなかなかブラックなジョーク。

さらに「流れ」では定番ともいえる、サンハウスのカバーが見られなかったのも印象的だった。「汽笛か」「泣きたい時には」などの山口冨士夫ナンバーは聴かれたのだが。(この点、私の鳥頭ゆえの記憶違いの可能性あり。その場合はどうかご容赦ください。)

しかしこの晩、最も私の心を打ったのは幕切れの「渦」。ジプシーズで聴くよりも脱力、ふわふわ(ふらふら?)と漂うような感触。バンドセットではどこか張り詰めた空気を感じたものだが、ソロの「流れ」では花田さん自身のカラーがより濃く、強く表れたモノローグ調。「かんかん照り」とはまた別の、静かなる心の叫びか。たぶんこの時分にはかなりご自身、酔いが回っていたのかもしれない。うっとりと、まるで問わず語りの酔いにまかせた夢語り。

夢の終わりは22時15分過ぎ。すっかり夜も更けたのに、全然気温が下がった気がしない。店の外を一歩出ると熱帯夜のなまぬるい風。涼やかな秋風がひどく恋しい。



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