ごきげんさんで
ライブ : 花田裕之 “流れ” (所沢・MOJO、2024年2月24日)
1年ぶりの所沢。関東地方はここ数日、冷たい雨や雪が降ったり止んだりの空模様。ライブ翌日も雨になるとの予報だったが、なぜかライブ当日は好天に恵まれ、日中は青空や暖かい日差しも。そんな一日が暮れる頃、今日の空の色のような青いシャツを着た花田さんが客席後方のドアから現れ、ステージへと上がる。
始まりは「Crazy Love」から。休憩を挟み、文字通りの「おさらば」で、ギターを置いて本編終了。しかしご本人からの自己申告により(笑)、そのままアンコールに突入。その後、一旦は楽屋へ引き揚げたが、鳴り止まぬ拍手で2度目のアンコール。幕切れの一曲は「たどり着いたらいつも雨降り」。
「Crazy Love」にしても「おさらば」にしても、これほどまでに人を熱く想う気持ちって素敵だな、と聴きながら思った。自分には縁のないことだから、余計に憧れるというか。普段はライブ中、そんなことは特に思わないのだが、この日のステージのふわふわとした感じのせいかもしれない。先週の白楽よりも少しだけゆるい感じで、浮いては沈み、また漂う、そんな空気感みたいなものが心地よかった。
「汽笛が」と「シルクの夜」が印象に残った。山口冨士夫ナンバーの前者は、おそらく近年の「流れ」では欠かせない大定番。これはとにかく気持ちよさそうに歌っている様子がよかった。なめらかにスラーをかけたような節回し。鼻歌でも歌っているみたいで、すごくごきげんな感じ。それゆえにか歌い出しのちょっとした声のかすれさえ、かえってチャーミングにきこえる不思議。
一方、「シルクの夜」。今回はアンコールで登場。久しぶりな気がする。いわゆるイントロらしいイントロなしで、いきなりギターと共に歌い始める。が、そのギターが冒頭、なんともカオス。声はしっかり「シルクの夜」を歌っているのに、ギターを爪弾く手は何か別のものを奏でているようで、しかし何を奏でているんだか、正直、謎状態。にもかかわらず、歌っているうちにいつの間にかちゃんとふつうに「シルクの夜」になっている.....すごい。(皮肉ではなく。)
ライブがはねて、店を出たのは20時15分過ぎぐらいだったか。満月の夜だったが、あいにく月は薄い雲に覆われてぼんやり見えたり、見えなかったり。それでもまださっきのふわふわの余韻に包まれて、こちらもごきげんさんで帰途に着いたのだった。