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来し方、行く末、冬の恋

ライブ :花田裕之 “流れ” 2021 下北沢・冬編 “Wintertime Love ” (2021年12月10日、ニュー風知空知、有観客・オンライン配信)

有観客・オンライン配信という組み合わせのの「流れ」である。昨年6月から1年3ヶ月ほど無観客・オンライン配信、そして今年10月からは有観客・無配信の通常の形式に戻ったようだが、今回のライブは入場予約が即日完売ということで、急遽配信が決定した模様。 休憩を挟み19曲、アンコールは3曲で、アコースティックギターライブ「流れ」の魅力をたっぷり堪能できた全22曲だった。

今回は全体を通し、いつになく花田さんが曲紹介で作者名などの人名に触れることが多かったように思う。そのせいか私自身聴き手として、花田さんの「音楽的来し方」のようなものをこれまで以上に強く意識させられたライブになった。また、その音楽的源流の流れゆく先にあるものとして、花田さん自身の新曲も配され、これまで辿ってきた道、そして今現在の断片を切れ切れに眺めるような感覚で楽しんだ。

さて、ステージ前半のイチ推しは「風の跡」。ロックンロール・ジプシーズのレパートリーでもあるのだが、この晩のアコースティック・ギターはなぜかちょっぴり感傷的に響く。しかしそれも束の間、ニヒルな詞と独特の素っ気ない歌っぷりで、センチメンタルに偏ることなくちょうどよい塩梅に。

久しぶりの再会でびっくりの「Femme Fatale」で始まった後半は、「ふにゃふにゃ」でさらにびっくり、というか当惑。実は私の人生史上初めて聴く曲。花田さん曰く「これ以上に北九州らしい曲はない」。残念ながらついぞ南浩二という人を私は直接聴くことはなかったのだが、どこか桃色がかってアヤシイ雰囲気の「ふにゃふにゃ」。聴いているうちに、この擬態語がなんだかヤバい伏せ字にも思えてきた(笑)。花田さんのギターで聴いていると、なかなか可愛らしくもいじらしい(いやらしいではない)チューンにきこえるのだが、結局アヤシイことには変わりない気がする。

この日の最後の最後、「My Sweet Lord」 はとてもよかった。この歌は「My Lord 好き好き大好き!」の情熱というか熱情が素直に伝わってくるので、好きなんである。おまけにクリスマスも間近、この曲自体は全然クリスマス・ソングではないけれど、結構それっぽく浮かれてしまった。思わぬところでラッキーな拾い物をした気分。これで私のWintertime Loveの行く末は、My Sweet Lord に決まり。Hallelujah!

やっぱり曲のあとに、そしてアンコールに、観客の拍手が聞こえるライブはいい。今もって社会情勢の行く末には不透明さがつきまとうものの、どうか「有観客」がこのまま続けられるようにと願うばかりである。花田さん、ニュー風知空知、撮影・配信スタッフの皆さん、いい夜でした、ありがとう!

【花田裕之 “流れ” 2021 下北沢・冬編 “Wintertime Love ” 】
Tell Me Why/汽笛が/風の中に消えた/あきれるぐらい/Heart of Stone/借家のブルース/時の過ぎゆくままに/風の跡/Sitting on the Fence/ロックンロール・ジプシーのバラッド/Wild Horses/ローリング・オン・ザ・ロード//(休憩)//Femme Fatale/なまずの唄/ふにゃふにゃ/Lady Jane/新曲(歌い出し:泣き濡れた瞳が)/No Expectations/バス通り//(アンコール)//博多っ子純情/泣くだけ泣いたら/My Sweet Lord