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和製ジャズ温故知新.再編Vol.11/幻のモカンボセッション

戦後のジャズシーンを語る上で欠かせない人物がいる。
天才ピアニスト守安祥太郎である。

守安祥太郎/1924〜1955.31歳没

バップピアニストのバド・パウェルを徹底的に研究した彼は、この時代スイングスタイルのピアノ奏法が多い中、いち早くビバップのスタイルを身につけた存在で知られる。

彼は、奇癖を持っていたらしく、いわゆる曲弾きと呼ばれる曲芸のように、ピアノの下から手だけ出して弾いたり、椅子に後ろ向きに座り右、左反対に弾いたり、さらにステージで踊りだすという変わった人間だった。

今ならさしずめキースジャレットか?そのような才能に恵まれた守安も躁鬱病で1955年31歳で自害してしまう。その守安が歴史に名を残すのは、日本で初めてのジャムセッション1954年ナイトクラブ「モカンボ」のセッションがあったからである。セッションは3日間。

現在残るものは3日目のセッションのもので、手製の重量級テープ・レコーダーに、強く引けば切れる紙テープという、今では考えられないような代物を駆使して録音が行われた。

メンバーは守安祥太郎、秋吉敏子、ハンプトン・ホース、石橋エータローのピアニスト、サックスは宮沢昭、渡辺明、五十嵐明要、渡辺貞夫、与田輝雄、海老原啓一郎、ベースでは金井英人、滝本達郎、ドラムでハナ肇、清水閏、五十嵐武要、原田寛治、そして杉浦良三(vib)や高柳昌行(g)等だ。沢田駿吾と植木等もいる。

モカンボセッション1954年

このセッションの声がけはあのクレジーキャッツで知られる、ハナ肇である。

面々を見ると日本でいち早くモダンジャズを身につけたメンバーばかりで
後に日本のジャズシーンを牽引していく、渡辺貞夫が入っているのが興味深い。演奏は守安と宮沢が清水潤のドラムに鼓舞されて入魂の演奏を繰り広げる。

モカンボセッション1954年その2

特に守安がビ・バップを自分の音楽としているのに驚く。ここに集まった演奏家たちはその後それぞれの道を歩むことになるが、日本のジャズのスタートはこの夜にあったといっても過言ではない。

I WANT TO BE HAPPY
演奏:宮沢昭(ts) 守安祥太郎(p) 鈴木寿夫(b) 清水潤(ds)


次回Vol.12に続く。



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