和製ジャズ温故知新.再編Vol.4/日本初のジャズ教則本
昭和初期のジャズの資料を調べていたらこの様な本に出会った。
出版社はARS。この教則本、多分日本での初めての教則本である。
発行は昭和14年(1939年)太平洋戦争が開戦した年である。
この様な時代にこの様な本があるとは・・・。
著者は全員日本人。 各分野の精鋭と言った面々である。
ざっと見てみると、
■ジャズの歴史/服部龍太郎:作詞家、服部良一との共作も多い。
■ジャズサックス奏法/服部良一:日本を代表する作曲家
■ジャズピアノ奏法/菊池滋嗣:日本人初のジャズピアニスト
■ギター奏法/古賀政男:影を慕いて、丘を越えて知られる作曲家。
■ハワイアンギター奏法/灰田晴彦:ハワイアンの第一人者。
弟勝彦は「東京の屋根の下」で知られる歌手。
■流行歌唱法/徳山タマキ:バリトン声楽家。
■ジャズ編曲/紙 恭輔:指揮者。ジャズ、映画音楽の草分け存在。
■トーキーとレビュー概論/堀内敬三:音楽詳論の草分け的存在。
何とも日本中から分野を超えて、ポピュラーとジャズ音楽のために
共同執筆した本である。
こんな本が戦前から、あったとは嬉しくなる。
時代は戦争に向かい益々混沌とする時期、自分たちの知識と
経験を残そうとした先人の気概が見て取れる。
その中でも、声楽家徳山タマキの「流行歌の歌い方」の部分は現代も通用する痛烈なものである。以下に。
「流行歌という名称はレコード会社が勝手につけたものであって、流行しようとしまいとそれには関係のないものである。したがって、これという唄い方もない。
流行歌は大衆のものだ。だから大衆が先生であるし、また大衆に適合した唄い方をするのが一番賢い。しかし、その漠然とした中にも経験によって唄い方の法則のようなものが、僕たちの仲間にある。
以上なような条件で唄えばよいのであるが、これが中々難しい。
第一の歌詞をはっきりさせて唄うことは簡単なようであるが、すぐにはできない。といってあまりはっきりしすぎると、品のない、きざっぽいものになる。流行歌には品などはいらないと思ってはいけない。
現在の流行歌には艶麗(えんれい)極まりない美しい言葉が連ねたれている。このすばらしい詩をメロディーと共に歌うのが歌手の使命だ。詩人の気持ちを生かし、作曲を生かしてこそ初めて、完全な流行歌といえる。」
何ともすごい言葉である。
現代、鼻歌の様な歌を歌っている何も知らない、若い子に聞かせたい言葉である。
※この画像資料は上大岡的音楽生活のブログ上から提供していただきました。感謝です。
次回Vol.5に続く。