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#34 沖縄大学教授 宮城能彦(みやぎ よしひこ)さん

沖縄大学教授の宮城能彦(みやぎ よしひこ)先生は、地域社会学を専門に、やんばるや離島を中心とした研究に長年取り組まれてきました。また、人と人を繋げ、地域を活性化することを目的に、社会人の「学び合い」の場を創出する「まなラボ」(一般社団法人 地域学び合い研究所)を立ち上げ、社会教育や地域支援活動にも力を注いでいます。
令和6年度より南城市観光協会の理事を務め、南城市のDMO組成検討市民会議ワークショップにもご参加いただくなど、南城市の観光地域づくりにも積極的に携わっておられます。

宮城さんの後半です。

沖縄のつながり
「あとこれも沖縄の特徴かなと思うんですけど、やたら友達いっぱいいてつながってるように見えて、つながってる人としかつながってない、まあ当たり前ですけど、つながる人とはすごい濃密につながってるんだけど、その枠からはみ出ると全くないっていうのがすごい感じますね。これは南城だけじゃないですけど。」
ーーそうですか。 今のお話ちょっとすごく共感するところがあって、逆に先生、そういう学者の立場でご意見聞きたいんですけど、僕もいろんなところでいろんな話を聞くんですが、深く情報が伝達されているように見えるんだけれども、いろいろ突っ込んで質問していくと、全く横に連携してない感じがしてまして。
情報伝達の課題
ーーどうですかそれ。
「これ面白いのはですね、小さな集落ほどそうなんですよ。嘘みたいに。 人口が少ないから。例えば今もヤンバルの集落って、だいたいもう100人前後とか200人切ってるんですけど、こんな小さい集落だから、もう普通の人の噂はパッと広がるのに、肝心なこの村どうしようかとか、あるいは自治会で決めたこととか、役員会で決めたことが全然伝わってない。同じ役員同士が役員会で決まったはずのことを、俺は聞いてないとか、よくあるんですよね。」
ーーそうなんだ。
「不思議ですよ。小さな集落ほど肝心な情報、人の噂以外の情報は伝わらないっていうのを昔から感じてますね。これは沖縄だけなのか、全国田舎っていうのはそうなのかっていうのは、ちょっとまだよくわからないですけども、確実に沖縄はあります。」
ーーそうですか。 共通するところはいくつか僕は悟かしてますけど、僕の集落も多分同じで、福島の山のほうとか行くと、やっぱり結構ひどい話とかを聞かされちゃって、これ何なんだろうかなっていうところを、僕の立場での分析なんですけど、寛容性があるかないかの差じゃないかって見てまして、他者を認めてあげるっていうところが、あるのかないのかの差じゃないかって思ってるんですけど、先生どう思いますか。
「これはあれです。沖縄って言うとすぐユイマールとか、助け合いとか、沖縄の人は親切でとか言うけど、それは表向きな話。」
沖縄の共同体の排他性
「もちろんそうなんです。それは間違いないんですけども、でもいざ生活の中でやると、やっぱり共同体ならではの排他的なところがかなり強いんですよね。 だからよく言われるのは、観光客には優しいけど、移住してくるって話は別だと。 これは全国一緒ですけど、というのが沖縄は特に強いというのがあると思います。 あまり寛容的とは僕は思わないです。沖縄のムラ社会は。 だからそういうことになるのかなって思いますね。 みんな楽しそうにやってるけど、結構敵味方はっきりしてる。 あいつは嫌いだからあいつと話しないみたいなのが、こんな小さな集落で、南城の話じゃないですけど、結構あるので、それってやっぱり人間同士の関係を作るっていうのは。」
沖縄の集落の連携とチームプレイ
「ただ逆に沖縄の集落とか共同体のすごさは、日常あんなに嫌ってて、あんなに情報交換もしないのに、いざ集落の行事とかイベントとかなると、何事もなかったようにみんな協力するんですよ。必ず成功させるんですよ。これはすごいなと思います。 役割も特に誰がリーダーがいて、支持するわけでもないのに、だいたい自分が何をすべきかってみんなわかっていて、例えば豚料理とか集落で作ったりするけど、大きく切るのは誰っていうのも暗黙のうちに決まってて、料理して最後の味付けはあのおばちゃんがやるとか。 ほんと見事ですよ、この連携。普段喧嘩して口も聞かない人が黙って、黙々と隣同士で作業してるとかですね。イベントはすごい盛り上がるんですよ。そこが逆に強さかなっていうのがありますね。」
ーーでもあれですよね。 南城がどうなのかって話は置いといて、やっぱりチームプレイ。 DMOで言うとチームプレイをしなきゃいけないんですけど、チームプレイに持ってこうとすると、好き嫌いいろいろあるんだけども、お互い認め合ってやっていこうねっていう風になっていかないと、なかなか進まないじゃないですか。 今回南城は今DMOを検討している最中ですが、先生どう思いますか。
「どうですか、まだまだ微妙じゃないかな。 ちょっと僕もあんまり、結局あれじゃないですか、観光協会とか役所の人とか、商工会の人としかまだ飲んでないじゃないですか。 僕まだ南城では普通の人と一緒にお酒飲んで、ヤンバルみたいな調査したことないので。 だからそれが市民にどう捉えられて、どういう反応するかっていうのはまだちょっと、これから調査してみたいなって思ってますね。」
ーーじゃあワークショップのあとのゆんたく会必ず来ないとダメですね。
「そうですね。」
観光の可能性と地域の発展
ーーさてそんな南城市で10年後なんですけども、南城はどんなまちになっていたいというか、先生のご希望も踏まえてなんですが。
「やっぱり観光というものからはネガティブに言えば逃げられないし、ポジティブに言うならば観光っていうのはものすごい可能性を秘めたものなので、やっぱり地元との人が豊かに生活できて幸せになる観光のシステムっていうのが、10年後にはできていて、スイス並みの半分でいいから、最低賃金が。多少税金高くてもそれ以上に給料高ければいいんですよね。 賃金も上がるし、オーバーツーリズムの弊害もないし。 やっぱり今まだまだ南城の人たちが、自分たちが持ってる歴史的な遺産ですね、特にグスクとか御嶽の価値をわかっていないので、斎場御嶽もそうですけど全くわかってないので、みんながそれを本当にわかった上で自慢しているという。 そういう市を10年後にぜひなってほしいです。」
ーーなるほどね。 ありがとうございます。 豊かになるシステムの構築と、歴史的な資産を住んでいらっしゃる方がよく理解した上で、というまちになっていただきたいと。 その上で先生がやりたいこと、できることっていうのは何かあるんですか。
「僕ができるのはですね、まず今言った歴史的な文化的な価値というのを、一人でも多くの人にわかってもらうような活動は、私なりに今後やるつもりでいる。 やっぱりDMOの勉強をしてですね、そこに何らかの形で直接関わってですね、いろいろやりたいですね。それで、南城でモデル作って沖縄に広めたいと思います。」
ーーいいですね。
「南城が南城しかないだろうぐらい僕思ってるんです。」
ーーそうですか。
地域の資源を活かした地域振興
「だってこの社会資源、文化自然遺産、自然の資源が南城ほど、たとえばヤンバルの場合、自然はいっぱいあるんですけど、ちょっと面積広すぎるとか、集落が離れすぎてるとか、南城一応市なので、人口密度その他と、自然と文化遺産の密度とやると、すごい理想的だと思うんですよね。南城でこそモデル作れるんじゃないか。」
ーーなるほどね。 ありがとうございます。 そこはすごく私も可能性は感じていたのが、だいぶ深まっている、現在進行形みたいな感じで感じております。
「もちろんね、乗り越えるべき、ないといけない課題はいっぱいあるんですね。」
ーーこれからも出てくるんだと思いますが。
観光地域づくり法人DMOの必要性
ーーさて南城市は現在DMO、観光地域づくり法人を検討段階なんですけども、宮城さんの立場として、これは個人的なご意見で結構なんですが、観光地域づくり法人DMOは必要か、必要ないか。それぞれ理由がありましたら教えていただければと思います。
「僕はもう絶対に必要だというか、今の私の知識では、ちょっとそこにしか可能性を見出しきれないってぐらい、私は期待してるんですけども。 それはなぜかというと、やっぱり今少しずつ勉強させてもらってわかってきたのは、行政と住民だけではなかなかできないことが、そういうDMOとかそういう組織があることによってできることもたくさん出てくるんだなというのが、今少しずつ具体的にいろんな事例を教えてもらってわかってきたので、そこをやっていけば、さっき言った10年後の非常に幸せな南城市になれると。 10年後の南城市をつくるためにも、私はDMOは必要だと思います。」
ーーなるほどね。 行政と住民ではできないことを推進する役割、機能としてのDMOだと。
「そうですね。それがきちんと推進されていて、10年後豊かになるシステムとか、市民が自分たちのことをよく理解した上で、まちづくりをやってると。」
そうですね。
ーーいいですね。目指すべき世界ですね。 ありがとうございます。
南城市の若い世代に対するメッセージ
ーーさて、このまちの南城なんですが、生まれ育ってこれから南城になっていただく若い世代に、宮城さんからメッセージがありましたら。
「やっぱり僕らとしては、自分の生まれ育った地域を誇りに思う子どもたちが一番の希望なので。まず最初に、これは大人の課題なんですが、いかに子どもたちに南城市を好きになってもらうかというと、大人は一生懸命やらないといけないと思うんですけども。 そのためにはやっぱり地域でいろんな体験すること、いろんな人がいるんだってことをいっぱい体験してほしいんですよね。 だから小学生、中学生には地域でどんどん遊んでほしいです。 あとは、やっぱり一度外に出てほしいですね。 外を見ないことにはわからないので。 県外無理でも、やっぱり南城市から出てですね、県内のどこかで大学出るとか、例えば極端に大学をあえて名桜大学とかヤンバルの大学行くとかですね、あるいは他で仕事をするとか、やっぱり外に出るってことが非常に重要なので、じゃんじゃん外で勉強してほしいです。 あるいは何年か仕事した上で帰ってきてほしいです。」
ーー先生、言い残したことないですか。 これだけは実は前々から俺言っときたかったんだと。 南城市民が聞いてるのと、実は意外にですね、市外の方が聞いてくれてまして、ちょっとこの際俺言っときたかったんだっていうことがありましたらぜひ。
南城市と沖縄の歴史
「もうこれは繰り返しになるんですけど、本当に南城ってグスクだらけ。 でもそもそもグスクというものが何かっていうのが、沖縄県民、南城市民だけじゃなくて沖縄県民が分かってる。ということは沖縄の歴史をほとんど知らずに、なんかその噂話レベルでしか知らないんですよ、沖縄の人って。 だから間違ってることもたくさんあるし、思い込み激しいんですね。 そうじゃなくて、やっぱりちょっとみんな沖縄の歴史ちゃんと勉強しようよって言いたいですね。これは一番言いたいですね。 僕はいくらでも教えに来るからとも言いたいですね。 行くから、どこにでも行きますから。」
ーー先生、南城でやってくださいよ。
沖縄の歴史、沖縄の歴史ないと。
グスクツアー
「そうですね。あとツアーも、じゃんじゃんやりますので。 ツアー、グスクを回る。」
ーーいいですね。
「一度やったんですよ。南城市民は無料です。 本当は一人3,000円もらって、すごい人気のツアーなんですけども。 南城市民無料にしますって言ったら結構来てくれて、南城市民が。」
ーーそうですか。
「やっぱり南城市の人はこんなにグスクあるのに、知らないんだなっていうのも思って。だけどやっぱり来てくれた人は、すごいこのグスクのすごさ、沖縄の歴史のすごさっていうのに、かなり感動してくれてたので、やりがいあるなと思って。 僕はもう、じゃんじゃんやりたい。これから広げてやっていきたいと思います。」
ーー素晴らしい。
「ぜひぜひ。」
ーー先生は来年定年と聞きましたけども、先生がガイドするツアーってやれないんですか?
「私個人は、僕は近現代史なんですね。社会学なんで。 だからグスクは12世紀頃、12から14世紀なので、僕の専門外なんですけども、ただ今一緒に活動してる相棒が考古学者がいるので、彼のガイドがまた面白くて深くて、最先端のことをこんなにわかりやすく伝えるって面白くて、他にいないよってことで、40代の若い考古学者なんですけども、今相棒として一緒にやってます。」
ーーまた近々やるんですか?
「ちょうどつい最近、首里城をやりました。全く違う観点から。 来月は、1月やることは決定してるんですが、場所決めてないので、できたらグスクロードのいくつかのグスク回ろうかなとも思ってます。」
ーーそれは南城も入るんですか?
「もう南城です。」
ーーバッチリ南城?
「バッチリ南城です。グスクロードです。」
ーーいいですね。ちょっと日程があいましたら、私も参加させていただければ。
「ぜひぜひ。」
ーーすごい面白いです。
ーーすごい面白いということでですね、大変楽しみでございます。 ということで、宮城さんぜひ南城よろしくお願いします。
「いやいや、本当にありがたいです。かかわらせてもらって本当に幸せです。」
ーーちゃんと学問をやられてる方が、こういうDMOの組成に一緒に入ってもらうのは、僕も旗振り役の一員として、すごく心強いと思っております。 本日は沖縄大学の宮城能彦先生にお話を伺いました。 宮城さんありがとうございました。
「はい、どうもありがとうございました。」


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