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長い午睡

 夢の中で。
 必死に目をあけようとしていた。
 夢の中で目を開けるということは難しいことなのだと知った。やってみるまで知らなかった。これまでやってみたことが無かっただろうか、と自問してみるが、無かったような気がする。忘れているだけかもしれない。

 夢の中で。
 周囲の状況は見えているのに、自分が寝ていることを知っている。だから必死に「今ここで起きなければならない」と思っているのだが、どうしても目を開けられない。
 指で瞼をこじ開けるが、何も見えない。
 本体の自分が寝ているからだ。

 夢の中で。
 結構危機的な状況が頻発している。
 自宅のベランダに出たらそこが高層ビルで、足場が幅30センチほどしかなく洗濯竿につかまっているとか、変な宗教団体に入れられそうになっていて頭頂をシャーペンの芯でつつくように言われているとか、なんかもうやばい。夢にしたってやばい。
 逃げるしかない、これ夢だから。夢だってわかってるんだからとにかく目覚めよ自分、と思っている、思っているのに、起きることができない。何度も何度も、目を開こうと努力し、瞼を指で釣り上げてみるのに、それが夢の中だからなのか、一向に本体が起きない。

 いったいどうしたら夢の中から自分を起こすことができるのだ?
 起きなければと思うほどに、夢の出来事は奇想天外に珍妙な形で展開していく。

 最後のシーンは武川さんの「雅客」のように青いビニールに覆われたリフォーム中のマンションの部屋だった気がする。引っ越し途中のアパートだったか。良くわからないけれど、青緑の世界が映像が切れるみたいにプツンと切れて、そうしたら現実にいた。

 瞼を開けようとしたら、ちゃんと開いた。
 ああ起きた、と思って、長い午睡を貪っていたことに気づいた。

 疲れていたのかもしれない。
 いや間違いなく疲れていたのだろう。
 起きても疲れていた。
 こういうときは、ゆっくり休むべきなのか、もうじゅうぶんに休んだと言えるのか。ただ混乱する、夢と現実。

 今日で10月が終わる。
 ハッピー・ハロウィン。

2024.10.31


 影響力半端なかった・・・