ピアノを音楽的に奏でるために必要な、音と音楽への思考
打鍵の瞬間から音が減衰の一途を辿るというピアノの特質はハンデとして捉えられることが多いが、実際はそんなことはない。とはいえ、結局打楽器的な表現に終始してしまうケースが多いのも確かだ。旋律的な演奏を追求する意識はとても大切で、それがなければ音楽にならない。しかしその意識を持っているからといって、必ずしも楽器を音楽的に歌わせられるわけではない。ピアノの場合、特にこの壁が厚いように思う。けれどその分奥深い楽器だとも言えるかもしれない。なぜなら精神や意識、イメージといった無形の要素がより必要となってくるからだ。これらの要素は内面との直結度が高い。つまりピアノは、アプローチのしかたによってはより深い領域に到達し得る可能性を秘めた楽器と言える。
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