「あの選手は"華"がある。」

なんて言葉を聞く事はあるが、ボクサーの華とは、なんだろう。
顔やスタイルの良さと別の、その選手から放たれる雰囲気。
リング上での自信、余裕などの立ち振る舞いから発せられる要素もあるだろうが、いざ試合が始まり戦い出すと、華があると言えないような選手もチラホラ。
逆に、見た目の雰囲気はそれほど華があるように感じなくとも、一度ゴングが鳴れば観衆が目を離せなくなるような選手も。

昨夜、コナー・ベンvsピーター・ドブソンの試合を視聴。
ベン、ドーピング検査で陽性反応が出たりと問題はあるものの(継続検査中らしい)、スタイルは魅力的。そして、全勝。
技術もありつつ、攻撃的で、野生的なボクシングは良い。"華がある"と言えるのではないだろうか。

パンチの振り抜き、動きのワイルドさ、それらが大きいことは日本のボクシングではマイナスの印象を持たれがちだが、私はそれに好印象を持つことが多い。
「あれが当たれば…」と思わせるパンチの振り抜き…ある程度パンチの強さがある選手、という前提がありつつだが、鋭い空振りは"華"だと思う。
コンパクトに打つのとまた別で、空振りやバランスを崩すことを恐れて振り抜かないのは、魅力が減ってしまう印象があるからだ。

だから、最近では長谷川穂積さんの右フック、山中慎介さんの左ストレートや返しの振り下ろす右。それらには華があった。
ノニト・ドネアの渾身の左フック、左アッパー。
フェリックス・トリニダードの左フックも素晴らしかった。
リカルド・ロペスの天を突くような左アッパーや、左フック、そして右のストレート…坂本博之さんの、左右フック。
スタミナが切れ、よろよろとバランスを崩すような打ち方ではない。
鋭く振り抜く、殺気の籠った全力の空振りは、華がある。

もちろん、『パンチを空振りしても一切バランスを崩さないよつ、コンパクトに打ちつつ、そしてすぐにそれを放つ前と同じ、顔を覆うガードの位置に引く。』そんな堅実な技術、教科書通りの技術が好きな方も居るのはわかるし、私もそういう面が好きなのもある。
が、それと別に、枠を超えるからこその魅力もあると思う、という話で。

ディフェンスを意識した上でのガードの低さも似たような感じだろうか。
ナジーム・ハメド、マーティン・カスティーリョ、ジェームス・トニー、パーネル・ウィテカー、ザブ・ジュダー…古くはモハメド・アリやニコリノ・ローチェ。

ガードの低さ、躍動感、柔らかさ…緩さや、振り抜く思い切りの良さ。それらには目を奪われてしまう。
見方の違いが、魅力になる。

だけれど自分の身を守る為に、ガードやパンチの戻しを意識する事は基本的には重要。
しかし、ボクシングはプロ競技。
リスクを避けて全てが同じになれば、そこに魅力は無くなる。
リングは自分の価値観、自分自身の"正義"、"正解"をぶつけ合う場所。
選手には打たれないことを徹底した中で、自分の魅力を見せつけて欲しい。

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